ロミー・シュナイダー・・・私が映画スタアの中で一番といっていいほど、好きな女優である。オーストリアという中欧のアイドルから、ヨーロッパを代表するスターになった。事実、ヨーロッパでは、今でも人々の記憶に残る大スターなのだとか。向こうでは、カトリーヌ・ドヌーヴ級の大女優なのだろう(事実、映画「八人の女たち」で、カトリーヌ・ドヌーーヴにロミーの写真を差し出すシーンがあるなど、ロミーへのオマージュが感じられるものがあった)。
ただ、「これは!」と誰もが知る代表作がないせいもあってか、ロミー・シュナイダーはオードリー・ヘプバーンのような世界的な人気を誇る女優にはなれなかったのかもしれない。広いおでこに、少しえらのはった顎、そして、フォトジェニックな表情・・・それが、彼女の魅力だった。ロミーは名門の演劇一家に生まれ、お姫様スターとして人気を誇ったが、その後の人生は険しいものだった。まだ大スターになる前のアラン・ドロンとの出会いと恋。彼との婚約、その後の別れ。
長いスランプ時期から脱し、再び国際スターとしてかえり咲くも、最初の夫の自殺、息子ダーヴィトが14歳の若さで鉄条網に胸を突き刺されて死ぬなど、悲劇が相次ぐ。そして、いくら稼いでも、お金はなく・・・。結局ロミーは82年、43歳の若さで死ぬ。心臓発作だったと言われるが、親しい者は、息子を失った悲しみのための死だと噂したという。
ロミー・シュナイダーを見ると、ヨーロッパというものの最良のエキスを体現化したような魅惑を感じる。中世の香り漂う街の石畳を闊歩するハイヒールを履いた女、アルプスの雪深い道を、フードをかぶったコートを着て歩いていく姿に、月光がさしているといったイメージが浮かぶが、それはロミーという女優を思い起こさせる。それは、誰もが感じるのか、日本でもロミーの伝記が何冊も刊行されたし、彼女の豪華な写真集を見たこともある。
古き華麗なヨーロッパを表現することにかけては、最高といってもいい映画監督ルキノ・ヴィスコンティに愛されたのも、当然だったろう。「ルードウィヒ 神々の黄昏」で皇妃エリーザベトを演じたロミーは、エリーザベトのような美女ではないにしても、それよりずっと魅力的だと思わせられる。(ロミーは少女時代にも、エリーザベトを演じていて、それのDVDをウィーンのシェーンブルン宮殿を訪れた時、売店で見たのだが、買わなかったことが悔やまれる)
ロミーが死んで、すでに30年以上の月日が流れた。彼女の映画の中でも好きな映画「追想」を、またゆっくり観たい。ヨーロッパの野の花のような気品を持ったロミーに乾杯!
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