LE DIABLE AU CORPS
監督: クロード・オータン=ララ
出演: ジェラール・フィリップ ミシュリーヌ・プレール
1918年、第1次世界大戦の終結で喜びにあふれる町でひっそりと行われる葬儀を遠巻きに追う一人の少年フランソワ。亡くなったのは彼の恋人、軍人の妻のマルト。大戦下の17歳の高校生と人妻の刹那の激しい、悲劇に終わる恋。
ジェラール・フィリップは20世紀で最高の貴公子である。彼は何をしても卑しさが無い。身体のどこかに沈んだ澱のようなものが一切感じられない。だから、この勝手きわまりないわがままな17歳への年上の人妻の恋が避けられない運命になる。この時25歳だが、シャツとダボダボのちょっとかっこ悪いズボンの彼は確かに17歳。この、ただ、いるだけで絵になる男っぷりはジミー・ディーンと双璧ではなかろうか。
マルトの結婚直前に猛烈な、アプローチをかけるフランソワ。そしてマルトの母と、フランソワの父とによって一度は離れる2人。このもののわかった父親というのは、人生の先達とも呼びたいような、まさに大人の振る舞い。でもそれが悲劇の原因となるのだ。娘の幸福を思うマルトの母。しかし、若い恋は理不尽で、良識も、幸福も顧みない。登場でどこかもっさりして見えたミシュリーヌ・プレールは、結婚後の彼を誘うシーンでは危険な恋に分かっていて落ちた女性の、悲しみと喜びと背徳と恐れとふてぶてしさと強さと…様々なものを抱えた彼女は美しい。とても。
諦めを心の底に持ちつつ、彼の言葉に一喜一憂する彼女の哀れさ。でも彼女はこのどうしようもない若者との恋の甘美を味わってしまって、破滅が見えても離れられない。年取るたびに、このマルトへの共感が強くなってしまう。
そして、死の床の彼女の部屋を見上げる「自尊心の無い男」と蔑まれるフランソワのげっそりとやつれた表情… 彼女の夫に結局何も言えずに立ち去るフランソワ。
そして、死者は既に生きているものの感心からは追いやられるのみ。ラストは涙が出るより、どこかが痛むような哀切さ。でもやはり、ジェラール・フィリップに酔っている。
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監督: クロード・オータン=ララ
出演: ジェラール・フィリップ ミシュリーヌ・プレール
1918年、第1次世界大戦の終結で喜びにあふれる町でひっそりと行われる葬儀を遠巻きに追う一人の少年フランソワ。亡くなったのは彼の恋人、軍人の妻のマルト。大戦下の17歳の高校生と人妻の刹那の激しい、悲劇に終わる恋。
ジェラール・フィリップは20世紀で最高の貴公子である。彼は何をしても卑しさが無い。身体のどこかに沈んだ澱のようなものが一切感じられない。だから、この勝手きわまりないわがままな17歳への年上の人妻の恋が避けられない運命になる。この時25歳だが、シャツとダボダボのちょっとかっこ悪いズボンの彼は確かに17歳。この、ただ、いるだけで絵になる男っぷりはジミー・ディーンと双璧ではなかろうか。
マルトの結婚直前に猛烈な、アプローチをかけるフランソワ。そしてマルトの母と、フランソワの父とによって一度は離れる2人。このもののわかった父親というのは、人生の先達とも呼びたいような、まさに大人の振る舞い。でもそれが悲劇の原因となるのだ。娘の幸福を思うマルトの母。しかし、若い恋は理不尽で、良識も、幸福も顧みない。登場でどこかもっさりして見えたミシュリーヌ・プレールは、結婚後の彼を誘うシーンでは危険な恋に分かっていて落ちた女性の、悲しみと喜びと背徳と恐れとふてぶてしさと強さと…様々なものを抱えた彼女は美しい。とても。
諦めを心の底に持ちつつ、彼の言葉に一喜一憂する彼女の哀れさ。でも彼女はこのどうしようもない若者との恋の甘美を味わってしまって、破滅が見えても離れられない。年取るたびに、このマルトへの共感が強くなってしまう。
そして、死の床の彼女の部屋を見上げる「自尊心の無い男」と蔑まれるフランソワのげっそりとやつれた表情… 彼女の夫に結局何も言えずに立ち去るフランソワ。
そして、死者は既に生きているものの感心からは追いやられるのみ。ラストは涙が出るより、どこかが痛むような哀切さ。でもやはり、ジェラール・フィリップに酔っている。
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