能楽の心と癒やしプロジェクト
第23次被災地支援活動
(2014年08月13日~17日)
〔活動報告書〕
【趣旨と活動の概要】
東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒やしプロジェクト」では、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、2011年6月よりすでに22度に渡り岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県石巻市、気仙沼市、南三陸町、女川町、東松島市、仙台市、大崎市、登米市および福島県双葉町の住民が避難していた旧埼玉県立騎西高校避難所にて能楽を上演することによって被災者を支援する活動を行って参りましたが、このたびプロジェクトメンバーのうち能楽チームの八田、寺井は、去る08月13日~17日の5日間に渡り宮城県・気仙沼市にて能楽公演、仮設住宅訪問、および寺院にての奉納上演を行いました(※注2)。
今回の活動は有料能楽公演、仮設住宅への慰問上演、そしてお盆の時期に恒例となった精霊送りの集いへの参加と、上演回数こそ少ないながら内容が多岐に渡る活動となりました。震災から3年を経てプロジェクトの活動資金の原資としての募金がほとんど頂けなくなり、活動について現実的な困難に直面したことにより、プロジェクトとして本年より活動を大きく二つに分けて考えるようになりました。
ひとつには仮設住宅への慰問や仮設商店街の振興活動への協力で、これはプロジェクトの本来的な活動であり、無償で行われるべき活動です。もう一つが能楽ワークショップやイベントとしての上演で、こちらは前者の活動を行うための資金を得る目的があります。今回3度目の上演となる『星と能楽の夕べ』公演は元来 入場無料の公演だったものを、今回から有料公演とさせて頂いたのはこのような事情によります。
またこれら資金面に関わる問題とは別にプロジェクトのもうひとつの理念として、「文化の復興」という目標を掲げております。これは仮設住宅訪問など被災住民さんへの慰問活動とは別に、一般市民を対象に、被災したために減退した文化活動の促進を支援する目的をもった活動です。『星と能楽の夕べ』公演はまさにこの理念に基づいた活動ですが、このような一般市民を対象とした公演やワークショップを今後は低料金の有料公演とすることによって、慰問活動を展開する資金源とし、併せて市民全体にも被災住民さんへの支援にご協力頂く、という意味を込めることと致しました。
プロジェクトの活動のもうひとつの側面として寺社への奉納上演があります。こちらは活動の目的というよりはむしろ能楽師という仕事柄どうしても欠かせない活動ですが、少々プロジェクトとしての位置づけは難しいかもしれません。純粋に奉納上演をさせて頂くのが本来ではありますが、本年春より寺社のご協力を頂きワークショップを行う機会を得るようになり、また今回も地福寺さまより活動費のご支援を頂戴しております。
【出演者】
八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)
内野浩乃/村上典子
【協力者】(敬称略)
村上緑/佐々木優子/杉浦恵一/伊藤誠/村上梨紗/地福寺/村上充/宮川さゆり/気仙沼中央公民館
【主催】
能楽の心と癒やしプロジェクト
【活動記録】(敬称略)
8月13日(水)
八田・内野 朝 東京を出発
仙台にて村上緑をピックアップして気仙沼に向かう(途中震災遺構の現状視察あり)
宿舎を提供くださった佐々木優子さん宅にご挨拶、荷ほどき後 松岩地区の漁港より気仙沼大島の「浦の花火」を鑑賞。
8月14日(木)
午前中は気仙沼市役所で助成金の相談、中央公民館の下見、新装なった「海の市」の見学等。
午後より内野は村上典子宅へ移動して音楽チームの練習。
八田・緑は杉浦恵一氏と翌日の公演へのオペレーターの派遣の相談。
※この夜八田は 銭湯「亀の湯」にて山口県から被災地を訪れた二人の若者。。伊藤俊介君と山川幸宏君と出会い、宿もない有様だったので宿主・佐々木さんの承諾を得て宿舎に泊める。
8月15日(金)
朝、伊藤・山川君を連れて佐々木さんにお礼のご挨拶。佐々木さんご夫婦は彼らを大変に歓迎してくださり、彼らを市内が見渡せる高台に案内すると、震災時の体験などをこと細かに説明してくださった。
その後午前中は八田が若者二人を連れて市内の被災地区の見学。正午前に彼らと別れて夜行バスで気仙沼に到着した寺井と合流。またこの日の公演のスタッフとしてお手伝い頂く村上梨紗をピックアップして、公演会場である気仙沼中央公民館へ。
予定通り午後1時より搬入、セッティング開始。杉浦氏に依頼のオペレーター伊藤誠氏も早めに到着してくださり、やがて内野、典子も到着。セッティングのあとリハーサルを経て公演。
◎『星と能楽の夕べ』18:00~ 気仙沼中央公民館
出演:八田達弥・寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)
内野浩乃(フルート)・村上典子(ピアノ)
実際のところ、お盆の中日でもありまた雨天でもあったため、お客さまは30名と予想よりも少なかった。
しかしながら「StarDust☆彡」さまほか今回の公演に使わせて頂いた映像・音楽は大変ご厚意を頂いて提供頂いたもので、上演の効果は素晴らしいものだった。
なおこの日の上演曲目は下記の通り。
【星と音楽のひととき①】(出演:内野・典子)
G線上のアリア・シランクス・オンブラマイフ・亜麻色の髪の乙女・シチリアーナ
【星と能楽の夕べ①】
能「羽衣」(出演:八田・寺井)
【星と音楽のひととき②】(出演:内野・典子)
スティングのテーマ・「むすんでひらいて」変奏曲・メリー・ウィドー・見上げてごらん夜の星を・
花は咲く
【星と能楽の夕べ②】
能「石橋」(出演:八田・寺井)
8月16日(土)
早朝より活動開始。
◎『能楽の心と癒やしをあなたに』公演 10:00~ 五右衛門ヶ原運動場住宅
能『羽衣』出演:八田・寺井
フルート演奏 出演:内野
パワーストーンのストラップ・プレゼント 緑
上演後、能楽ミニ・ワークショップ(装束の着付け体験、囃子体験)を実施。
◎『送り火の集い』 19:00~ 地福寺 ※雨天のため本堂内にて上演
音楽演奏 出演:内野・典子
能『羽衣』 出演:八田・寺井
法要 片山秀光
8月17日(日)
寺井は早朝に帰京。
八田・内野は緑を仙台に送り届けてから帰京。
【収入・支出】
前回活動に引き続き『星と能楽の夕べ』公演を有料化しましたが、残念ながら悪条件が重なり、思ったほどの入場者数を得ることができませんでした。しかし地福寺さまより活動資金の援助を頂くことができました。出演者が多かったため結果的には支出がふくらんだ印象で、この点を今後改善して行くべきとの指摘がプロジェクト内部で話し合われました。
プロジェクトの活動資金としては、前回活動の繰越金が151,701円あるほか、1件の募金10,000円を頂戴し、また銀行口座の利息が9円発生しました。これによって繰越金を含めた活動開始時点での資金の総額は 161,710円となります。また今回の活動中に『星と能楽の夕べ』入場料収入として 29,500円、地福寺さまより30,000円を頂戴し、収入の合計は221,210円にのぼりました。
一方支出は、たとえばピアニストを宮城県在住の方にお願いして交通費の支出減を狙うなど致しましたが、出演者が多かったために交通・宿泊費などの経費がかさんだほか、『星と能楽の夕べ』公演の機材オペレータや会場案内係の雇人費、中央公民館の会場使用料(どちらもプロジェクトとして初めての支出科目だと思います)があった事により、少々高額につくことになりました。次回活動の繰り越し金は差し引き127,421円となります。
プロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。交通費節約のため、できるだけ深夜割引の制度を利用して終夜運転をして早朝に現地に到着するなど工夫はしておりますが、体力や公演スケジュールによって、必ずしも深夜走行ができない場合もあります。宿泊につきましては、従来は住民ボランティアさま等のご厚意により無料、または安価での宿泊ができましたが、街が落ち着きを取り戻しつつある昨今では旅館などに宿泊する機会も増えてきました。この場合にも宿泊費はおおよそ5,000円まで、素泊まりを旨としており、食費については酒食の区別がつきにくいため、すべて自己負担としております。
【成果と感想・今後の展望】
今回は3度目の上演となる『星と能楽の夕べ』公演のほか、仮設住宅での活動、地福寺さまでの恒例となる『送り火の集い』と、少ないながらも充実した上演となりました。惜しむらくは天候に悩まされたことでしょうか。一方「海の市」のオープンなど気仙沼の復興を確かめることができた機会でもありました。
また地福寺さまの『送り火の集い』も、これまた今回は天候に悩まされて本堂内での上演にはなりましたが、精霊送りの雰囲気を高めるように内容も充実を深めております。寺社での活動のありかたついては今後考えていかなければならない課題ではありますが、まずはふたつの公演の成果を喜びたいと思います。
さらに今回も緑さんをはじめとして気仙沼市民の方々に多数ご協力を賜って活動ができました。改めまして御礼申しあげるとともに、プロジェクトの息長い支援のために今後とも皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げる次第です。
平成26年10月22日
「能楽の心と癒やしプロジェクト」
代表 八田 達弥
(住所)
(電話)
E-mail: QYJ13065@nifty.com