ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

風立ちぬ

2014-06-23 09:38:30 | 映画のレビュー

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ジブリアニメの「風立ちぬ」をもう一度観ることができました。DVDでの鑑賞なので、劇場公開時には、ついてなかった字幕での放映。 おかげで、内容もばっちしわかる!

宮崎駿監督が言っている通り、零戦の設計者堀越二郎の物語であるのですが、小説「風立ちぬ」の世界をもミックスさせているため、現実の堀越二郎の人生とは全然違うストーリーに。

う~ん、こんなことしてもいいんだろうか? こうした荒技(?)も、世界の宮崎駿なら許される?  でも、二回目の鑑賞となった今回は、舞台となった昭和初めから戦前までの空気を思いっきり楽しみました。 冒頭の関東大震災当時の風景や、人々の身につけている服装、川を渡る一銭蒸気という船のスタイルなど――。

ジブリアニメの代名詞であった、ファンタジック色など、微塵もなく飛行機エンジニアの作業風景がえんえんと映し出されるなど、オトナな物語ですが、設計図をつくるってかっこいいですねえ。 傾斜版にT定規を使うなど、ほとんど今の時代と変わらないじゃないか・・・。

そして、主人公の二郎が、夜の菓子店で「シベリア下さい」と言って、菓子をくるんでもらうシーンがあるのですが、これが面白い! 三角形の形をしたカステラにあんこが挟まれているものらしいですが、シベリアと言うと、どうしてもロシアをイメージしてしまう・・・。こんな素朴なお菓子に、そんなエキゾチックな名前がついたのは、どういう訳だろう・・・?

シベリアというお菓子は、今も売られているらしいですね。(確か、名古屋の方で販売されているとか、聞いたことがある) 以前、このブログで労研饅頭という、これも昔から続いているお菓子について紹介したことがあるのですが、これは工場で働いている人のために、作られたという栄養満点の菓子。 労研饅頭、シベリア、そして甘食は、戦前の庶民の味覚が残ったものなのかな?

信州の草軽ホテルというところで、二郎は菜穂子と運命の出会いをする訳ですが、このホテルの佇まいや、高原の美しい自然が実に魅力的! こんなに、木々の緑や戦前のホテルの雰囲気を表わせるなんて、さすがジブリアニメだわ・・・と感心して観ていたのですが、このホテル、以前泊まった軽井沢の万平ホテルを思い出させて、楽しかったですね。

最後、命を賭けて作った零戦も、悲しい末路をたどり、飛行機の黄金時代も終わりを告げます。緑なす草原で、カプローニや菜穂子と再会する二郎--このラストシーンの美しさに思わず涙ぐみそうになりました。 実に実に素晴らしい映画!