今年もついに大晦日。能楽師は新年は忙しいのですが、この時期はほっとお休みを楽しんでおります。今年一年を振り返るつもりでいたら。。
今日、名古屋の研究者・鮒さんから ぬえの師家所蔵のSP盤をデジタル化した成果、見本盤のCDが送られてきました。しかも総数10枚! ぬえが上京した鮒さんと一緒に師家に挨拶に伺って、かねて保存状態を調査してあったSP盤を拝借して、そのままそれを名古屋に運び、デジタル化を行う業者さんにお渡ししたのが11月11日。それから考えると、あの大量のSP盤をわずか1ヶ月半ですべてCDに起こしたことになります。驚異的。
ぬえも録音状態をチェックして、新年になってから鮒さんは師家に納めるためのCD盤を作って、拝借したSP盤も返却し、そこでデジタル化の作業は一段落となります。その後、CDを師家に聞いて頂き、許可を得たならば、デジタル化した音源は鮒さんのサイトで一般に公開されることになります。DLも可能ですので、みなさんにも朗報かも。おそらく公開は1月下旬になると思いますが、その際には ぬえもこの場にてご案内を申し上げます。お楽しみにお待ち下さいね~ (^^)v
さて見本盤のCDを聴いてみたところ、『思ったよりは』雑音も少なく、やはり演者のもとに残されていた盤の状態は良かったようです。それにじっくり聴いてみていろんな事を感じました。
【1】 明治時代の「出張録音」
これは雑音の向こうに、遠くで謡(と一部は囃子も)が鳴っている感じ。当時まだマイクロフォンが発明されてなかったので、録音機につけられたラッパに向かって怒鳴って録音した時代で、これは仕方のないところ(映画『海の上のピアニスト』にそういう時代の録音の様子が出てきますね)。ちなみに「出張録音」というのは、当時日本にはまだレコード会社がなく、米国の技術者が来日して、日本の貴重な音源を収録したのだそうです。そして、ここで録音された原盤は米国に持ち帰られて、そこでプレスしてから再度日本に輸入されたのだそう。大変な手間で、これを聴ける人は限られていたんでしょうね。。
それにしてもこれが明治時代の謡かと思うと感慨深い。。初世・万三郎の『七騎落』は舞囃子の録音ですが、そこで演奏される「男舞」の囃子はとっても上手い。囃子方のクレジットはないので誰が演奏しているのか不明なのが残念ですが、スリリングな演奏で、実演はもっともっと素晴らしかったでしょう。
それと、これは驚いたのですが、なんとSP盤の最後の曲目のあとに、クレジットには載っていない『四海波』が収録されいること。これには驚いた! 盤面に表示されていないという事は「番外」での演奏、という意識があったに違いなく、おそらく現代の舞台で行う「附祝言」のような感覚なのではないでしょうか。上記のように録音する事自体が大変手間の掛かる作業だった時代でもあり、当時の日本人にとって音声を記録できるなんて革命的な驚異だったでしょう。この録音の作業が大変な事件だった事は想像に難くなく、しかもこの場で録音された音源は遠く海を渡って米国に運ばれ、そこで製品になる、という。そしてその製品が出来上がるまで、おそらく録音したその成果も実演者には確認できなかったでしょう。演者は まるでわが子を見知らぬ外国に送り出すような気持ちで、不安もありながら演奏されたのではないでしょうか。その演奏の最後に付け加えられた『四海波』。ああ、なんだか明治時代にタイムトリップしてしまいそう。
今日、名古屋の研究者・鮒さんから ぬえの師家所蔵のSP盤をデジタル化した成果、見本盤のCDが送られてきました。しかも総数10枚! ぬえが上京した鮒さんと一緒に師家に挨拶に伺って、かねて保存状態を調査してあったSP盤を拝借して、そのままそれを名古屋に運び、デジタル化を行う業者さんにお渡ししたのが11月11日。それから考えると、あの大量のSP盤をわずか1ヶ月半ですべてCDに起こしたことになります。驚異的。
ぬえも録音状態をチェックして、新年になってから鮒さんは師家に納めるためのCD盤を作って、拝借したSP盤も返却し、そこでデジタル化の作業は一段落となります。その後、CDを師家に聞いて頂き、許可を得たならば、デジタル化した音源は鮒さんのサイトで一般に公開されることになります。DLも可能ですので、みなさんにも朗報かも。おそらく公開は1月下旬になると思いますが、その際には ぬえもこの場にてご案内を申し上げます。お楽しみにお待ち下さいね~ (^^)v
さて見本盤のCDを聴いてみたところ、『思ったよりは』雑音も少なく、やはり演者のもとに残されていた盤の状態は良かったようです。それにじっくり聴いてみていろんな事を感じました。
【1】 明治時代の「出張録音」
これは雑音の向こうに、遠くで謡(と一部は囃子も)が鳴っている感じ。当時まだマイクロフォンが発明されてなかったので、録音機につけられたラッパに向かって怒鳴って録音した時代で、これは仕方のないところ(映画『海の上のピアニスト』にそういう時代の録音の様子が出てきますね)。ちなみに「出張録音」というのは、当時日本にはまだレコード会社がなく、米国の技術者が来日して、日本の貴重な音源を収録したのだそうです。そして、ここで録音された原盤は米国に持ち帰られて、そこでプレスしてから再度日本に輸入されたのだそう。大変な手間で、これを聴ける人は限られていたんでしょうね。。
それにしてもこれが明治時代の謡かと思うと感慨深い。。初世・万三郎の『七騎落』は舞囃子の録音ですが、そこで演奏される「男舞」の囃子はとっても上手い。囃子方のクレジットはないので誰が演奏しているのか不明なのが残念ですが、スリリングな演奏で、実演はもっともっと素晴らしかったでしょう。
それと、これは驚いたのですが、なんとSP盤の最後の曲目のあとに、クレジットには載っていない『四海波』が収録されいること。これには驚いた! 盤面に表示されていないという事は「番外」での演奏、という意識があったに違いなく、おそらく現代の舞台で行う「附祝言」のような感覚なのではないでしょうか。上記のように録音する事自体が大変手間の掛かる作業だった時代でもあり、当時の日本人にとって音声を記録できるなんて革命的な驚異だったでしょう。この録音の作業が大変な事件だった事は想像に難くなく、しかもこの場で録音された音源は遠く海を渡って米国に運ばれ、そこで製品になる、という。そしてその製品が出来上がるまで、おそらく録音したその成果も実演者には確認できなかったでしょう。演者は まるでわが子を見知らぬ外国に送り出すような気持ちで、不安もありながら演奏されたのではないでしょうか。その演奏の最後に付け加えられた『四海波』。ああ、なんだか明治時代にタイムトリップしてしまいそう。