ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ルパン三世 カリオストロの城

2017-05-03 16:50:20 | 映画のレビュー

前から見よう見ようと思っていた、「カリオストロの城」をやっと 観ることができました。
といっても、小学校の低学年(と思う)の時、初めて観て以来、何度も観たことのある映画なのだけれど……。

多分、ルパン三世が長編アニメになった第一作ではないかと思われる、この作品――思い出しても、いい作品だったなあ。
と、追憶にふけりながら、昼間のキッチンで「おひとり様ロードショー」を開いたのであります。

相変わらずハチャメチャなルパンがやってきたのは、カリオストロ公国。ここで秘密裏に鋳造されている偽札を狙ってのことですが、おりしも、公国のプリンセス、クラリスがカリオストロ伯爵との婚礼を嫌って、逃走するシーンに出くわします。
実は、クラリスがいつも指にはめている紋章がほられた青い指輪。それが、同じく伯爵のはめている赤い指輪と対になった時、隠されていた秘宝への扉が開くのでした。

クラリス姫と秘宝をめぐって、ルパンとカリオストロ伯爵との攻防戦が繰り広げられる――というおなじみのストーリーなのですが、今あらためて見返しても、つくづく感嘆するのは、ヨーロッパの小国を描く、宮崎駿の手腕。 城の中の調度、紋章、村の情景……等々、古き良き時代のヨーロッパの雰囲気が匂い立つようなのであります。

昔、わたしが小学生だった頃も、このアニメ映画は大人気で、ヒロインのクラリスは、ポスターがクラス内に出回るほど、「美少女アイドル」の扱いでありました(「機動戦士ガンダム」のセイラ・マスやララア・スン、なども懐かしいなあ)。
この映画を今、見直しても、白いブラウスに簡素なボウタイ、スカートというシンプルな服装に、大きな青い瞳がきらめくクラリスは、「高貴な汚れなき美少女」のオーラが漂っています。

あんまり有名な映画なので、ストーリー紹介などは、もう省らせて頂くことにしますが、題名にも使われているカリオストロ、という名前にもピンとくる人は来るはず。そう、アルセーヌ・ルパンの物語にも出てくる、ルパンの宿命の敵である女盗賊カリオストロ伯爵夫人から、取ったものであります。
カリオストロ伯爵夫人は、のちの怪盗ルパンがまだ二十歳の時出会った、美しい盗賊なのですが、ルパンと愛し合い、のちに仇敵になるという役どころ。青年ルパンの生まれたばかりの息子を誘拐し、それが二十八年後まで行方知れずだというエピソードを生み出すほど、その執念は長く、ルパンに絡み続けます(ポプラ社から出ていたアルセーヌ・ルパンシリーズの「ルパン 最後の冒険」にこの経緯が明らか。ああ、このシリーズも挿絵や文章が好きで、子供の頃、何度読み返したことか!)。



そして、映画の最後、カリオストロ城が崩れ、水門から濠の水がすっかり抜かれてしまいますが、そこに姿をあらわしたのは、なんと古代ローマの町の遺跡だった……という光景。
映像の美しさもさることながら、あまりのドラマチックな情景に陶然としてしまいますが、これもアルセーヌ・ルパンの物語からの焼き直しなのですね。
ルパンシリーズの「緑の瞳の令嬢」を読んだ読者なら、ご存じのように最後に湖の底から、古代ローマの町が現れます。 数多いルパンシリーズの中でも、比べるもののない、豊かな想像力と美しさを持つ結末でしたが、私もこの本を六歳の時読んで以来、すっかり物語のとりこになってしまいました。

思うに、サン・テグデュペリの「星の王子様」と並んで、私が物語の美しさに目覚めた、最初の本になるのでは?
よけいな、思い入れをダラダラと書いてしましましたが、多くの人に愛されてきた「ルパン三世 カリオストロの城」。今見直しても、往年の日本アニメの実力と面白さがいっぱいに含まれています。ぜひ、ご覧あれ!

5 コメント

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アルセーヌ・ルパン (ルー)
2020-05-03 13:14:39
こんにちは!ノエルさん。私は、小学校4年のときに「怪盗紳士」に出会い、大好きになり、中学校の図書室で、ポプラ社の全集を読みました。放課後、学校に残って、図書室で読んでいました。
初めて、文庫本を買ったのも「ルパンの告白」です。文庫本を手にした私は、大人になったような気がしました。
中学から大学を出るまでは、本当によく本も読み、大学時代は、映画も観ました。私は、ノエルさんよりかなり年上だと思います。
ルパン3世は、あまり観ていないです。娘が観なかったからでしょうか。他のジブリの作品は、娘が観ていたので、私も一緒に観ました。
「緑の目の令嬢」は、ポプラ社の表紙のルパンの絵が素敵でした。
私が、一番辛い腎臓がんの手術の入院中で出会った、ノエルさんおブログ。いつも、楽しみにしています。文章からにじむ教養とお人柄にも、心が洗われます。有難うございます。
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訂正 (ルー)
2020-05-03 13:19:50
おブログではなく、ブログです。間違えました。
それから、湯河原の海石榴にいらしたのですね。
私は、箱根の近くなので、湯河原も近いですが、海石榴は、行ったことがありません。
鎌倉の駅前のホテルも知っていますが、行ったことはありません。江ノ電もいいですね。本当に、間違えて、すみません。
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私も、ルパンが大好きです (noel)
2020-05-04 12:11:18
本当に、ポプラ社のルパンシリーズは忘れがたいものがありましたね。 私も、ルーさんと同じように、小学校近くの図書館で学校帰りにシリーズを次々借りていったことが、いまだに忘れらないくらいなのです。。
大人になってから、古本屋さんで何冊か当時のポプラ社のルパンの本を何冊か買いました。今でも、それは大切な宝物となっています。
シャーロック・ホームズや江戸川乱歩の少年探偵団シリーズも、子供向けのシリーズがポプラ社から発行されていて、それも面白かったのですが、何と言ってもルパン物が、一番洒落ていて、素敵でした。
ところで、話が唐突に変わってしまうのですが、ルーさんのお嬢さんは、おいくつくらいなのでしょうか? それこそ、私などより、ずっとお若い方なのだろうなと思います(私は、1971年生まれです)。だから、子供の頃、ルパン3世のアニメを観ていないのは、無理ないのではないでしょうか?
ルパン3世のアニメは、私が小学校低学年の頃放映されて、人気だったものですから(後、何度も再放送されましたけど)
☆「ノエルのブログ」は、個人で気ままにやっているブログなので、過大なお褒めの言葉をいただくと、ちょっと気恥ずかしいな・・・・・・でも、merci beaucoup どうぞ、これからもよろしくお願いしますね。
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「星の王子様」 (ルー)
2020-05-04 16:26:52
こんにちは。早速に、お返事をいただきまして、有難うございます。私は、1954年生まれ、娘は、1982年生まれです。ノエルさんは、6歳でルパンをお読みになったのですね。「星の王子様」と「緑の目の令嬢」で物語の美しさを知られたとはすばらしいです。
私も「星の王子様」は、好きです。40代で、フランス語を習い始めて、原書で読んで、その悲しい、寂しい雰囲気に、心を揺さぶられました。
中学生の頃に、国語の教科書で読んだときよりも、感動がありました。
子供向きの物語かと思っていましたが、もっと深いものがあるのだと40歳過ぎてから思いました。
ノエルさんとは、好きな作家や映画が、似ていますね。
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星の王子様 (noel)
2020-05-06 12:46:12
「星の王子様」! これも、大好きな本です。というか、我が家は母も私も、サン・テグデュペリや「星の王子様」の挿絵が好きで、部屋を飾る雑貨にまで、いくつも使っているのです。
そうしたら、兄夫婦まで、「母の日」のプレゼントに「星の王子様」モノを持ってきてくれたりして・・・そんなにファンだと思われてるのかな?
ルーさんは、フランス語の原書を読まれたとのこと。素晴らしい!ですね。私も、二十代の頃、フランス語を勉強していた時、「星の王子様」を読みたいと願っていたのですが、中途半端で終わってしまいました。
確かに、あまりにも有名な作品で、児童文学の範疇に入れられたりしていますが、やさしい言葉で書かれているようで、内容はかなり哲学的で深遠ですよね。
ルーさんのおっしゃる通り、悲しい、寂しい雰囲気は私も強く感じました。 
サン・テグデュペリという人は、こんな思いを抱えながら、大空を飛ばずにはいられなかったんだろうなあ・・・と。
そして、あの挿絵の美しくユニークなこと。薔薇を小さなガラス覆いに入れたり、小さな火山に、これも小さな🍳を置いて。パンケーキを焼いたりしているさな――何度見ても、どこかにあるはずの王子様の星に思いを馳せてしまいます。
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