生まれてきたからには 死なねばならない。それが最大の仕事 最後の大仕事である。だれにとっても。ある日一人の女性から手紙が届いた。「二十五年ぶりに お逢いしましょう。もしお嫌でなかったら」と書いてあった。「残暑きびしき折り お元気でお過ごしでしょうか」とも。あのころは白萩のような清楚な女性だったけれどいまはどうなんだろう。彼女がぼくと別れたあとしばらくたって精神病院に入院したことをある人が知らせてくれた。わずかなあいだだが、生活をともにしたことがあった。入籍などせず場末のうらぶれた2DKのアパートが ぼくらの“愛の巣”だった。
そのアパートが取り壊され 他の建物が建てられているのを知ってから
すでに十年以上がたっている。
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なにをするあてもなくぼくはこの世にやってきていつのまにか六十年がすぎていった。「あてもなく」と「いつのまにか」のあいだに無数の栞がはさみこまれている。それをたよりに 過去のページをめくってきみがいた街角をたずね歩く。むろんぼくだけでなくぼくの友人も この地球も
六十年分 歳をとったのだ。きみはきみの耳を信じているんだろうね。
そして眼を。そういった感覚器官を杖にしてぼくはいまことばの探査船を その六十年の茫漠とした海の向こうへ送り出す。
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不愉快な出来事がつづいたのでそれを忘れたくてあびるほどアルコールを飲んで血を少し吐いたことがあった。あれからの三十年が とっくの昔に沈没した戦艦のようにぼくの後ろにそびえている。あんなことがあったし こんなことがあった。いいじゃない そんなこと。三十年も昔にとって返し あやまるわけにはいかないのだから。追憶の黒い塀のきわを しろいものが影のようにかすめて飛んでいる。それがサギソウなのか ほんもののサギなのか見分けがつかなくて考え込んでいる。そのころぼくは未経験な若い伍長だったろうか 一介の二等兵だったろうか?どっちでもいいけれど 思い出のさきはいつだってなにかの行き止まりなのだね。
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このあいだ、BOOK OFFの散歩で手に入れたCDの中に、夭折したピアニストのCD2枚組がある。《12月2日朝、医師による血の交換を辞退。退出する医者ディボア=フェリエルにEMIから送られてきたばかりのバッハのパルティータのレコードをプレゼントする。ベートーヴェンのヘ短調弦楽四重奏曲に聴き入る。その後。静かに息を引き取る》(諸石幸生さん作成の年譜より)この日、33歳で亡くなったピアニストの名を、ディヌ・リパッティという。リパッティはこれまで、薄命の天才ピアニストとして名だけは知っていたが、わたしにとっては、未体験のピアニストだった。この2枚組CDの収録曲は、以下の通り。CD1)グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調シューマン/ピアノ協奏曲イ短調モーツァルト/ピアノ・ソナタ第8番イ短調 他 . . . 本文を読む
世の中は3連休。わたしは3日とも、仕事に向かう。ただし、これだけ残暑がきびしいと、ヒマだろう。万が一、1件でも問い合わせがあって、物件が決まったら「ラッキー♪」なのだけれど、ここしばらくツキに見放されている(=_=)何度も書いているように、ことしの夏は、これまで経験したことのない、記録的な猛暑。それが原因かどうかわからないけれど、日傘をさすレディーが、ずいぶんと目立った。たった二人だけれど、「日傘の男性」まで目撃し、Mikenekoじじいとしては、世相の変化を興味深く眺めている・・・という次第ではあ~る(笑)。そんな中、一方では、若い女性たち(中年のおばちゃんも)の短パン姿がずいぶん目立った。
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このところ、時間をやりくりし、野山を歩いている。遠方までは足をのばさず、いつものフィールドなのだが、目的は昆虫であっても、いつもお目当ての昆虫に出会えるわけではない。赤城や榛名山麓の里山的環境は、年々悪化していく。自宅周辺でも、少年時代には里山的環境がたもたれていて、クワガタ、ホタル、沢ガニ、ナマズ、フナ、メダカ、カミキリムシ、イナゴ、バッタなど、遊び相手には困らなかったものだが、農業の機械化に対応するため、田畑の圃場整備(市街地でいう区画整理)がおこなわれ、そういった環境は失われてしまった。圃場整備後の田畑は、無個性でのっぺらぼうのマトリックスとなって、人間以外の生き物たちをしめ出す。そこへ追い打ちをかけているのが、大量に使用される化学薬品。
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ふう~、暑かった。おでこのあたりから汗が流れ、眼に入る。日向にいるのは、わたしにとっては1時間が限界・・・。もう中旬になるというのに、最高気温34℃は、どう考えても異常な高温である。――といいつつ、昨日は高崎市にあるN湖小湿原へクルマを走らせてみた。N湖は榛名山麓にある人工の湖で、自宅からはわりあいに近い、昆虫などの撮影ポイントだった。トップにあげたのは、このあいだからさがしていたウラナミシジミ。表はこんな感じ。その名の通り「裏」の翅模様に特徴があり、9月になると、群馬に姿をあらわすチョウとして知られる。
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先生:では、授業をはじめるまえに、皆さんに質問です。このカエルが、アマガエルに見えるひとは手をあげて。Mikeneko:はい!先生:おやおや。Mikenekoさんには、これがアマガエルに見えるんですか。もっとキチンと見て、わからなかったら、さくらい先輩や、こだくみ先輩によく教えてもらいましょう。Mikeneko:う。むふう_(_^_)_ドテ!・・・というような冗談はさておき、先日、よく知っているある広大な霊園の中の沢を歩いていたら、「おや~?」。アマガエルかと見つめたけれど、どうも違うぞ!そうか、そうか思い出した。これって、シュレーゲルアオガエルでしょう。ところがこの直後、シマヘビを二匹も見てしまった。
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このところ、活字から遠ざかって、読書がすすまない状況がつづいている。だからといって、まったく読まないかというと、一日あたりおおよそ1.5時間は、活字に眼をさらしているだろう。たまには、こころの中枢部みたいなところにグサッと突き刺さってくるフレーズにめぐりあう。「なんでもないようなことが楽しいようでなくてはいけない」これは父鴎外から二女のアンヌ(杏奴)さんが感じ取っていたことば。☆なんでもないようなことが楽しいようでなくてはいけないまさに、人生の達人の言ではないだろうか?さてさて、いまだ残暑がきびしく、とても街歩きに出かけようという気分にはなれないが、出かけたついでに、里山地区を散策しながら、道端写真を撮ってきたので、それをアルバムにさっき、アップした。
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今日はmixiのアルバムの中から、小さな美しき舞姫たちとタイトルして、数種のシジミチョウをご紹介しよう。わたしはほとんどの場合、こういう記事や写真の貯蔵庫・保管庫として、mixiを利用している。 そこにこれまで出会った、大好きなチョウたちの画像がたくさん置いてある。トップにあげたのは、ウラナミアカシジミ。クリの木に咲いた花に吸蜜にくるというので、クリ畑で待ち受けていた。わたしにとっては、偶然の女神が微笑んでくれた貴重な一枚。その後、ウラナミアカとは数回ニアミス。女神には見放されっぱなし^^; またこれはミズイロオナガシジミ。ウラナミアカが艶麗かつエレガントな美女とすれば、こちらは、クール&スタイリッシュな少年といっていいだろうか。どちらも、たしか年一化なので、彼らが棲息する雑木林を見つけ、出現する月にその森へ通わなければならない。
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