二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

マジック・アワーに胸をときめかす

2012年09月03日 | Blog & Photo
虫のすだきが、耳につく時候となってきた。日中は蒸し暑さがもどってくるけれど、朝晩はややひんやりして。9月になると思い出す歌に、三十六歌仙の一人、藤原敏行さんの名歌があるのは、ご存じの方が多いだろう。 秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(古今和歌集)この歌を踏まえてつくられた歌は、非常に数が多いが、わたしはいちばん好きなのが、長塚節さんのつぎの一句。馬追虫(うまおひ)の髭(ひげ)のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想ひ見るべし敏行さんの名歌は、たぶんに観念的・理念的であるが、節さんのほうには、たしかな生活感の裏付けが感じられる。《馬追虫(うまおひ)の髭(ひげ)のそよろに》なんて、この人でなければ発見できなかった感覚であろう。《まなこを閉ぢて想ひ見るべし》の語句がまた傑出している。節のこの表現が、敏行さんの「目にはさやかに見えねども」と、じつに巧妙に響きあっているのがおわかりだろうか。 . . . 本文を読む
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