ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

年末のご挨拶と、「丹波篠山 翁神事」のご案内

2009-12-30 16:02:29 | 能楽

年末も押し迫りまして、なんだかアッという間ですね~。

まずは本年も当ブログをご愛顧頂きましてまことにありがたく深謝申し上げます。m(__)m
ちょいと年の後半には更新が滞ってしまいましたが、来年もまた能の作品研究を通じて能楽について、また日本文化について考えていきたいと思っております~

今年の ぬえは『殺生石・白頭』、『望月』、『現在七面』の3番の能のシテを勤めさせて頂きました。どちらかというとシテを勤めた回数は少なかったのですが、珍しく白頭を使う機会が2度もあったことと、装束に工夫を凝らして仕掛けを施す必要がある曲ばかりだったのが印象に残りました。結果的にどの曲も大過なく勤めることができてホッとひと安心しております。

今年も子どもたちとの触れあいがとっても楽しかった年でした。伊豆では新作の子ども能を指導しただけでなく、子どもたちと成功祈願のため900年前にここに配流となった源頼朝が信仰した守山八幡宮に参詣したり、花火大会に出かけたり。結果的に子どもたちのがんばりと責任感によって大成功でした。彼らとは冬になってもクリスマスイルミネーションを一緒に見に行ったり、そうして先週は同窓会を兼ねてクリスマスパーティまで行いました。そういえば去年伊豆で子方として出演してくれた綸子(りんず)ちゃんは、ぬえの師匠からお誘いを頂いてこの6月には東京で子方を勤めてくれ、これも大成功をおさめることができました。東京でも小学校で小さな公演をしたり、なんだか子どもたちからパワーをもらった1年でしたね~。これもご家庭の協力がなければ成し得ないこと。ご父兄の方々にも感謝申し上げます!

さてこの年末、ぬえは師匠に従って、恒例の「丹波篠山 翁神事」に出演して参ります。

兵庫県の丹波篠山…いまは篠山市というのですね。デカンショ節と黒豆、丹波栗、ボタン鍋で有名なこの地方は ぬえの師家の故郷です。今から600年余り昔に、師家はこの地を本拠として能を演じていました。その縁から師家では毎年元旦に師匠がこの地で『翁』を演じることによって、祖先へのご挨拶と良き年が訪れるように祈りを捧げています。この神事も、もうこれで25年ほどは続いているのではないでしょうか。

篠山には古い春日神社がありまして、この境内に建つ能舞台がその上演の場所になります。とても趣のある舞台ですが建てられたのも古く、文久元年といいますから幕末ですね。今から150年ほど昔に建てられたもので、近年 重要文化財の指定を受けました。

さて、ここでの『翁神事』ですが、開演は真夜中です。深夜、年が改まった頃に支度を終えて(ですからこの時に楽屋の中でお囃子方とも「あけましておめでとうございます」と新年の挨拶を交わします)、0時30分より『翁』を上演します。もう身体中が震えるほどの寒さで、年により雪が舞台に降り込んだり… 最近は温暖化の影響か寒さでつらい、ということは少なくなってきましたが、今年の大晦日の天気は大荒れの予想です…

神社の境内に建っている昔ながらの舞台ですから、初詣のお客さんで境内はいっぱいの中での上演です。もちろん入場料というものもなく、そこここで人々が新年の挨拶を交わし、また鈴を鳴らして神様にお祈りを捧げる喧噪の中での上演。かつての能楽もこういう場で演じられたに違いなく、往古の能の演じられ方に思いをはせながら ぬえも舞台を勤めております。

面白いのはこの『翁』、上演している間にお客さまから「おひねり」が舞台に投げ込まれるのです(!)。演者側の誰かがそういう演出をお客さまにお願いしたのではなくて、これはお客さまの方から自然発生的に始まったもの(!!)なのがスゴイと思いますが、お客さまも「翁面」を掛けたシテ…というかこの場合は「大夫」と呼んだ方が似つかわしいと思いますが、それを見て「神」を感じておられるのでしょう。ぬえは能は「演劇」と信じたいと思っているのですが、反面、こういった「心」を忘れては能を演じたことにはならないのかもしれないと感じます。

もう、ぬえも20年以上この神事のお手伝いに参上していますが、近年は後輩もできて、出勤も時折、という感じになりました。一方お囃子方は勤続25年です(!!!)。年越しを自宅で迎えたことがないという。そして今回の ぬえは『翁』の後見の大役を頂きました! 舞台上で大夫の面紐を縛ったり、装束の着付けもする大役で、ああ~手がかじかまなければいいけれど…(×_×;)

そんなわけで ぬえは大晦日から丹波篠山に出勤して参ります。往復とも車で、交代で運転しながらの長旅。無事の成功を祈ってやってください~~m(__)m

それでは本年も残り少ない日、充実した時間をお過ごしください。来年もみなさまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げております。

子ども能出演者とクリスマスパーティ

2009-12-28 04:00:46 | 能楽

を? どうも子ども能再演のあとにムリヤリ仕舞の発表をさせたママたち(の一部)がブログに画像を載せたらしい。なあんだ、いいのか~。

というわけでお仕舞『老松』の画像を公開してみることにしました。洋服のままですが、まあ発表に至ったのが奇跡的でしたんで…。まずこれがママたちが初めて習った仕舞→しかもようやく前回仕上がったばかり→メールでこの日にやりません?と持ちかけてみた→阿鼻叫喚の拒否メールがちゃあんと人数分届く(当たり前)→ぢゃ「間違って当たり前ぐらいの気持ちで。できるだけ全員参加が望ましい」ということにして安心させておく→でもじつはこの提案では仕舞の発表は取り下げていない(^◇^;)→当日、子どもたちの発表が終わってから子どもたちに「ママの仕舞も見た~~い」と言わせる→拒否できなくなる。ああ~っ、ぬえってなんてカシコイんでしょう!(`´メ)

それでもママたちのお仕舞は予想を遙かに上回って、よく出来ていました。だれも間違えることもなく。。ホントは「どうなるかな~?」と心配はしていたのですが、それは杞憂に終わりましたね。じつは特訓を重ねていたのか!!??

ま、この芸能は見ているよりも演じる方が100倍楽しい、と言われていまして、人前で演じる楽しさに気がつけば、また上達にも近づくのですよ。なんかママたちは「次はお花見deお仕舞ってのもいいかも~」と盛り上がっているらしい。しめしめ。(;^_^A

で、場所を中華のレストランに移しまして、子どもたちやご父兄も集まって、同窓会兼クリスマスパーティとなりました。いま伊豆の小中学校ではインフルエンザが大流行中のようで、当日が近づいてからもバタバタと倒れる子が続出したのですが、それでも総勢30数名が集まってくれました。







お食事もさることながら、子どもたちのためには必須アイテムのビンゴゲームも用意しまして。これがまたあまり高い会費も頂けませんから景品を買う予算も限られてきまして、上位の景品は ぬえが買っておいたのですが、それでは全員に景品を行き渡らせるのは到底不可能。。そこで、各ご家庭に景品の提供をお願いしました。

ををっ! そうしたところ、いろ~んな景品が集まりました! これはっ!どう考えても1等賞になるような景品もあり、また。。ご家庭でご不要になった。。いやいや、とにかく厳選された景品が提供されました! 中にはスゴイ提供景品もあって、今朝 実家の畑からとってきました! という、段ボール箱いっぱいに詰め込まれた白菜と大根とカリフラワーなんてのもありました。すごいすごい。



んで、ビンゴゲーム。ぬえはパソコンとプロジェクターを持ち込みまして、壁に映写してのビンゴ大会です。これは盛り上がりました~ 中でもママたちのこの真剣な表情。あの~。。子どもたちが当選するのを優先しようねっ(¨;)





こうして大騒ぎのうちに同窓会も終わり、さてみんなが外に出たところで、どうやらレストランの駐車場でイチゴ狩りのキャンペーンが行われていたようで、み~んなイチゴ娘さんからイチゴをもらっておりましたそうです(ぬえは幹事ママの会計におつきあいしていたので知らなかった。。ん~、紅ほっぺ食べたかった~)。それどころかそのキャンペーンを静岡新聞が取材に来ていたそうで、子どもたち、しっかりイチゴを頬張っているところを翌朝の新聞に写真入りで掲載されていたという。。はあ、そりゃまたオトクな同窓会でしたね~

こんなわけで、楽しい時間はあっという間に過ぎて、重ねての再会を約して、みんなとお別れしたのでした。


今回映写したビンゴはフリーソフト「MiC BINGO」を使わせて頂きました。
作者に敬意を込めて、以下にサイトをご紹介しておきます~


MIC BINGO


子ども能を再演

2009-12-27 00:26:46 | 能楽

伊豆の子どもたちを集めてのクリスマスパーティをする予定でしたが、ところが話が盛り上がって、どうせみんな集まるなら、と 子ども創作能の再演(?)に急遽話がまとまりまして、大急ぎで準備をして伊豆に向かいました!

今日、26日が開催日で、集合時間が早いものですから前日から宿泊しましたが、なんと狙いすましたように天気予報は26日だけ雨! ぬえ、じつは自他ともに認める雨男なもんで(←能楽師としては それでいいんか?と言われそう…)、ああ、またやっちゃった~(×_×;)

車にてるてる坊主をつり下げて。。それでも不安なまま出発しました。なんせ今回の上演場所は韮山の公園にある野外ステージなんです。ステージには屋根があるので、まあ条件が良ければ上演できないこともないのですが、子ども能を見守るお母さんたちはみんな傘をさして、では興もそがれるし、ステージの上も泥だらけでは支障もあるでしょう。第一子どもたちのテンションも盛り上がらない。。

ところが宿泊したお宿の女将さんが、聞いてみるとこれがまた自他ともに認める晴れ女だそうでして、ええっ、マジっすか!? なんとまあ、傘なんて買わないんだそうです。たまにお客さまからキレイな傘を頂いたりするそうですが、これもぜ~~んぜん使う機会がないため、気がつけば傘の柄が錆びていたりするほどだそうで! ぬえから見るとスゴすぎです。

それでも夜分までテレビの天気予報では、やはり狙いすましたように上演予定時刻の周辺だけ雨。その後天候は回復、ですって。上演のあとにはクリスマスパーティがあってお店を予約してあるし、上演時刻は変更できません。。 テレビに映し出される天気図では しっかり九州~中国地方には傘マークが。。ははあ、その雨雲がこちらに近づいて来ているのね。。と恨めしくテレビを眺めていました。

ところが一夜明けてみると、さすがに路面は濡れていますが、雨は降っていない(!)。んんっ!? と思って再び天気予報を見ると。。ええっ、今日一日ずうっと晴れマークが表示されています。。どういうこと?

どうやら前日の予報よりも早く雲が動いて、夜の間に雨雲は通り過ぎていったようです。これは。。うまく上演ができそうだ! 早速お母さんたちに連絡をして、雨上がりですからステージの上を掃くためのホウキや雑巾を用意して頂きました。

。。が、会場に向かっているうちに みるみる雲も薄くなっていって。あらら陽もさしてきました。そんなわけで舞台もとくに汚れることもなく、簡単に打ち合わせをして、さあいざ上演!







ん~、よくみんなセリフが頭から抜けていないねえ。いや、ぬえが作った文章がちょっと難しかったので、子どもたちの中でも台本を片手に登場する子もいたのですが、さすが主役級のお役を頂いた子はほとんど間違えずに勤めることができました。いやいや、よくやったよ みんな!

そのうえ、この秋からお稽古を始めたお母さん方にも(ムリヤリ)仕舞の発表をして頂きました。最初に習う曲だから、ぬえは内心どうなるかなあ。。と思ってはいたのですが、まあ、こういう場面での上演だから、子どもたちと同じく「間違えるのは当然」というスタンスで演じて頂いたのですが、結果はなんと! 誰も間違えずに、きちんと舞うことができました。いや、失礼ですがちょっと意外でしたね。稽古のときよりも成果は数倍よかったのです。あとで聞いた話では出演したお母さん方では「次はお花見と仕舞なんていいね~」という会話もあったのだそうで、人前で舞う楽しさもわかって頂いたようで、これはまたうれしいことです。へっへっへ。そのままドップリと能楽三昧の世界に、いらっしゃいませ~

え? お母さん方の仕舞の画像? それはご本人たちが恥ずかしがるから今回は自粛しておきましょう。
次回に乞うご期待です~

サンタさん、来ました

2009-12-25 01:44:01 | 能楽
ジングルベ~ル ジングルベ~ル♪ 今日は楽しいことだらけ。

まずは朝から千葉県の野田市で月1回催している能楽講座に出向きました。ここの講座は本当に盛り上がっていまして、ぬえも毎回とっても楽しみにしています。なんと言っても聴講してくださる方々が生粋の能楽ファンで、能の見方について細かい解説ができるのが良いです。なんせこのブログのようなコアな話をする講座ですし、楽屋落ちみたいな話も すんなり理解してくださると、話す方にも意欲がわいてきますよね~。お客さんが楽しんで、はじめて講座ってのは成り立つな~、と、この講座では常に思います。

そうして午後には帰宅して、明日から出かける伊豆のクリスマスパーティに向けての準備です。じつは、突然ながら、せっかく子どもたちが集まるのだから、夏に上演した「子ども創作能」を再演してみようか? という話がまとまりまして、これは大変! 。。とは言っても、会場は公園に設えられてあるステージで、子どもたちも洋服のままでの上演です。囃子どころは ぬえが一人でアシラって、小道具なんかも最小限度のものを使って。なんというか、夏の催しに向けての稽古と同じようなレベルで、子どもたちも、もうセリフもアヤシイと思うので、台本を片手に持ったままで上演していいよ、と言ってあります。でも同窓会のような集まりなのに、ここまで盛り上がれるのがうれしいですよね~。

。。が、しかし。時間が足りませぬ。
。。と言うのも、年賀状を書いてない。。ああ~、これはヤバイ! これに気づいたあとは苦しいことだらけになってしまいました。今さっき、ようやくパソコンで一気に年賀状を作り上げましたが、もう、手書きの文字ひとつ入っていないという有様。。これじゃあかえって不義理だよなあ、とも思いつつ。。

そうこうしているうちに真夜中になりまして、ぬえ家にもサンタさんが抜き足差し足やって来る時刻となりました。
と言っても隣の部屋にいくだけのサンタさんですがね。(-_-メ)

例の、 世界征服 をたくらんでいる 豆ぬえ(年長さん)ですが、その後ようやく説得に成功しました。「君のお母さんは泣いているぞ」「手を上げて投降しなさ~い」

いや、最初はお弟子さんなどにも、どうしようか? と相談して、「じゃプレゼントは地球儀にすれば?」というアイデアも出たのです。「いや、あのね? 征服しようにも、まず征服する世界の国の名前を覚えなきゃならないぢゃないか」 ををっ! その手があったか。うまく教育に誘導するんですな?

でも。。心配もあるのです。片手に持ったブランデーグラスをくるくる廻しながら地球儀を眺めて、「ふっふっふ~。まずはアジアだな。海を隔ててアメリカも簡単には手を出せまい。」と言いながら年長さんが葉巻をくゆらせでもしたらどうしよう。。 それで、これはなんとか世界征服の夢を諦めさせるように説得することになったのです。

「ほら、世界征服をするのにも、まずは日本を動かせないとダメだから、被選挙権を手にしてからじゃない? そうなったら選挙参謀も要るよ。そうだ、サンタさんには有能な選挙参謀をお願いして。。いやいや、そうじゃないや。(__;) ええと、そうだ! いっそ早く被選挙権をくださいとお願いして。。いや、ちょっと待て(;´_`;)」

結局 豆ぬえをなんとかトーンダウンさせることができまして。ああよかった。

で、決まったサンタさんにお願いするプレゼントは。。  ミニチュアの戦車。



あ。。そうなのね。。世界征服って、あくまで武力侵略のことなのか。。  (-_-メ)


サンタさんは実在するか

2009-12-23 02:02:06 | 雑談
。。という話題が先日お稽古場でもちきりになりました。

稽古に来ている女の子(小4)ヒトちゃんが、やはり同学年のお友達の女の子のアヤちゃんに尋ねていました。「ね?ね? もうサンタさんにプレゼントお願いした?」。。なんだかとってもうれしそう。

ところがアヤちゃんは ふ、とため息をつくとヒトちゃんに言ったのです。「サンタさんなんて。。ホントはいないんだよ」
ををを~っっっ!!??

「え?」きょとんとした顔で ヒトちゃんは聞き返しました。「だって、みんな信じているじゃない。去年だってプレゼントもらったよ」
「ううん」首を横に振って、今度ははっきりと、でもどこか寂しそうな声でアヤちゃんは言いました。「でもやっぱりサンタさんはいない」

あっけにとられたように、信じられないという顔のヒトちゃんは、それでもアヤちゃんの真剣な声を聞いて、疑念がわき出てきたようでした。おそるおそる、ヒトちゃんはアヤちゃんに尋ねます。「それじゃ。。ホントは誰だか知ってるの?」
「うん。知ってる」

ああっ、それを言ってしまうの!? いつかは知らなければならない真実。それは大人になるために必ず通らなければいけない残酷な試練。いつも私を見守ってくれている、神様のような方がいるんだ。。そういう甘い幻想から、いつかは決別しなければならない。そうして大人になって、彼女たちもいつかは母親になり、そのとき自分が見守る子どもたちに、世界中があなたを愛している、と言ってあげたい。だから彼女たちも 我が子にやはり言うだろう。「いい子にしていればサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるのよ」。。その言葉を聞いた幼子は、誰か知らないけれど自分を見守ってくれる優しい神様のような方を想像して安らかに眠りにつくだろう。そうして安心して育つ子もまた、いつか真実を知る日が来るのだ。。

「ホントに知ってるの?」
「知ってるよ」

ああ~~っ、しかし! しかしっ! それを知る日が、今日のこの日である必要がどこにあるのだろう!? 明日ではいけないの? あさってでは許されないの? 知ってしまえば。。知ってしまえば時計の針を元に戻すことは出来ない。彼女たちが母になる日はずっと先の未来だ。いつかは誰だって大人になる。。でもその日をせめて少しだけ延ばしてやることはできないの? 世界中が君たちを愛してる。それはひとつの真実なのだ。でも、それを知ってしまったら。。サンタさんが誰なのかを教えてしまったら。。この言葉さえ色を失ってしまう。家族だから愛しているんじゃない! 親だからプレゼントをあげるんじゃない! そうじゃない! 世界中が君たちを愛しているんだよ、と伝えたいから親はプレゼントを用意して、誰からかがわからないように、そっと君の眠っている横にそれを置いて立ち去るんだ。そうして次の朝、驚く君の顔を見て、そして満面の笑みで君がこう言うのを待つんだ。「パパ! サンタさんが来てくれたよ!」

それは本当はパパが枕元に置いたものだけれど、それでもパパからのプレゼントじゃないんだ。君が夢の中で見た美しい世界。。ねたみも争いもない、そんな世界のみんなからのプレゼントなんだよ。心の中でつぶやいて、そうしてパパは思う。この子が大きくなるまでに、きっと世界は良くなる。パパだってがんばってそうしてみせるさ!

だから、だから もう少しパパに時間をおくれ。君は安心して美しい夢の中に生きていておくれ。そうすればその夢が君の現実になる日が必ず来るさ。。

「じゃ、誰なの? サンタさん」
「それはね。。」

うわわわ~~っ! それを言ってはいけない! 私の名前を言ってはいけない! 私の名前は悪魔を呼び出す魔法の呪文。その名前は呪いが掛けられた罪深い言葉。それは君を恐ろしい魔界の迷宮につき落とす禁断の謂い。その名前は。。その名前は。。



「ママ」



。。え? 何ですと? (゜_゜;)




「ママだよ」


。。えええ~~?? (O_o)WAO!!!
パパぢゃないの? (__;)

。。そうなのか。。

その後周囲に聞いて回ったところ、「あ、今はママでしょう。昔はサンタさんは じつはパパでしたけどね~。最近はこんな世の中だからパパは仕事に忙しくて家にいないから存在が薄いのかな~。わっはっは」ですって。

んんん~~。。複雑。


ちなみに ぬえ家ではまだサンタさんを信じている 豆ぬえ(←年長さん)のサンタさんへのお願いは。。

「世界征服」 らしいです。。

それってモノじゃないやんけ!


修善寺・虹の郷のクリスマス・イルミネーション

2009-12-20 22:56:01 | 能楽

先日は伊豆の稽古のあと、修善寺に遊びに行きました。

修善寺のすぐそば。。と言ってもかなり標高のある山の上に、『虹の郷』というアミューズメント・パークがあります。なんでも「イギリス村」とか「カナダ村」といったインターナショナルな色彩の強い街並みを再現したエリアがあると思えば日本庭園があったり「匠の村」という、木工や陶芸の体験コーナーを備えた純和風なエリアがあったり、バラエティに富んだ、ちょっと不思議なパークのようです。

ん~ ぬえはこの『虹の郷』についてよく知りませんでした。。なんせ ぬえ、もう伊豆に稽古に通って10年になるのですが、修善寺より先には行ったことがにゃいという…(^◇^;)

ところが、この『虹の郷』…というところで、先日からクリスマス・イルミネーションが始まるというのです。しかもイルミネーションを見る夕方からは入園も駐車場も無料になるという。へえ~~太っ腹ですねい。ちょうど日取りも合うし、それでは、ってんで稽古の帰りに見に行くことにしました。んで、一人じゃあちょいと寂しいんで、前回の稽古の際に、謡と舞のお稽古をしてくださっている、子ども能出演者のお母さん方もお誘いしてみました。ん~その時間は晩ご飯の準備もあるし難しいかな~? とは思ったのですが。

そしたら、なんということでしょう、お母さん方も、また子どもたちもみ~んな揃って ぬえと一緒にイルミネーションを見に行ってくれることになりました。

ん~、ところが。なぜか噂がウワサを呼んだらしく、お稽古をしてくださっているお母さん方ばかりでなく、そのほかの子ども能出演者の子どもたちも、そのお母さん方も お集まり頂くことになったそうです。(O.O;)(o。o;)

結局。。総勢10名以上集まることになって、みんなで ワイワイと『虹の郷』に出かけました。いや~、夏の伊豆での催し以来、久しぶりに会う顔もあり…最近もちょっとの時間だけでしたが見た顔もあり… いや、じつは先日、教え子の子どもたちが通う小学校で、学芸会ではないのだけれど、児童がクラス毎に教室でお店屋さんをやったり演劇を披露したりする お祭りがありまして、ぬえはそれを見に行ったのでした。へえ~、ぬえの稽古のときとはまた違った顔をした彼らがそこにはいました。相変わらずみんな元気だねえ~

さて、そんなわけで大人数になったイルミネーション見物でしたが、広大な『虹の郷』のうち、イルミネーションで飾り立てているのはパークの入口付近の「イギリス村」だけでした。それでもイギリスの田舎を模した建物に飾られたイルミネーションはとってもキレイ!



…だったんですが、いや、とにかく寒かったです~(×_×;)
山の上だけあって気温も4℃だとか。。うわ~。。

しかし子どもたちは、備え付けられているフラフープに興じたり、もう走り回っています。「あ~暑い!」なんて言ってる。。 ぬえは自動販売機で買った缶の紅茶で暖を取っておりました。







結局 ぬえはイルミネーションを見ている時間よりは、寒風を避けて土産物のお店をひやかしていた時間の方が長かったりしたわけですが。。

こんな様子で久しぶりに子どもたちと旧交を温め合ったわけですが、そんな話の中から、ひょんに「夏以来、住む地区が違う子どもたちはほとんど会っていないし、また催しを通じて友だちになったお母さん方も 全然会う機会がないから。。この機会に同窓会を兼ねてクリスマス・パーティでもやります?」なんてお話が出てきました。ん~、こいつは面白そうです。早速みなさん準備に取りかかり、ぬえも協力を始めました。クリスマスって、あと1週間じゃない~~っ(¨;)

空からニャンコが降ってきた話

2009-12-08 10:43:17 | 能楽

え~、マリモ姫。。熟睡中でございます。。
草食動物なのにこの緊張感のなさはなんだ。。野生じゃ生きていけませんなあ。。(×_×;)
この姿をはじめて見たときは本気で「死んじゃった!!!????」と思ったという。。(O.O;)

じつは先日 国立能楽堂に行ったら、楽屋事務所の職員の方から「ぬえ先生のお宅のウサギさん、かわいいですねえ」と言われたのに気をよくして、秘蔵写真をアップしてみました~。

ところでこの日は師匠のお弟子さんの発表会でして、能『羽衣・彩色之伝』をはじめ、素謡や舞囃子が盛りだくさんの催しになりました。能『羽衣』を勤められたお弟子さんは、アマチュアで、しかも女性でありながら、かつて何度も能を勤められて、ついに『道成寺』まで披かれた(!!)ことがある大ベテラン。今回は「あれ? 羽衣ですか?」と思ったのですが、「ええ。じつは羽衣。。やったことがないんですよ」というお答えでした。『羽衣』は能を勤められるところまで熟達したお弟子さんが しばしば最初に勤められる能なので、これは意外なお答えでしたね~。難しい曲にはたくさん挑戦してこられたのに、『羽衣』は飛び越えちゃっていたのですね~。

この日、ぬえは師匠より素謡『遊行柳』のおワキの役を頂戴しておりました。師匠の関西のお弟子さんがおシテを勤められるそのお相手で、これは緊張しました~(..;) 結果は。ちょっとだけ。。1文字言い間違えたようで、ん~心残りです。。

さらにその直後には秘曲『姨捨』の地謡がありまして、もう午前中だけで体力の半分は使ったような気持ち。。この『姨捨』は素謡だったのですが、こういう大変に重い曲ではお相手のワキのお役は本職のおワキ方の能楽師がお勤めになることが多いですね。おワキの役の謡にはシテ方の謡とはまた違った心得もあるのでしょうし、本来はすべての素謡にもおワキの役はワキ方の役者が勤められるべきでしょう。実際には経済的な問題があったりして難しいですけれども。。

さてこの日楽屋で先輩から「ウサギさん、かわいい?」と唐突に尋ねられました。おや? これは。。心が動いているのかな? そう思った ぬえはマリモ姫の魅力を熱弁しておきました! もうこりゃ千載一遇のチャンスなわけで。洗脳だ~、洗脳だ~。(^_^;)

いや~ベタベタの甘えんぼですよ~(*^_^*) 寒くなるとお布団の中に入ってきますよ~(#^.^#) 夜更かししていると、いつの間にかずうっとそばにいますよ~(^。^)V 「ふうん。。そうなんだ~」(¨;)

それから なんとなく動物の話になっていったのですが、この先輩、妙なことを言い出しました。「いや、じつはね、この間数日間だけネコを飼っていたんだよ。。いや、飼っていたって言えるのかな。。」どういうことですか? 「いやね、うち、マンションの3階なんだけれど、突然ベランダにネコが降ってきて。。仕方なく飼ったんだよ。」

なんですと?? (O.O;)

よく聞けばこういう話でした。ある日先輩の3階のベランダに、ホントに「ドスン!」とニャンコが降ってきたんだそうで。どうやら上の階の住人が飼っていたニャンコが足を踏みはずしたか何かで落ちてきたらしい。(^◇^;) まあ、ケガもなかったようで、それはそれで奇跡的なことだったのですけれども。 問題はそのマンションがペット禁止だということで、さあ、飼い主の住人も、拾った先輩も困ってしまったわけです。なんせ「迷いネコ」という張り紙も出せないし「拾いました」とも言えないわけで。。

どうにも困って、ついに先輩は市役所に相談したのだそうです。野良ネコ扱いでは処分されてしまうから、事情を説明してなんとか助ける道を模索して。。

そうしたら、なんと、そのニャンコの飼い主さんも同じように考えて市役所にだけは相談していたのです。おそらく処分されてしまうことを恐れて、ニャンコの写真を持参して、「このニャンコが引き取られてきたら知らせてください」と言ったのでしょう。こうして無事に飼い主が判明して、ニャンコは帰って行きました。(゜_゜) まあ。。ペット禁止のところナイショでの飼育は続くわけですんで、一概によかった、とは言えないのかもしれないけれど。。よかった。(^.^)

そんで、先輩の冒頭の言葉に続くわけですね。「ねえ、ぬえくん。ウサギさんってかわいい?」。。(^◇^;)

なんか情が湧いちゃったらしい。先輩、ニャンコを返す日にはお風呂場でニャンコをきれいに洗ってあげたそうです。
ウサギさん、かわいいですよ~(#^.^#)

お? マリモ姫も目を覚ましたらしい。



プリント作ってますっ!

2009-12-05 01:35:59 | 能楽

このところ、ちょっと心を入れ替えまして(?)お弟子さんが謡や仕舞を習得するための参考書としてのプリントを作っております。なんと今回は五線譜つき!(^^ゞ

もとより ぬえは謡や仕舞を習うお弟子さんのお稽古に当たっては、やたらプリントを出す方でして。。(^_^; ずうっと以前から、まだパソコンを持っていない頃から手書きでプリントを作っておりました。

でもこれ、結構 大変な作業でして、プリントを改訂しようとは思うのですが、なかなか作業に取りかかるキッカケがなく。。今回のお稽古プリントの総改訂は もう かれこれ10年ぶりぐらいになるんではないかしら。で、どうせ10年ぶりなのならば、と気合いも入りまして、今回の ぬえのプリントは、なんとヨワ吟の上歌の五線譜表記入り! 我ながら なかなかの力作と思っています。



じつは ぬえ、ヨワ吟の音階変化を習得するのに。。初心の頃には。。同じく五線譜で覚えたのです。。(O.;)

ぬえは大学時代にはじめて能楽と触れて、ついには斯道に飛び込んでしまった一代目の能楽師なのですが、いや~その当時は邦楽なんぞというものには触れたこともなく。。ところが国文学の研究のついでに初めて見た能楽にあまりに強い衝撃を受けてしまいまして、それから学業そっちのけで(?)能楽鑑賞に明け暮れるようになりました。当時の大学の恩師とは今でも交流がありますが、「キミは結局。。文学に帰って来なかったねえ」なんて言われておりまする。

あるとき学内に「能楽研究会」なるサークルがあることを知り、入部したんですね。最初は能楽を鑑賞するサークルだとばかり思っていました。ところがこれが謡や仕舞を稽古するサークルでして、そこで ぬえはいまの師匠と出会うことになり、そうして今の ぬえがここにいるわけなのですね~。いや、人生何が起こるかわからないもんです。

さてサークルでは師匠の稽古は月に3回ほどで、そのほかの日はもっぱら先輩に指導を受けたのですが、当時の ぬえはどうしてもヨワ吟のメロディが習得できずに ずいぶん悩んだものです。そうしているうちに。。女性の先輩が言いました。「ぬえ君、譜面 読める?」「はい? 。。読めますが。。」「それじゃこの上歌を譜面に書いてあげる」「!!」

その先輩、ピアノを長く習っておられて、ソルフェージュにも長けておられたようで、困っている ぬえを見かねてそう言って下さったのです。「ぬえ君、ちょっとこの上歌の最初のところだけ。。自分が一番大きな声を出せると思う音程で謡ってごらん」「見~も~せ~ぬ~ひィと~~ォや。。」「ふんふん。。ぬえ君の出しやすい上音は“ミ”ね。それじゃ上ウキはこうで、中音はこうで。。」と、スラスラとその上歌を五線譜に書いて下さったのです。(゜_゜;)

帰宅した ぬえは早速ギターでその譜面から音を拾って。。要するにギターで上歌を弾いてみました。(^◇^;)

ををっ、よくわかる。。(^_^)b
この日を境に ぬえはヨワ吟を謡えるようになったと言っても過言ではありません。(;^_^A

プロとして恥ずかしい言動かもしれませんが、どこまで行っても ぬえはアマチュア出身の能楽師。でも、それだからこそ当時の ぬえと同じく、まったく邦楽とは縁のない環境で育ち、現に生活している現代人のお弟子さんにとって、謡曲のメロディは難しいものなのだと実感するわけで、そうして今回の五線譜入り参考書プリントを作ることを思い立ったのです。

上歌など平ノリの謡曲を、囃子が入らない素謡の状態で五線譜に表記すると拍数が一定に収まらないので懸念はしていたのですが、幸いリズムの齟齬は無視して表記できるソフトを見つけられたので、みごと! 手書きに依らず譜面に書くことに成功しました! これはフリーソフトなので作者に敬意を表してソフトおよび作者のサイトをご紹介しておきます。

Studio ftn Score Editor


ぬえと あやめの ものがたり

2009-12-01 23:46:28 | 能楽

もうちょっと以前になってしまうのですが。
伊豆長岡で「商工祭」というイベントがありまして、たまたまその日に伊豆を訪れていた ぬえは早速行ってみました~。
ふうむ、「商工祭」と名前は堅いながら、出店が軒を並べてすごい人出! 地域の飲食店が出張していたり、またもちろん農作物などの特産品をならべた、まさにお祭り状態のイベントでした。

ところが。。

よくよくプログラムを見ると、なんと「創作紙芝居 ぬえと あやめの ものがたり」というのが上演されるそうではありませぬか! ふむう、ぬえかあ。あやめ御前と源頼政のお話ならばともかく、あやめ御前と ぬえかあ。。どうして??

うむ、これはぜひ見ておかねばなるまい。



紙芝居は、ちゃあんと自転車の荷台に取り付けられたステージ(?)で披露されました。ををっ! なんと ぬえさんご本人まで横でちゃっかり紙芝居を見ています(???) ん~、やはり ぬえってこんなに怖い姿なんだ~。猿飛出を掛けた姿しか思いつかない ぬえにはちょっとショックでありました。よく見ると芸の細かいことに、シッポがちゃあんとヘビになっていて、左の肩からのぞいています。

紙芝居の内容はこんな感じ。

昔々、伊豆長岡の山奥に ぬえが住んでいました。 。。ええ??(¨;)

村人は山から聞こえてくる恐ろしげな鳴き声を怖がっていましたが、ある日都から偉い殿様がやってきて、山で見つけた美しく光る大きな岩を土産に持ち帰ったところ、その鳴き声はぴたりと止んだのでした。

一方都では殿様をはじめ周囲の者が次々と原因不明の病気に罹り、いつしか人々はこの岩に籠められた ぬえの仕業と言い合うようになり、ぬえ退治のために源頼政が選び出されます。頼政はひそかに思いを寄せていた あやめ姫に、必ず ぬえを退治してみせる、と言いました。しかし あやめ姫は押し黙ったまま、思いに沈んでいるようです。あやめは、ぬえが人々を苦しめるような、そんな悪さをするとはどうしても思えなかったのです。それは彼女が幼い頃、一度 ぬえに会ったことがあるからです。 。。えええええ~~っ(O.O;)

幼い頃 長岡に住んでいた あやめ姫は、いつも子どもたちにいじめられていました。ある日泣きながら山に逃げ込んだ あやめでしたが、突然恐ろしい声をすぐそばに聞いて震え上がりました。現れた怪獣・ぬえ。ところが ぬえは「ごめんごめん」と あやめに謝ります。こんな小さな女の子が山の中にいるとは思わなかったんだ。。こうして じつは優しい心を持った存在と知った あやめは ぬえと仲良しになりました。その ぬえが今 都に来て、悪事を働いているとは彼女にはどうしても考えられなかったのです。

そうしているうちにも ぬえ退治の準備は進み。。ある夜の夢の中で あやめは ぬえに再会しました。ぬえは言います。「自分の悪い心があの岩の中に籠められている。それに引かれて自分自身も都に来てしまったが、長岡から引き離された岩からは とめどもなく自分の悪い心が流れ出していて、自分の心もそれに染まってきてしまっている。。岩を長岡に戻してほしい。。」ぬえの「悪い心」とは、人間に異形の者と忌み嫌われたその怨みで、それを岩に籠めることで ぬえは自分の心が悪心に染まらないようにしていたのです。

しかし時はすでに遅く、その夢も突然の ぬえの悲鳴でかき消されてしまいました。頼政の放った矢が ぬえの身体を貫いたのです。。


んん~ ぬえ、いいヤツじゃないですかっ!しかもラストがかわいそう。「創作紙芝居」ということでしたが、かなり高度な台本でした。ぬえ~、がんばれよ~、ぬえが応援してるからね~(あ、死んじゃったんか。。)