のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

ナボコフ

2014年04月04日 | 日記・エッセイ・コラム

 ウラジミール・ナボコフはロシアのペテルブルクの貴族の家に生まれ、1940年にアメリカに亡命します。小説「ロリータ」はアメリカを舞台に描かれていますが、一応ロシア文学です。(ロシアではあまり読まれていないようです)    

 

 主人公のハンバートと言う男が後半前の獄中で死にます。そのハンバートと言う男の残した手記をナボコフは編集するよう依頼されます。 

 

 私(ハンバート)は1910年にパリに生まれ第二次大戦の頃アメリカにわたり、広告の仕事や大学の比較文学史の入門書などを書いて過ごしていました。健康を害したハンバートはニュー・イングランドの田舎町に静養に行きます。

 

 静養先はシャーロット・ヘイズと言う未亡人の家で、この未亡人はハンバートとの結婚を望むが、彼は何の魅力も感じなかった。

 

 それより彼を魅了したのは娘のドロレス(ロリータ)で、この娘と一緒に暮らしたいがためにシャーロットと結婚してしまいます。しかも、日記の書くことはロリータのことばかりで、それを読んでしまいハンバートの本心を知ってしまったシャーロットはショックで道路に飛び出し、自動車にはねられ死んでしまいます。

 

 ハンバートはキャンプに行っていたロリータを連れ出し、アメリカ中を自動車で当てもない旅をします。この旅の中で、ロリータの通俗的な趣味やわがままに失望しながらも旅を続けます。

 ある日、二人をつけていて劇作家のキルティと言う男がロリータを連れ去ります。ハンバートは狂ったようにロリータを探し回りますが、足取りもつかめません。

 

 失踪から3年後、突然ロリータから手紙が届き、彼女は工員と結婚し、近々子供が生まれるのに金がないと書いてきました。ハンバートはすぐにロリータの元に飛んでいき、もう一度一緒に生活して欲しいと懇願しますが拒絶されます。

 

 ロリータと別れた後、憎むべきキルティを探し射殺し、精神病院と刑務所の独房の中で「ロリータ」を書き綴ると言う内容の小説です。

 

 ハンバートは少年のときに出会った美少女アナベルに恋心を抱いていましたが、アナベルは病気で死にました。そのショックが障害になって、恋もできない青年時代をすごしました。25年後、アナベルをロリータと言う少女に化身させることで過去の呪縛から抜け出られます。が、すでにまともではありません。

 未成熟な少女だけにしか魅力を感じない症状を、(ニンフェット)といいますが、これをこの小説の題名をとって「ロリータ・コンプレクス」、「ロリコン」といいます。

 

 小説としての「ロリータ」は面白い小説なので読んでみて下さい。ドストエフスキーはじめロシアにはどろどろした精神を描いた面白い作品が多いです。「ロリータ」も作品そのものより「ロリコン」の言葉が先行してしまって、単なる変質者の小説と受け止められがちです。

 

 SEXとバイオレンスなしに成り立たない最近の小説よりよほど美しく幻想的な小説です。

 くれぐれもあらぬ方向に走らぬよう自制してください。精神的な自立を忘れないように。

コメント
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