のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

小野田さん

2014年01月17日 | 日記・エッセイ・コラム

 フィリピンルバング島で、戦後29年間任務を全うしていた小野田寛郎さんが亡くなりました。

 

 「冥福」という言葉は冥途に行って良い思いをして戻ってくるなよと言っているようで、あまり使いたくない言葉です。化けて出て来いとも言えませんが…。
 小野田さんの場合、時折娑婆に降りてきて日本人を鍛えてくれと言いたい気持ちがあるので、冥福を祈るという言葉は使わないことにします。

 

 小野田さんが発見される2年前にグアム島で横井正一さんが発見されましたが、こちらはボロボロの姿で見つかりました。任務を全うしていた人と敗残兵の違いなんでしょうが、ある意味、敗戦日本の惨めさをたっとぶメディアには横井さんのほうが好ましかったでしょう。凛とした姿で現れた小野田さんは日本のマスメディアにすれば快いものではなかったかもしれません。
 
 実際、当時私は小学生でしたが、小野田さんが出てきたときには「日本人ってすごい!」「こういう気概を持ちたい」と思ったものでした。

 

 徴兵で戦地に行った一般人の横井さんと、軍人として任務に就いていた小野田さんではもともとにわかごしらえの素人とプロフェッショナルの土俵が違いますが、有事の際に徴兵制がはたして有益なのか?考えさせられます。

 
 
 自分の日常では火事の際の消防署と消防団の力の差を見て感じることが良くあります。
 日頃の防災は消防団の仕事で、火事本番は消防団はプロのお手伝いなんですが、妙に張り切る連中がいるんですね。消防署より消防団が早く着こうものなら大声出して「消防署は何やってんだ!」と威張りまくったり。「消防署のクルマが入れないように道路塞げ」なんてほざくバカもいる。「消防団邪魔するな」と言いたくなることが多々あります。

 

 
 所詮素人なんです。日々訓練している人と月に1度飲み会込みで練習している人では力量も気概も違います。
 こういう粋がったバカ連中も50代を超えて姿を見せなくなりましたが、今の若い人たちは自分の役割をよく認識しています。
 
 これって、我々の時代のなんでも平等教育の弊害なのかもしれない。案外今の若い人たちのほうがクールにそのあたりをとらえているのかもしれませんが、何の努力もしない人がプロフェッショナルと同じ力量のはずはないのですが、同様だと思っている人たちがいるんですね。

 

  実は一昨年の春、交通指導員一人クビにしたのですが、イベントなどで国道や県道の道路を規制するときに妙に張り切るバカがいたんです。そりゃぁ警察だって諸雑多な事情で遅れることはありますし、そのための補助が我々の役目なんですがそこで張り合ってしまう。
 トラブルが起きそうになると「隊長!大変です!」とお呼びがかかり私がすっ飛んで行くことになるので、一年かけてえげつない説得してお役を退いてもらいました。人材不足の村ですから後任を見つけるのも一苦労でしたが、事故を招いては元も子もありません。

 

 
 
 日々そのことばかり考えているプロフェッショナルと半分ボランティアの一般人は別格なんです。そんなの自分の日常の仕事を考えてみればわかると思いますが、自分が飯の種にしている仕事に社会実習の中学生あたりがとやかく言ったら快く思わないでしょう。

 

 
 
 昨日のイベントで顔を合わせた山岳警備隊の隊長ともそんな話題が出ました。昔は県警の山岳救助のプロが少数しかおらず、岩場などで動ける人も少なかったので、山岳遭難の時には山岳連盟の救助隊がメインで活躍していました。一の倉の岸壁にワイヤー張って遭難者を救助する訓練など年に何回かやって、私が遭難者を背負って岸壁を下降する姿が雑誌「岳人」に出ていたこともありました。
 今は県警の警備隊が充実してきてヘリコプターでひとっとびですから、山岳連盟が出る機会も少なくなりました。救助隊の若手からは「我々の訓練は意味があるのか?」とか「存在意義は?」なんて質問が出ますが、重要なのは「自助力」。遭難事故があれば自分たちで救助する。それで手におえなければプロフェッショナル。自分で何とかしないで最初から頼るのは筋が違う。

 

 
 
 そう考えてみると、かつての徴兵も「自助力」だったんでしょうか?
 現代の戦争はプロ中のプロに特化した戦になると思うので、徴兵された一般人が対応できることではないと思いますが、最後の泥沼になった時には頭数ですからねぇ。
 もう一つ、プロとボランティアの違いは、プロは法律などの決められた枠の中で動くことを強いられています。ボランティアは基本的にそのあたりがあいまいですから、使い方によってはプロに都合が良いこともあります。連中の自己満足の虚栄心をうまくくすぐって、決まりの中でできないことやらせるのには都合がよい。

 

 
 
 さてさて、話は小野田さんに戻りますが、戦争=徴兵の認識しか持たなかった我々にプロフェッショナルがいたんだなと言うことを知らしめてくれたのが小野田さんだったような気がします。
 戦場ではないけれど、同様の気概と責任感を持って活躍している日本人が多々いることを誇りに思いたいと思います。

コメント
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