ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ネットと「つながり」

2014-09-08 08:00:37 | 本のレビュー

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気鋭の精神科医、香山リカ氏がネット社会の弊害・怖さについて語った一冊。 以前から感じていた疑問が、そっくりそのまま語られているので、「目からウロコが落ちた」ようなすっきり(?)感があって、非常に面白かった。

今、はやりのツィッターやフェイスブックについても、香山氏は「息苦しいつながり」と断定する。何かコメントしても、一定数の人から批判が寄せられ、顔が見えない分、友人との「感情の汲み合い」に、心のエネルギーを多量に使って、疲れる、と。

私も、この「ノエルのブログ」などをやっているのだが、それも「ブログにしろ、『教えて』とも言われないのに、自分の私生活を公開したり、胸のつぶやきを書いたりして、世間に知らしめねばならないのか――そういう人の気持ちが理解できなかった」などと言われると、本当にそう!と思ってしまう。  情報を一方的に発信するだけで、まったくの「自己満足」だなあ、とも。

インターネットがはじまった当初は、「自分の知らないこと」に次々アクセスしていくことで、知的世界が広がっていくような高揚感もあったのかもしれない。私自身は、ネットを使い始めたのが比較的遅く、この7,8年ほどなのだけれども、当初は知識人たちがネットを自分の思想公開の場ともしていたらしい。 しかし、今やネットは大衆的なものとなり、皆ツィツターやフェイスブックなどで、自分たちの仲間うちだけにこもり、外界に無関心になりつつあるのではないだろうか?

「物事に対しての『感想』はなくなり、見た・読んだといったファクトが書かれるだけになってしまう。思考はスカスカになり、文字を追うより、画像だけで理解するという風潮が広がっている」--フェイスブックの「いいね!」にしろ、それだけでは「感想」といえないだろう。 人々が思考することなく、「今、自分は何している」というメッセージを書きこみ、周囲とのネットワークづくりに狂奔する世界--ネット世界の未来には、何が来るのか? 一種の恐ろしさを感じる。