2007年と言いますから、いまからもう3年も前のことになってしまうんですね~。名古屋の能楽研究者・通称=鮒さん(あ、いや、研究者ですから本名の方がいいんでしょうけれども、ぬえとはネット…正しくはパソ通の頃にオンラインでのお付き合いがいまだに続いているもので、なんとなくハンドルの方が呼びやすい…)が、ぬえの師家に所蔵される古い録音SP盤をデジタル化する、という大事業を成し遂げたのは。
師家には、当然のことではありましょうが、舞台や謡を記録した音源や映像記録も残されていますが、もちろんそのような音声や映像の記録は近代になってから始まったものです。そうしてその嚆矢がSP盤でした。鮒さんは早くにこのSP盤に注目され、もろく、割れやすいSP盤が保存されているうちに、近代に記録された貴重な音源をデジタル化しておこう、と考えられ、そうして友人である ぬえに、師家の協力を頂けないかの打診があったのでした。
これを最初に聞いた ぬえは面白い発想に感心して、また ぬえ自身にもそういった古い音源が現代に再生されることへの興味がにわかに盛り上がって、師家に伺うことは引き受けました。が、実際のところは、それを実現するのは大変な作業であることも気づいてはいました。
師家に所蔵される音源…SP盤に限らず…は、当然のことながら装束を納めてあるお蔵の中にあります。そして装束を出し入れする際に、ちらりとそれらの物があるなあ、程度の認識は持っていました。でも、さてそれらを漏れることなくすべてお蔵から出すのは大変な作業です。いや、時代の移り変わりの中で破損したり、またお蔵の隅の方に紛れ込んだりもしていますし、分量としては驚くほど多い、というわけでもないのですが、なんせ通常の公演に使う装束の出し入れに便利が良いようにお蔵の中は整頓されていますので、そういった記録の類は装束類よりもずっと奥にしまい込まれているのです。
それでも、ぬえ自身にも興味があり、また師家からもご協力を頂きまして、なんとか これですべて、と一応は思われるようにSP盤を引っ張り出すことができました。そうして時間を掛けて、鮒さんの努力によってそれらのSP盤をデジタル化する事に成功したのです。その当時の記録はブログ内の次の記事をご参考になさってください。
→師家蔵・古いSP盤のデジタル化作戦(まとめ)
そのうえこれらの音源は鮒さんのサイトで公開され、DLできるようになっています。
→鮒さんのサイト 恵理人の小屋
さてここからが今日の本題ですが、この時の鮒さんが出した成果は師家にも納得して頂けたようで、このたび、今度は師家の方から ぬえにお尋ねがあり、師家所蔵の 16mmフィルムをデジタル化できないか、鮒さんに聞いてほしい、との仰せを承りました。
これというのも、実はたった今、師家ではお屋敷の全面建て替えをしておられまして、この時に整理していたところ、多くのフィルムが発見されたのでした。SP盤も16mmフィルムも、今となっては師家といえども再生する機器さえ手元には残っていない現状で、この機会に 前回成果を上げた鮒さんに白羽の矢立ったのですね。やはり勤勉であることは大切で、もちろん成果を出せば信頼も高まるでしょうが、ぬえは鮒さんの誠実な作業の態度が好感を持たれたのだと思います。
そうして今日、鮒さんは名古屋から上京され、ぬえと二人で師家蔵の 16mmフィルムの調査を行いました。
結果的には…期待していた初世・万三郎師の映像は、ただ一つを除いて見つかりませんでした。
その例外が、もうずっと以前になりますがNHKから発売されたビデオ「名人の面影」に収録されている 舞囃子『松風』です。厳密に言えばこのフィルムは 16mmではないのですが、ともあれ、ほかのどの方とも同じく初世万三郎師の映像といえばこの『松風』しか見たことのない ぬえにとっては、そのほかにも写真ではなく実際に動いて、舞っておられる初世様の新しい映像が発見されたか!!?? とふくらんだ期待は、あえなく潰えてしまいました。師家にさえ残されている初世様の映像は『松風』1番だけだということになりますから、今後も新発見は望むべくもないかもしれません…
でもまた、今回見つかった 16mmフィルムの中には能の『羽衣』を愛してやまなかった舞踏家エレーヌ・ジュグラリス夫人を偲んで三保松原で催された『羽衣』や、小津安二郎監督の映画『晩春』の中で使われた染井能楽堂での『杜若』など、2世万三郎師の貴重なフィルムが含まれているようで、意外な発見もあるかも。ただ、SP盤とは違ってフィルムには、書籍でいうところの「錯簡」や「脱簡」があっても一見してはわかりませんので、とりあえず業者さんにお願いして保存状態のチェック→デジタル化が可能かどうかの判断をしてもらうことになりました。
今回も長い道のりになるかも知れませんが、折々 進行状況はこのブログでも発信していこうと思っております。ご期待ください~
師家には、当然のことではありましょうが、舞台や謡を記録した音源や映像記録も残されていますが、もちろんそのような音声や映像の記録は近代になってから始まったものです。そうしてその嚆矢がSP盤でした。鮒さんは早くにこのSP盤に注目され、もろく、割れやすいSP盤が保存されているうちに、近代に記録された貴重な音源をデジタル化しておこう、と考えられ、そうして友人である ぬえに、師家の協力を頂けないかの打診があったのでした。
これを最初に聞いた ぬえは面白い発想に感心して、また ぬえ自身にもそういった古い音源が現代に再生されることへの興味がにわかに盛り上がって、師家に伺うことは引き受けました。が、実際のところは、それを実現するのは大変な作業であることも気づいてはいました。
師家に所蔵される音源…SP盤に限らず…は、当然のことながら装束を納めてあるお蔵の中にあります。そして装束を出し入れする際に、ちらりとそれらの物があるなあ、程度の認識は持っていました。でも、さてそれらを漏れることなくすべてお蔵から出すのは大変な作業です。いや、時代の移り変わりの中で破損したり、またお蔵の隅の方に紛れ込んだりもしていますし、分量としては驚くほど多い、というわけでもないのですが、なんせ通常の公演に使う装束の出し入れに便利が良いようにお蔵の中は整頓されていますので、そういった記録の類は装束類よりもずっと奥にしまい込まれているのです。
それでも、ぬえ自身にも興味があり、また師家からもご協力を頂きまして、なんとか これですべて、と一応は思われるようにSP盤を引っ張り出すことができました。そうして時間を掛けて、鮒さんの努力によってそれらのSP盤をデジタル化する事に成功したのです。その当時の記録はブログ内の次の記事をご参考になさってください。
→師家蔵・古いSP盤のデジタル化作戦(まとめ)
そのうえこれらの音源は鮒さんのサイトで公開され、DLできるようになっています。
→鮒さんのサイト 恵理人の小屋
さてここからが今日の本題ですが、この時の鮒さんが出した成果は師家にも納得して頂けたようで、このたび、今度は師家の方から ぬえにお尋ねがあり、師家所蔵の 16mmフィルムをデジタル化できないか、鮒さんに聞いてほしい、との仰せを承りました。
これというのも、実はたった今、師家ではお屋敷の全面建て替えをしておられまして、この時に整理していたところ、多くのフィルムが発見されたのでした。SP盤も16mmフィルムも、今となっては師家といえども再生する機器さえ手元には残っていない現状で、この機会に 前回成果を上げた鮒さんに白羽の矢立ったのですね。やはり勤勉であることは大切で、もちろん成果を出せば信頼も高まるでしょうが、ぬえは鮒さんの誠実な作業の態度が好感を持たれたのだと思います。
そうして今日、鮒さんは名古屋から上京され、ぬえと二人で師家蔵の 16mmフィルムの調査を行いました。
結果的には…期待していた初世・万三郎師の映像は、ただ一つを除いて見つかりませんでした。
その例外が、もうずっと以前になりますがNHKから発売されたビデオ「名人の面影」に収録されている 舞囃子『松風』です。厳密に言えばこのフィルムは 16mmではないのですが、ともあれ、ほかのどの方とも同じく初世万三郎師の映像といえばこの『松風』しか見たことのない ぬえにとっては、そのほかにも写真ではなく実際に動いて、舞っておられる初世様の新しい映像が発見されたか!!?? とふくらんだ期待は、あえなく潰えてしまいました。師家にさえ残されている初世様の映像は『松風』1番だけだということになりますから、今後も新発見は望むべくもないかもしれません…
でもまた、今回見つかった 16mmフィルムの中には能の『羽衣』を愛してやまなかった舞踏家エレーヌ・ジュグラリス夫人を偲んで三保松原で催された『羽衣』や、小津安二郎監督の映画『晩春』の中で使われた染井能楽堂での『杜若』など、2世万三郎師の貴重なフィルムが含まれているようで、意外な発見もあるかも。ただ、SP盤とは違ってフィルムには、書籍でいうところの「錯簡」や「脱簡」があっても一見してはわかりませんので、とりあえず業者さんにお願いして保存状態のチェック→デジタル化が可能かどうかの判断をしてもらうことになりました。
今回も長い道のりになるかも知れませんが、折々 進行状況はこのブログでも発信していこうと思っております。ご期待ください~