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ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

狼の女王グレイ

2015-06-14 21:08:44 | テレビ番組
動物ドキュメンタリー番組の「ダーウィンが来た」。今日は、「伝説の女王オオカミ、グレイ」を特集したものでした。

オオカミたちというと強き獣と思いがちですが、彼らも、生きるためにきびしい闘いを繰り広げているのです。そんな群れを率いるリーダーが、女性だとしたら? グレイは、そんな稀な女王狼。
彼女が仲間たちを守るために、智恵を働かせ、必死に生きのびていくさまは、TV画面のこちら側から見ても、胸を打ちます。獲物をとらえ、競争相手の、別のオオカミグループと死闘を繰り拡げるグレイ。 野生とは、なんと過酷な世界に生きているのか…。

ある年、厳しい寒さが続き、獲物のシカがほとんどいなくなり、グレイは大きな決断をします。今まで、イエローストーン公園内で生きてきましたが、獲物を探すために、なわばりである公園の外に出ようとしたのです。そこへ、一発の銃声が――。グレイの命を奪ったのは、ハンターの銃でした。

本当によくできたドキュメンタリーでしたが、やっぱり悲しい。 野生と自然の厳しさが、いつもでも、心に残り続けるようで…。グレイの娘が、残った仲間たちを引き連れ、その子供たちが生まれ、「命は受け継がれていっているのです」とナレーションが流れましたが、私の胸からもグレイの駆けてゆく姿は消えそうにありません。

間奏曲はパリで

2015-06-14 14:19:23 | 映画のレビュー
ゆきつけのミニ・シアターへ、映画を観に行く。
お目当ては、イザベル・ユペール主演の「間奏曲はパリで」。

イザベル・ユペールと言えば、「ピアニスト」での鬼気迫る演技が忘れ難い名女優。 コンサート・ピアニストへの夢が挫折しながら、ピアノ教師として、母と暮らす中年女性のヒロイン。恋愛や楽しみとは無縁に生きてきた彼女が、若い青年ワルターが現れたのを契機に、破滅へといっきょに突き進んでいく様が、見事に描かれた作品だった。

ユペールの、知的で意志の強い、どこか能面を感じさせる表情の裏に、狂気をはらんだ危うさがちらちらするのが、観客にスリリングな興奮を感じさせたもの。ラスト、ナイフをバッグにしのばせた彼女が、自分が演奏者として主演するコンサート会場に赴くも、ワルターの残酷な無視に「クソッタレ」と小さく呟き、ナイフをじぶんの胸に突き刺し、コンサートホールを決然と去る――映画はここで終わるのだが、夜のウィーンの街へ去った彼女は、どこへ行くのか。 夜の舗道に消えた「ピアニスト」の面影が、私の胸から、いつまでも消えないままだ。

「ピアニスト」をあれほど見事に演じたユペールの久々の主演だというので、楽しみにしていた「間奏曲…」。でも、実際観ての感想は、「あんまりおもしろくない」映画というところ。

ノルマンディー地方の農場の主婦、ブリジット(これをユペールが演じている)。夫との間も円満だが、息子も巣立ち、日々の繰り返しに倦怠を感じている。そうした人生の凪ぎ状態にいる彼女の前に現れたのが、隣家のパーティーで知り合った魅力的なパリジャンの青年スタン。 彼とのふれあいが、ブリジットの中に眠っていた若さや冒険心を呼び覚ましてしまう。そして、彼女はもっともらしい理由をつけ、パリへの少旅行へ――。というのがストーリー。

ノルマンディーの田舎者、と卑下したりするのだが、どうしてどうして、ユペール演ずるブリジットはファッショナブルで魅力的。まるで、ロシアの女性を思わせる毛皮の帽子を粋にかぶり、ワイン色のコートをひるがえしながら、パリの街を闊歩する。でも……それだけである。ドラマとしての面白さもないし、何より、ブリジットが「命の洗濯」をするはずのパリの街に魅力が感じられない。バトー・ムーシュから見るセーヌ河と地下鉄、オペラ座周辺らしい街並み。 本当のパリはもっと華やかで、魅惑的なはずでは?
これなら、ノルマンディーの緑豊かな牧草地と、暖かなインテリアがしつらえられた家、シャイレロー種というキュートな牛たちの方が、ずっと心を惹きつけられる。

鋭く、繊細なイザベル・ユペールの容姿と、磨かれた演技を楽しめた以外、何と言う事のない映画。