二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

仕事にかけた男たちのクールな神話 ~ギャビン・ライアル「深夜プラス1」のいま

2024年01月26日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■ギャビン・ライアル「深夜プラス1」鈴木恵訳(ハヤカワNV文庫 2016年刊 新訳トールサイズ)原本は1965年 冒頭からこんなことをいっては申し訳ないが、かつて冒険小説の最高峰の1冊として取り沙汰されていた「深夜プラス1」。 だが、今回の読書では、わたし的評価では、残念なことに冒険小説のオールタイム・ベストの30から陥落しそうである。 本編を有名にしたのは、よく知られているようにコメディアン . . . 本文を読む
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プレリュードとフーガ、そして雨 ~ヒギンズ「死にゆく者への祈り」を読む

2024年01月19日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
   (左はトールサイズの、右は旧版の表紙) ■ジャック・ヒギンズ「死にゆく者への祈り」井坂清訳(ハヤカワNV文庫 1982年)活字が大きく読みやすい<トールサイズ> 原本は1973年 小説全体にバッハのオルガン「プレリュードとフーガ ニ長調」などが鳴り響く♬  そしていつまでもやまない雨。この作品は、情念がメラメラと燃えているような一篇である。 なぜか、読み了えるまで、ずいぶん時間を要し . . . 本文を読む
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メグレという男とその周辺 ~シムノン「メグレとマジェスティック・ホテルの地階」を読む

2024年01月11日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■ジョルジュ・シムノン「メグレとマジェスティック・ホテルの地階」高野優訳(ハヤカワ・ミステリ文庫新訳 2023年刊)原本は1942年 作品的な出来不出来だけいえば、たいしたミステリではない。 パズルでよくある小説のように、最後に“名探偵メグレ”がこんがらがった謎を、名推理によって解きほぐしてくれる。「あれれ、そうくるんですか?」 わたしはちょっと虚を衝かれましたよ(´Д`) でも、この「メグ . . . 本文を読む
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時効がせまっている男たちを追いつめる ~シムノン「サン=フォリアン教会の首吊り男」を読む

2024年01月06日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■ジョルジュ・シムノン「サン=フォリアン教会の首吊り男」伊禮規与美訳 新訳(ハヤカワ・ミステリ文庫 2023年刊)原本は1931年 小説家デビュー初期の3冊の中の一篇らしいけれど、ミステリとしてはちょっと変則的なストーリー展開となっている。犯罪が起こったのはおよそ10年前、このころのフランスでは殺人が10年で時効になるようだ。「首吊りの男の絵」(第6章)をめぐるエピソードにふれているあたり、往 . . . 本文を読む
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警視メグレの憂鬱なパリ ~シムノン「モンマルトルのメグレ」に舌鼓を打つ

2023年12月31日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
   (表紙のイラスト。左は巨漢メグレ、右はチビ助の“ばった”) ■ジョルジュ・シムノン「モンマルトルのメグレ」矢野浩三郎訳 (河出文庫 2000年刊)原本は"Maigret au Picratt's" 1950年 Amazonのレビューで「ダントツのAランク」と書いている読者がいる。それほどおもしろかったということなのだ。 わたしも、本編「モンマルトルのメグレ」をAランクとすることに躊 . . . 本文を読む
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被害者の立場になってみること ~シムノン「メグレと若い女の死」が胸に沁みた

2023年12月27日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■ジョルジュ・シムノン「メグレと若い女の死」平岡敦訳(ハヤカワ・ミステリ文庫 2023年刊)原本は1954年 以前から気にはなっていたが、新刊では見つけることができなかったシムノン。ところが2023年に、早川書房が新訳版を刊行してくれた。 古本でもいいのだが、文字が小さいと気勢を削がれる。 わたしが老齢とえる年齢になったからだ。 フランスのミステリは、たしかはじめてのはず( -ω-) ミステ . . . 本文を読む
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企業ミステリの佳品 ~クロフツ「死の鉄路」を読む

2023年12月24日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■F・W・クロフツ「死の鉄路」中山善之訳(創元推理文庫 1983年刊)原本は1932年 この「死の鉄路」は、途中まではとてもおもしろかった(^^♪ どうやらクロフツの生真面目な作風が、わたしにフィットするようである。しかも1932年刊行とは想像できない現代感覚にあふれている。 企業ミステリの秀作である。 一点一画をも疎かにしない“楷書の見事さ”は本編にもあてはまる。鉄道事業の内実は隅々まで緻密 . . . 本文を読む
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王道の英国ミステリ ~クロフツ「スターヴェルの悲劇」がおもしろい

2023年12月21日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■F・W・クロフツ「スターヴェルの悲劇」大庭忠男訳(創元推理文庫 1987年刊)原書は1927年 アガサ・クリスティーがミステリの女王だとしたら、クロフツは王ということになるかもしれない・・・とかんがえるようになった。ハラハラ、ドキドキ、おもしろかったですよ、これ(^^♪ いろいろな隠し味が、じんわりと舌を痺れさせてくれた。トラベルミステリの逸品というのはその味の一つ。鉄道がじつによく出てくる . . . 本文を読む
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倒叙ミステリの鮮やかな里程標 ~クロフツ「クロイドン発12時30分」に胸を震わす

2023年12月16日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■F・W・クロフツ「クロイドン発12時30分」霜島義明訳(創元推理文庫 2019年刊 新訳)原本は1934年 未知の方だけれど、神明明さんという人が、本書巻末にすばらしい解説をお書きになっている。 1.倒叙ミステリとしての「クロイドン」 2.警察小説としての「クロイドン」 3.リアリズム・ミステリとしての「クロイドン」 4.経済・企業ミステリとしての「クロイドン」 5.心理スリラーとしての「 . . . 本文を読む
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救いのない暗い心の風景 ~ヒラリー・ウォー「生まれながらの犠牲者」を読む

2023年12月11日 | ミステリ・冒険小説等(海外)
■ヒラリー・ウォー「生まれながらの犠牲者」法村理絵訳(創元推理文庫 2019年刊新訳)原本は1962年の刊行 読み了えて、どうも後味の悪い作品だなあ・・・と思った。 それに、半分ばかり読みすすめたところで、誰が犯人かの見当がついてしまった。 何度もいうように、ドキュメンタリー(あるいはノンフィクション)のような現実を丹念に描いてゆく作風はもちろん健在。 署長のフェローズが、部下に対してブチギレ . . . 本文を読む
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