ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設14周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東日本大震災追悼3.11のつどい 石巻(その2)

2021-03-20 13:13:26 | 能楽の心と癒しプロジェクト
震災の津波により壊滅的な打撃を受けた門脇地区でしたが、この度の「東日本大震災追悼3.11のつどい」の第二会場として使われるそうで、しかも ぬえたちプロジェクトを受け入れてくださるのは「かどのわき町内会」様とのこと。なんとあの津波から逃れた住民さんは、避難所を経てその後おそらくあちこちの仮設住宅などに散り散りになっておられたはずで、それがなんと震災から10年を経て故郷の街に再結集されたのです。

今回の3.11の日の上演は、当初有名な「がんばろう! 石巻」の大看板の前か、あるいは門脇小の前に新しくオープンした震災を伝え防災教育を行う「MEET門脇」という施設を考えて、かねて知己のある公益社団法人の「3.11みらいサポート」の伊藤聖子さんに相談したのですが、3.11の日は大勢の人が訪れてごった返すし、控室となるスペースも確保しにくい、ということで一旦はお断りに。



ところが伊藤さんはその後あちこちにご相談頂き、これを聞いた「かどのわき町内会」の皆さま、わけても本間英一さんが「東日本大震災追悼3.11のつどい」の第二会場だった門脇地区での上演を引き受けてくださり、あまつさえ控室としてご自宅に残って震災遺構ともなっている土蔵を提供頂ける事となりました。

さて発災時刻午後2時46分となり、石巻の街にはサイレンが響き渡り、みんながあの日を想って黙祷を捧げます。あれから10年。当地のみなさんも大変だっただろうと思いますが、こうして門脇地区が復活するところまで進んできたのですね。

黙祷の直後には参加されたみなさんによってバルーンリリースが一斉に行われました。そうなのです。我々プロジェクトの目的も犠牲者を悼むためというよりは、明日に向かって幸せを願うところにあります。だから初めての上演場所では必ず「羽衣」を上演しております。「七宝充満の宝を降らし。。」この曲にはお客さまに幸せを持ち帰って頂くために作られた、と ぬえは信じております。


(撮影:宮本直樹さん)

バルーンリリースのあと いよいよ能の上演です。吉田祐一さんにはいつもながら挨拶と解説をお願いしましたが、石巻の荻浜出身です、と言ったとたんに会場にざわめきが。同郷の能楽師なのか! という驚きだったようで、終演後も吉田さんは大人気で、大勢の人に話しかけられていました。

能「羽衣」の出演は笛の寺田林太郎さんと ぬえの二人で、ぬえは謡いながら舞う。。いつもそうですが、先日 プロジェクトメンバーとしてずっと活動をともにしている寺井宏明さんと話したら、「昔はクセから謡いながら舞ってましたねー」と言われました。もうそんな体力ないなあ。。


(撮影:3.11みらいサポート 伊藤聖子さん)

かどのわき町内会の皆さまを中心にお客さまも50人超。道路からはちょっと奥まった場所での上演でしたのに、これほどのコミュニティが一丸になっておられることに感慨と喜びを感じます。当地に幸せが訪れることを祈って勤めさせて頂きましたが、このところコロナ禍で舞台が激減していて、東京でまれにある舞台でも、どうも身体がなまっているのか、今ひとつ納得がいかない感情を持って終わることが多い中、この日は楽しく勤めさせて頂くことができました。砂利の上ですけどね。


(撮影:3.11みらいサポート 伊藤聖子さん)

終演後、かどのわき町内会のみなさまにより「はっと汁」。。すいとんのようなこちらの地方の名物郷土料理がふるまわれ、ようやく片付けも終わる頃 ぬえほかメンバーも頂戴したのですが。。これが!!

衝撃的に美味しかったのです。これなら東京でも売れるんじゃないかな~!!
ぬえは3杯もおかわりしてしまいました。100人分作りましたから、と言われましたが。その寸胴ごと東京に持って帰りたい!

そういえば、東北各地では「芋煮会」が盛んに行われますね。里いもを入れた鍋を野外でみんなで囲んで食べる。。里いも、いいなあ。秋にやる名物行事らしいですが。

そうか、次回の活動は秋か。。(違)

こうして今回も大勢の関係者のご協力を頂きミッションコンプリートさせて頂きました。
10年間、合計9回の311の日の上演をついに果たし、我々の活動も、訪問は54回を数え、個別の催しの数は150回を越え、そのうち装束能も今回で127回目になりました。

また翌日には「かほく新報」紙にてカラー写真入りで報道頂きました。



改めましてみなさまのご協力に感謝申し上げます。


(撮影:3.11みらいサポート伊藤聖子さん)

「はっと汁」もっと食べたい。。
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東日本大震災追悼3.11のつどい 石巻(その1)

2021-03-20 02:30:26 | 能楽の心と癒しプロジェクト
少し旧聞になってしまいますが、去る3月11日、10年目となる震災の日に宮城県・石巻市で行われた「東日本大震災追悼3.11のつどい」という追悼集会に参加させて頂き、能「羽衣」を勤めさせて頂きました。

「能楽の心と癒やしプロジェクト」としての活動も、もう年に1~2回ほどになってしまいましたが、3月11日だけはどうしても現地で能を披露させて頂きたい、と願っております。そうして、よく考えればイベントはやりにくい日ではありますが、幸せなことに毎年どこかの追悼集会に快くゲスト出演させて頂くことができ、とうとうこれまで1度も欠かさず3.11の日には被災地に能をお届けさせて頂いております。

ましてや今年はコロナ禍の真っ最中。。思えば去年の3.11も同じ石巻の鹿島御児神社さまで奉納上演をさせて頂きましたが、あの頃はウイルス感染が広まっているらしい、程度の認識だったと思います。当時の写真を見ると、マスクをしている人の方が少ない感じですね。ところがその日を境に事態は大変なことに。東京に戻ったところ舞台が次々に中止され、教室も閉鎖に追い込まれ。。

この日も東京の緊急事態宣言が延長されたことで東北に向かうことは かなり悩んだのですが、やはり10年間見守り続けてきた東北の被災地の今を見たいという思いには勝てず。。 出発までの生活で感染予防に気を使って東北に向かいました。

半年ぶりの石巻。。は、またしてもずいぶん変わっていました。北上川には新しい橋が3本も架かり、川の中州である中瀬地区に架かり津波にも耐えた内海橋は取り壊される最中でした。新しい橋を渡って対岸。。震災の年に何度も宿泊して活動拠点とした避難所時代の湊小学校がある方面に行ってみると、震災後に建てられてずいぶんお世話になったこの地区唯一のコンビニは郵便局に変わっていました。



それから津波で壊滅した南浜・門脇地区には人工の小川が通り、あの「がんばろう!石巻」の大看板を含んで広大な震災記念公園が完成間近でした。





そしてその中には石巻市の犠牲者の名前を刻んだプレートが並ぶ慰霊碑が作られていました。



こちら、犠牲者に手を合わせる宝生流ワキ方の吉田祐一氏。吉田さんはなんと石巻市出身で、ご実家は郊外の漁村。今回の津波でご両親は無事でしたがご実家は跡形もなく全壊したそうです。



ぬえが吉田さんのそんなご事情を知ったのは3年前の地方公演で親しくお話させて頂いたからで、吉田さんも ぬえたちの被災地での活動をご存じなく、快くご協力を引き受けてくださり、以来3年間、毎年プロジェクトの3.11の日の活動に無償でご出演頂いております。

さて今回会場となったのは門脇地区。前述のように津波で壊滅した場所で、全焼した門脇小学校で有名になりました。



震災3か月目から当地を見ていた ぬえにとっては、とても生存者がいるとは思えない状態でしたが。。

ところが今回の上演場所というのがまさに津波が猛威を振るった現場。。まさに門脇小学校のすぐそばだったのですが、そこにはすでに公営災害住宅も、住宅もいくつも建ち並んでいました。

通常被災地区は居住禁止エリアの指定を受けるものですが、ここ門脇地区は土地のかさ上げをし、また背後にすぐ日和山が迫っていて避難路が整備されたからか、居住が認められたのですね。ぬえにとっても被災地区のまさにその現場に立って舞うのはかなりレアな体験です。

(表紙画像は宮本直樹様撮影)
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トライアル公演舞囃子を見る会

2021-03-08 02:21:24 | 能楽
令和も3年に入って、まさかの新規感染者2500人という状態の東京では2度目になる緊急事態宣言が出され、先日これまた2度目になる期間の延長が決定されました。

私たちにとってはどんどん舞台が遠くなるようで。。なかなか明日が見えない気が滅入るばかりの日々ではありますが。。

そんな中、かねて ぬえが文化庁に申請していた「感染対策を施したトライアル公演」の企画が採択されて、伊豆で「舞囃子を見る会」を催行しました。

時期的にはどうかと思われるところもあり、ぬえも悩んだのですが、東京で ぬえが見ている範囲では感染が起こる危険性がありながらそれを気にしない行動も実見しているので、感染対策の周到な準備を整えたうえで、「withコロナ時代」での上演活動の再開の方法を模索し、実践することを決断しました。

まずは出演者やスタッフとは主にオンラインで対策について話し合い、公演自体も大々的なな宣伝はせず観客は ぬえが指導する「子ども創作能」の参加児童やその保護者・関係者、そこからの口コミ程度に限定し、声を出す場所はオープンエアであることを前提として実演会場は神社の境内に建つ神楽殿とし、実演時以外はマスク着用。座席は少数にして間隔をあけ、さらに密を避ける注意喚起をする会場係員は「子ども創作能」の保護者を中心に12名も配置。終了後は近所の公民館で簡単な能楽体験会も催したのですが、こちらは室内でもあり参加者を制限したうえで検温・参加者名簿の作成も行いました。

こうして上演対象は限定的、内容は本格的な能ではなく舞囃子だったとはいえ、囃子方や地謡の能楽師も出演するもので、当地にとってはまたとない公演であったと思います。本当は子どもたちの上演も行いたかったのですが、子ども創作能の稽古も年始から停止を余儀なくされていて、稽古不足のため断念しました。しかし子どもたちにとっても指導講師の ぬえの舞台を見る機会となり、刺激を与えられたかな、と思っております。

実際。。ぬえも久しぶりの舞台で純粋にうれしかったし、お囃子方も楽しそう。。 あとでお囃子方に聞いてみたら、薪能も絶えて久しいこの頃だからでしょうか、「屋外で風に吹かれながら、なんて久しぶりで気持ちがよかったですね」なんて言っておられました。

こうして上演した ぬえの舞囃子「敦盛」の動画は youtube で公開配信しております。
期間は3月いっぱいの限定公開と致しますので、よろしければご覧ください。

トライアル公演舞囃子を見る会
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伊豆の子ども能、今年最後のお稽古

2020-12-21 10:29:30 | 能楽
いまは ぬえは学校公演のために長崎に来ております。

そして土曜日は伊豆の子ども能の今年最後のお稽古でした。

演目は新作(と言っても10年以上上演してるけどw)の「伊豆の頼朝」。伊豆に流された頼朝が平家の目代の山木兼隆に対して挙兵した当地の歴史的事件を扱った曲です。

兼隆はこの曲では悪者になるわけですが、小学生の女の子なので服には大きなスヌーピーの絵がw



兼隆の家来も(よく見ると)「すみっこ暮らし」のプリント入りw



一方の頼朝役は同じ女の子だけど6年生で身長も高いからカッコいいです!



さてお稽古が終わってからは会場備え付けのピアノを使って年末のお遊びに、ピアノ習ってる子しかできないけれども、臨時の「かくし芸大会」にしました。







高学年の子はさすがに上手いねー。
ピアノを習って0年の ぬえも「猫ふんじゃった」を弾きました。0年ですからねえ。。子どもたちから「やめて〜!」の大合唱がw

最後にはなぜか落語を発表する子まで登場。すごい。



なにかと大変な1年でしたが、子ども能も無事にお稽古を再開することができました。
来年春には立派な公演ができるように文化庁に助成金も申請中です。

よい1年になりますように!
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伊豆・子ども創作能の公開稽古(まさかの感染騒動つき)その2

2020-11-13 21:50:49 | 能楽
子ども創作能の公開稽古の前夜、突然もたらされた出演者の子どものクラスメイトの感染発覚。。まさかの展開です。

公開稽古では入口で検温したり座席の間隔をあけて密を避けたり、と感染予防の対策はかなり考えていたのですが、まさか出演する側の身近からウイルスが忍び寄っていようとは。。

クラスメイトの感染がわかったのは中学生の参加者で、この子は出演を切望していましたが、さすがに参加は見合わせてもらいました。中学生なのでお役は地謡だったので、欠席でもまあ上演不能にはならない。最近は参加者の減少に悩む子ども創作能ですが、最後には ぬえが一人で地謡を謡う覚悟でもありました。

さらにもう一人、小学生の参加者にも同じように学校に感染者が出たとのこと。まさかの一度に2件の発覚とは。。ただ、こちらは参加児童と同じ学年ではあるけれども違うクラスの子とのことなので、児童の扱いを慎重にして参加してもらうことにしました。

もちろん公開稽古そのものの中止も熟考しましたが、中止するにしても観覧のお客さまにそれをお伝えするすべもなく、結論は出ず。保護者には一応上演する用意をしたうえで、開演2時間前に集合して、その場でみなさんで話し合うことにしました。感染を心配されるご家庭は欠席も可で判断はお任せしました。その結果上演不能となった場合は ぬえが即席の能楽講座を行うつもりで、展示のための面装束を用意して。

その後近所のホームセンターかどこかで感染予防のためのパーテーションなどを買い求めることも考えましたが、どこで売っているのか見当はつかず(疎開先の茨城県のホームセンターで一度パーテーションを売っているのを見かけたことはあったのですが。。)すでに21時をまわっていて検索の結果どこも閉店している模様。これで万策尽きて翌日の出発を迎えることになりました。感染予防パーテーションなどの購入は文化庁の助成金をすでに7月に申請していたものの、採択が知らされたのはこの1週間前で間に合わず。

さて公開稽古当日、伊豆に到着してママさんたちと話し合ったところ、あまり心配している方はなく、かえって久しぶりの上演で子どもたちは楽しみにしていた、友人などがたくさん見学に来ます、とのこと。

なので公開稽古は決行することにしましたが、子どもたちには よくよく次のように言い含めました。
・今日だけはお友だちに絶対に触れない。お菓子を分け合ったりするのもダメ。
・上演時も含め、常にマスクを着用。
・今日だけは楽屋ではお友だちではなくママのそばにいなさい。
・今日だけはみんなで恐れよう。今日だけ我慢すれば明日は普通の生活に戻れる。

この日に市内で感染者が一気に6人も判明したこともわかりましたが、一部の地区に集中している傾向も見え、それだけに子ども創作能で集まった子どもたちから他の地区への感染拡大や、ましてやクラスターなどは絶対に発生させるわけにはいかない。着替えも狭い場所を避けて広いロビーに換えて、窓を開け放して。。

こうして公開稽古は始まりましたが、意外や20名以上のお客さまが集まってくださいました。ぬえが一人で謡おうかと思っていた地謡も、中学生の子ども能OGが急遽応援参加してくれて解決。ぬえの能楽講座に引き続いて子ども創作能の上演を行いました。

やれやれ、いや、それでも良い舞台だったと思います。上演前日からの騒ぎのせいか、ちょっと間違った子もあって、この時は落ち込んでいたけれど、夜になって頂いたママさんからのメールでは「でも楽しかった!」とうれしそうにしていた、とのこと。そういえば子ども創作能に入会したけれど、出演する機会がなかった子どももあって、その子も無事初舞台を踏むことができました!

(画像撮影;内田隆久さん)
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伊豆・子ども創作能の公開稽古(まさかの感染騒動つき)その1

2020-11-11 11:24:40 | 能楽
去る11月8日、もう20年も稽古を続けている静岡県・伊豆の国市の「子ども創作能」の公開稽古を行ってきました。

今年のコロナ禍で、やはり困難を強いられている子どもたち。じつは去年から不運に見舞われてきました。「伊豆の頼朝」という作品を上演している子ども創作能ですが、毎年10月、当地で源頼朝が挙兵したゆかりの守山八幡宮の秋祭りで神社に奉納上演をしているのですが、去年の上演当日、まさかの台風直撃で秋祭りそのものが中止に。。ぬえの能楽師としての経験の中でも、催しが中止になって、来演をお願いしていたお囃子方の出演をキャンセルしたのは初めての経験です。

その後今年の2月に大仁地区の「梅まつり」イベントに出演することができましたが、その直後に新型コロナウイルス問題が勃発して、4月にこれまた恒例で鎌倉市からお招きいただいて上演する「鎌倉まつり」公演が中止に追い込まれました。またまたお囃子方にご迷惑をお掛けしてしまいましたが、出演の子どもたち。。とくに6年生にとっては卒業記念としての公演でもあったので、かわいそうな事になりました。

さらには笛の寺井宏明先生のご尽力によって、今年は箱根神社での子ども創作能の奉納も決定していたのに、これまた中止に。そして今年の10月の守山八幡宮の秋祭り奉納上演も中止になりました。。

ああ。。

仕方なく、子どもたちが上演曲目を忘れないために稽古は続けていましたが、それも上演の目標はないまま。。

ま、それでも毎回配役を換えての稽古は意外な盛り上がりを見せておりました。聞けば学校のクラブ活動やらお稽古ごとも自粛の空気が蔓延して、子どもたちは なかなか身体を動かす機会も少ないのだとか。。

ああ。。

ここで ぬえはとうとう我慢できなくなりまして、無観客・無宣伝でゲリラライブ的な上演をママさん方に提案することに。会場は市内にある小さな野外ステージで。近くには密を避けて広い着替えができる広い和室を備えた公民館もあるし。よし! これならいけるぞ!

。。が、ママさん方からはやはり慎重論が出ました。いわく「この時期に無理にやる必要はないのでは?」「通りがかりの人が上演を見て、はたしてこの時期、喜んでくれるのでしょうか? むしろ反感を覚えるのでは。。」 。。ごもっとも。。orz

なおも我慢できない ぬえ。今度ははじめから予約されていた稽古会場が公民館のホールだったのに目をつけて、普段の稽古を本格的にして、装束を着けて公演のリハーサルのように行うことを再度提案。これはママさん方も賛成頂きまして、それどころか「それなら限定的に公開できるのではないか」「椅子をあらかじめ間隔をあけて並べて」「受付を設けて見学者の名簿を作って」「私、検温器を用意できます」と、どんどんアイデアが出されて、ついに「公開稽古」になりました。宣伝は ぬえがチラシを作って、子どもたちがお友だちなどに配る程度に、小ぢんまりと行います。

そして翌日に満を持しての公開稽古を控えたその前日の夜、ママさん方の一人から連絡がありました。

「。。子どもが通う学校の、同じクラスの子が感染していることがわかりました。。」

え。。

(続く)
(画像は夏の頃のお稽古のものです)
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PCR検査を受けました

2020-11-10 01:30:54 | 能楽
ようやくのご報告になります。

この度師家では学校公演その他各地での公演の再開に向けて、主催者様や関係者様に不安を与えないよう、同門の能楽師一同でPCR検査を受けることとなり、先日 ぬえも含め全員が検査を受け、無事 陰性と診断されました。

先輩の中には教室の生徒さんに心配をかけないためにすでに自主的に検査を受けた方もありましたが、個人で検査を受けるのは費用面で大変。。こちらは助成を受けて検査を実施したものです。

助成を受けて検査を実施すると、もしも感染者が発覚したときに団体名が露わになって、公演活動ができなるなるのではないか。。? という懸念を ぬえに言った方もあって、なるほどそうなると再び舞台を失うことになり、それは大変な苦痛ですが。。 とはいえこのような状況下で公演を受け入れてくださった会場や主催者さまに安心して頂くのもまた必要。。悩ましいところではありました。

さて実際のPCR検査とはどういうものか、せっかくの機会なのでご紹介させて頂きます。





こちらが検査のための説明書です。
実際の器具の画像はありませんので想像して頂くよりほかありませんが、太めの注射器のような、樹脂製の円筒形の透明な器具に唾液を入れて提出するほか、免許証など身分証の提示も求められました。

提出する唾液の量は図のように赤い線のところまで。。 結構な分量ですよ! 顎の脇をマッサージしたり、レモンや梅干しなど酸っぱい食べ物を想像しながら、ペッペッと。。とても人に見せられる姿じゃありませぬ。。(TT)
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伊豆・しゃぎりの発表会

2020-10-12 04:04:24 | 能楽

10月10日、本来であれば伊豆の教え子の子どもたちによる「子ども創作能」が当地の霊社・守山八幡宮の祭礼の場で奉納上演をする予定でしたが、例によってコロナ禍のために祭礼自体が中止になってしまいました。守山八幡宮の祭礼は去年も台風の直撃を受けて中止となったので、2年連続しての災難に見舞われたことになります。しかもこの日も台風の影響で雨模様。コロナ禍がなくてもやはり祭礼には難しい日になりました。

この守山八幡宮は源頼朝が伊豆で平家に対して挙兵したときに戦勝祈願をしたとされ、頼朝の挙兵を扱った子ども創作能「伊豆の頼朝」をここで毎年奉納上演させて頂くことはとっても意義深いことです。しかも今年は延期になってしまった東京オリンピックの年であっただけでなく、じつはその頼朝の挙兵から840年目にあたるアニバーサリーイヤーで、伊豆でもこの奉納は記念イベントの一つとなるはずでした。返すがえすも残念。

そういうわけでこの日も普通通り子どもたちの稽古になりましたが、奉納上演が中止になったから稽古に切り替えた、というような消極的なものではなく、来月には公演の代わりの発表の場としての「公開稽古」を行うので、これまでと違って子どもたちにも目標ができました!

ところが子どもたちが集まってくると、一人の児童。。我らが精鋭、6年生の のんのママさんから早退のお願いが。。

よく聞いてみるとこういう事でした。いわく、のんは子ども創作能のほかに地域の「しゃぎり」のメンバーで笛を吹いている。地域の神社の祭礼で演奏されるのだが、今年は例によってコロナ禍のため祭礼は中止になり、せっかくの子どもたちの練習が無駄になってしまう。そこで代わりにこの日に「しゃぎり」だけ発表の場を設けることになった。とのこと。なるほど ぬえが考えた「公開稽古」と同じ発想ですな!

これを聞いた ぬえは、子ども能の稽古のあと のん出演の「しゃぎり」を見に行くことにしました。

「しゃぎり」とは、能の世界でも使う言葉で、狂言の「末広」などで めでたい終わり方をするときに笛一管で演奏される、ほんの十数秒ほどの囃子のことですが、この伊豆では神社の祭礼のときなどに笛・鉦・太鼓で賑やかに演奏される、一種の祭囃子のことをいいます。

調べてみると「しゃぎり」は語源不明ながら歌舞伎や落語でも使われている囃子で、名称は同じながらそれぞれ関係性はなく内容はまったく別物のようですね。ぬえも今から20年前に伊豆の子ども能に携わって、すぐにこの「しゃぎり」の存在は知ったのですが、今回調べてみると全国でも伊豆はとくに盛んで、三島のしゃぎりが有名なようです。

さて子ども能のお稽古も終わり、ママさんの車に乗せて頂いて会場に向かった ぬえ。到着してみると会場は地域の公民館のお隣にある倉庫でした。近づいただけですぐわかる賑やかな囃子の音。雨の中、倉庫の中で立派な山車に乗って子どもたちだけが演奏しています。そういえば当地で何度か「しゃぎり」を見ましたが、やはり山車の上で演奏されていました。地域によって大人ばかりだったり、子どもが混じっていたり、いろいろなようです。ここは普段山車を収めている倉庫なのかも。



演奏は素晴らしく、曲により明らかに16ビートの曲もあって(笑)興味深いものでしたが、聞いてみると本当はお祭りのときにこの山車に乗って「しゃぎり」を演奏しながら町内を練り歩くものなのだそうです。今回はその機会が奪われ、地域の大人たちが子どもたちのために山車の倉庫の中で日頃のお稽古の成果を発表する機会を設けてあげたのです。

なるほど。。見学者は地域の役員や保護者のみ。山車の上の子どもたちは密のようでしたが、全員マスク着用、笛の担当の子はフェイスシールドの姿。。 しっかりと感染対策はしながらの発表のようでした。



なんだかなあ。。ここまで地域の伝統を踏みにじり、子どもたちにまで悲しみや屈辱感を与えたのが目に見えない小さなウイルスだなんて。

病気なんかに負けたくないなあ。。そんな話を東京の生徒さんにしたらこんなやり取りに。

ぬえ「目に見えない、ってのが困りますよねえ」
生徒「ウイルスに色でもついていればね~」
ぬえ「そうなら殺虫剤をプシュー! ってね!」
生徒「見えたらそれも怖いですけどね。あっちこっちに緑やら赤やらのものがフワフワと。。」
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伊豆「子ども創作能」の公開稽古

2020-10-10 08:01:50 | 能楽
コロナ禍のために出演機会がなくなってしまったのは伊豆の子どもたちも同様でして、彼らは2月に地元の「梅まつり」で市民の前で上演して以来、発表の場を失っています。

まずは4月に予定されていた恒例の「鎌倉まつり」公演。東京からお囃子方の先生の来演も願って、子どもたちにとっては1年で一番大きな上演機会ですけれども、「鎌倉まつり」自体が中止になりました。

夏は伊豆の国市の花火大会に合わせて開かれていたイベントに出演していましたが、これは一昨年に中止になってしまって、今年はその代わりに箱根での上演の計画を進めていたのですけれども、これも中止になってしまいました。

さらには秋10月に、こちらも恒例となっていた市内の「守山八幡宮」の祭礼での奉納上演。こちらは伊豆に流された源頼朝が崇拝していた由緒ある神社で、頼朝の創作能を演じる子どもたちにとっても意味ある上演だったのですが、こちらも祭礼自体が中止に。。 しかもこの神社の祭礼は去年は台風の直撃を受けて中止になっていて、2年連続しての中止となってしまいました。

神社には江戸期に大久保長安が当地に伝えた能が郷土芸能化した「三番叟」が残されていて、これと子ども能の競演も毎年意義深いと思っていたのですが残念です。

こうして2月の上演以来、子どもたちはもう8カ月も上演の機会を奪われてしまっています。仕方なく、上演の目標もないまま、せめて上演曲を忘れないために毎回配役を替えて稽古だけは続けています。

が、これが意外な盛り上がりを見せていまして、毎度みんな楽しそうにお稽古していますw

でも、ここで我慢できなくなったのが ぬえでして。とにもかくにも、子どもたちの上演に機会を与えてあげたい! しかも新規参加の児童もいるから、彼らにとっては参加はしたけれど、一度も舞台に立つチャンスがないのです。これではいけない。

要するに、人が集まるイベントは密を避けるために軒並み中止になっているので、これらのイベントに参加することを期待してはいけない。密を避けて、宣伝もなし、保護者のママさんたちだけが見る程度の無観客での自主上演をすれば良いのだ、と ぬえは思い当たりまして、市内にいくつかあるちょっとした野外ステージでのゲリラライブを行うことを考えつきました! これなら保護者以外にも、たまたま通りかかった市民の方にも見て頂けるかもしれない!

。。が。保護者からは慎重な意見が相次ぎ。。いわく「やはりこの時期に行うのは不安」「わざわざ上演して、かえって批判の目で見られるのではないか」。。なるほどごもっとも。。(-_-;)

で、またまた ぬえは考えまして、「公開稽古」というのを提案しました。これならどうだ。
つまり、毎々続けているお稽古をもっと拡充しまして、お囃子方はナシで普段の稽古通りに ぬえが拍子盤を打ちますが、子どもたちは装束を着けて本番のつもりで稽古をする。要するに「公開リハーサル」のようなものを行うのです。

これは保護者も賛成してくださって、「会場は室内なので換気に気を付けましょう」「椅子を離して並べて密を避ける工夫を」「受付を設けて見学者の名簿を作る」「保護者はスタッフなのでマスク着用。見学者にもマスク着用をお願いする」「検温器は私が用意できます」。。と次々にアイデアが出ました。

これなら最小限度の宣伝をして市民に見て頂くこともできるかも、という所まで来ましたので ぬえがチラシを作って、これは参加者だけに配布を任せて、参加児童のお友だちなどに配ってもらうようにしました。

こうしたわけで、このブログでも簡単に宣伝させて頂きます。子ども能の上演時間は20分程度しかないので、当日は ぬえも面や扇などを展示して開演時に簡単に説明などしてみようと思っています。お近くの方はぜひお出ましください!

【期 日】令和2年11月8日(日)14:00~15:00
【会 場】あやめ会館(長岡中央公民館)3F多目的ホール(静岡県伊豆の国市長岡346−1)
※観覧無料
※新型コロナウイルス感染予防のためマスク着用でご来場ください
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伊豆の「観月の夕べ」は中止になりました

2020-10-05 17:38:22 | 能楽
毎年 仲秋の名月の夕に伊豆の名刹・国宝の願成就院さまで催しておりました「観月の夕べ」。今年は去る10月2日(金)に予定しておりましたが、やはり新型コロナウイルス問題の影響で中止になってしまいました。

この催しはお月見をしながらクラシック音楽と能を楽しんで頂く、というとってもロマンチックなイベントで、ぬえも楽しみにしていたし、また出来栄えに自信も持っていました。能の上演は音源を使ったデモンストレーション程度の略式ですし、音楽家のみなさんやスタッフさんも ほとんどボランティアのような形で協力を頂いてようやく開ける催しなのですが、お客さまには毎度大変好評を頂いております。

わけても伊豆で教えている「子ども創作能」の子どもたちにとっては能を見る唯一の機会で、それを狙ってイベントを続けている、という意味もあります。かつては薪能やホール能も行われていた土地なのですが、いまはどの自治体も財政難などの影響で能の公演はどんどん縮小の傾向に。。 伊豆でも例外ではなく、「子ども創作能」は、なんと「能を見たことがない子どもたちによる創作能」になってしまっているのです。。

これではいけない、ということで始めた「観月の夕べ」ですが、東北の被災地で何度か同じようなイベントを行った経験もありましたし、もともと ぬえがクラシック音楽ファンだということもって、音楽家の友人が何人かいたため そのご協力も得ることができました。音響や照明の器材については東北での活動で笛の寺井宏明さんがご自分で所持の器材を持ち込んでおられたのを見て、これは ぬえも自主的な催しのために買い揃えなければならないな、と考えて、寺井さんにもいろいろご教示を得て買いそろえていったものです。



なによりこの催しでは「子ども創作能」の参加児童がいろいろと設営や撤収を手伝ってくれますし、彼らを楽屋に招いて装束の着付けを見学させたり、子どもたちにも良い経験になっていたと思います。子どもたち、こういうクラシック音楽のイベントなのに騒ぐこともなく静かにお手伝いしてくれて、毎年 ホントに感心しています。普段の能のお稽古でも教えたわけではないのに、自然に体得しているのでしょうか。自慢の子どもたちです。とくに今年は新しく参加した児童もいるので、ぜひこの子たちに本物の能を見せてあげたかったです。

しかも今回はコロナ禍の下での上演でお客さまの減少も見込まれて苦しい運営が予想されたので、文化庁の助成金を申請していました。この助成金、ほかの助成金でも見られることですが、オンライン配信が強く意識されて推奨されていたり、感染対策のための用具の購入や客席担当係員の人件費などもかなり手厚く助成してくださるのですが。。肝心の申請者本人には一銭たりともお金を頂くことができない、という恐るべき助成金でして。。 それでも感染対策を講じるためにはありがたく、密を避けて万全の体制を持って上演に臨むべく、子ども能の主宰団体とともに共同申請を行いました。

出演の音楽家も、第1回目から参加してくださっているフルート奏者の うっちーや、去年から参加してくださっているバイオリニストの里千佳さんが今年も出演を快く承諾してくださり、今年は彼女たちのお子さんも出演させようという計画もあって、美しいお月見のほかにも楽しい上演になる計画でした。





が、チラシの印刷を始める直前に関係者に最終的な確認連絡をしていたところ、会場の願成就院さまから「やはり今年は中止にしたいと思う」とのご意見が。。

伺ってみると、願成就院さまがある地区では神社の秋祭りも中止になり、それどころか小さな子供会の催しまですべて自粛になっているそうです。そんな中で願成就院さまだけがイベントを行うのは地区の趨勢に逆らうことにもなり。。なるほど。。じつはその願成就院さまがある地区の神社の秋祭りとは、まさに子ども創作能も毎年奉納出演させて頂いているお祭りでして、しかも去年も台風の直撃を受けてお祭りが中止に追い込まれていました。地区のみなさんも満を持して今年は行わいたかったはずのお祭りも、やはりコロナ禍のいまは2年続いての自粛をせざるを得ない状況なのですね。そんな中での「観月の夕べ」の催行は、たしかにいかにも場違いな行動です。しかも主催者が東京者の ぬえだし。

そんなわけで、お楽しみになさっていた方も多いこの催しも、コロナ禍が終息することを信じて来年に盛大に行うことと致します。音楽家のお子さんたちも、子ども創作能の子どもたちにも、もちろんお客さまにとっても思い出にのこる美しい夕べにしてみせますとも!
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