のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
質問があれば
gmailのnaosukikan
まで連絡ください

新しい子猫たち No.225

2014-08-27 00:00:34 | 新しい子猫たち 

ジブトラストは、本当に実業分野での比重が高くなった。


取引の最強集団と言えた加代子の会社が激変し、最後まで頑張っていた神之助のグループまでも激変して、神子のグループまで、実業シフトしてしまった。




ジブトラストの運用会社の側面は減り、それに大きな商品相場や債権そして為替の取引は、ジブ系列のグローバルな資本として完全に外部に切り離し、最悪でも限定的な損失に留めるようにした。もはやジブトラストグループは、従来の取引中心のグループから一変していた。




猫たちの運用でも、保有する株式の保有リスクを、経済状況を研究しながら、先物やデリバティブでカバーしようとする運用に変わっていった。






こうした、ジブトラストの変化は、やっぱり香奈が狙っていたものだった。神太朗が実業向きとは誰でも分かっていた事だったが、神之助や加代子のような取引の神様みたいな連中も、神太朗とは違う意味で、それなりに実業でのセンスはあると思っていた。






加代子は突然、多くの会社を実質的に保有して、神太朗が経営専門家を派遣して、それらの会社を成長させた。これは香奈の計算外の事ではあったが、今回の欧州救済は、実は神之助に大きな欧米の金融機関を運営させる事が目的でもあった。






金融システムはやはり、経済の根幹であった。ジブが一族の銀行、そしてもう一つの大きな銀行の過半数の株式を持っても、その銀行から金をドンドンと借りて、ジブは大きくなったのではないが、実は金融機関を安定させる事が、経済を伸ばす早道だった。そして経済が伸びて、ジブが利益を上げていった事を、香奈はちゃんと知っていた。






ジプが急速に大きくなっていったのは、一族の銀行を支配下においてからであった。配当も雀の涙なのに、ジブの将来のエースと目された神一を派遣したり、香奈の孫である正人を、もう一つの大きな銀行に派遣したりして、ジブは、大きな銀行の株を保有しつづけていた。






リトルチャの国際金融ルートも香奈は高く評価していた。神之助は、ジブの大きな金融センター群を上手く運営していた、投機などに走らずとも、その金融センターを通して、各地の金融機関を運営してくれるものと信じていた。






神之助は債券運用のプロでもあった。こうした金融機関を安定させ、ヨーロッパ経済を安定させる。それが未来のジブの成長に役立つと期待していた。






神子のグループも、香奈がそれ程重視していなかった、消費者に近い分野での企業を日本、アメリカなどで展開していた。ジブ自身の株式保有はそんなに多くはないものの、そうした企業で優秀な経営陣に大きな株式を持たせ、会社が大きくなれば、やっぱりジブも儲かっていた。ジブが株式を多く保有するのは、実はやっぱりリスクのある事であった。






それなりにリスクを取りながら、それなりに配当を貰う。そうした事も必要だと思っていた。そんな神子の配下の人たちは、計算高いけれども、優秀な経営能力、経済予測能力があった。






神太朗が抱える経営専門家グループと神太朗自身による運営方針を、香奈は高く評価していた。しかし、やっぱり神太朗には、理想主義的な面が強い事も、やはり事実だった。






神子のグループは、極めて現実的に予測し、運営するタイプの人が多かった。そうした人たちを、ジブ傘下とはいえないものの、かなり支配力をもった各国の企業群に配置しておく事も必要だと思っていた。それが所謂、本当にリスクを取るという事だとも思っていた。




猫たちの実業への方向転換は、香奈には予想外の事だったが、ジブトラストとしての完全な実業シフト、そしてリスクの多い商品相場チームを完全に子会社化して、損失リスクを限定的なものとする事などは、従来から香奈が考えていた事でもあった。






ただ大きなグローバルな資本となり、従来のようにリスクの大きな、そして儲けの大きい商品相場ではなくなり、世界的な一種の購買システムのようになり、極めて安定化してしまった事は、香奈の計算外でもあった。






取引の才能が遺伝する事は稀だった。ドンドンと儲けた相場師の子供が、やはりドンドンと儲ける相場師になる事は、稀だった。香奈は、相場は好きだった。しかし、相場の怖さも知っていた。将来のジブトラストのためには、実業シフトにする事が必要なのだと思っていた。香奈は、単なる超超高齢者ではなかったのだ。




コメントを投稿