★ 20 の続きです。
これまでの記事を読んでも、
「アーキタイプ(元型)って何のことなのかさっぱりわからない」という方が
いらっしゃるかもしれませんね。
誤解が生じないよう、もう一度、簡単に説明しておきますね。
アーキタイプ(元型)とは、
集合的無意識(個々の心の深層にある人類が共有する無意識)にある
特定の心の形式や普遍的なイメージのパターンやモチーフを形づくる傾向のことです。
集団的な経験のパターンは、一方では人から人へ話をすことによって社会的に伝達され、
もう一方では、生物学的に伝達されて、
普遍的な無意識の中に保存されているのだといいます。
元型的なイメージは、
わたしたちが心の中で想像するからあらわれる心の産物ではありません。
ユングはアーキタイプを数学的基盤を伴うプロセス構造として定義していて、
人にとって元型的なイメージは、強い生命力があって、
自律的な内なる他人のような存在としてあらわれるといっています。
アーキタイプの代表的なものには、影、アニマ、アニムス、グレートマザー、老賢者、
自己などがありますが、
今回の記事は『英雄の旅』で取り上げている心を育む手助けをしてくれる
12のアーキタイプについて書いていきますね。
の中で、わたしの母はわたしが物心ついた頃から子育てに悩む人であったこと、
そんな母に育てられていたわたしは、子育ての悩みというものや人の心について
敏感になっていったことを書いています。
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 3
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 4
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 5
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 6
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 7
☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 8
わたしの母は、楽天的で純粋で優しい性格で、
辛いことがあっても少しすると良いように解釈して気を取り直していましたし、
どんなにひどい目にあっても、人への信頼感が揺らぐことはありませんでした。
また、非常に子ども好きで、わたしと妹に対する愛情も格別でした。
ですから、そんな母が、始終、子育てで悩む人であったことは、子どもの頃、
ずっと抱いていた不可解な謎でした。
時折、母が、「世の中には子どもに辛くあたったり、放りっぱなしだったりする
母親もいるのに、どうして自分だけ、悪い方に悪い方に進んでいくのか」という疑問を
口にしていたので、余計に不思議に感じたのかもしれません。
もっともわたしが抱く疑問は、母のそれとはずいぶん異なるものでした。
「母の純粋さにも優しさにも妹への愛情にも嘘は感じられない。
それなのにどうして、
いつになっても妹とのこじれた関係を修復することができないのか?」
「母の妹に対する態度が特にひどいように見えないし、
妹が特別悪い子なわけでもない、
母が歩み寄る努力をしていないわけではないし、
妹の母への愛情が薄いわけでもない。
それなのに、問題はどんどんこじれて悪化していくのはなぜなのか?」
今、アーキタイプという概念を通して母と妹の姿を振り返ると、かつての
謎の答えは至極単純なものに感じられます。
おそらく、母はいくつになっても、どんな場面でも、『幼子』のアーキタイプで
乗り切ろうとした人だったのでしょう。
また妹は、『孤児』のアーキタイプの影の面を生きざるをえなかったのでしょう。
『幼子』のアーキタイプは、
自我の発達に関わる4つのアーキタイプ(『幼子』『孤児』『戦士』『援助者』)の
ひとつです。
『幼子』とは、わたしたちの中の人生や自分自身や他人を信頼する気持ちを
指しています。
愛情をかけられて育った子は、他人を信頼し、結果として自分自身を信じるように
なるおかげで、生きていくのに必要なスキルを身につけることができます。
わたしたちは『幼子』の力を借りて、ペルソナ(世の中で身につける仮面。
個人の人格と社会的役割を示す)を身につけます。
幼子の望みは、社会から受け入れられ、うまく適応し、愛され、
誇らしく思ってもらうことです。
『幼子』の問題への対処法は、「存在を否定すること」です。
『英雄の旅』の中で「幼子の影」について書かれたこんな文章があります。
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幼子はすぐに物事を否定しようとするので、親や恩師や恋人が信頼に
値しない人間だという事実を直視したがらない。
そのせいで、他人から虐げられるという状況に自ら踏みこんでいって、傷つけられたり、
不当な扱いをうけたりする状況を何度も何度もくりかえすのだ。
(省略)
幼子は自分の行動を否定するという行為にも走りやすいため、問題が起こっても、
自分の責任から目を背けてしまうおそれがある。
幼子は、少なくとも初めのうちは、絶対主義的で二元的な存在なので、
「自分にも欠点がある」と認めた段階で、自分自身に恐れを抱いてしまうからだ。
だからこそ自分に至らない点があるという事実を
頑なに拒み続けるか、罪悪感や羞恥心に支配されてしまうかの、
二つに一つになってしまうのだ。
(省略)
傷ついた幼子が、
自分の至らなさと向き合うのを恐れるようになると(大人のほうがその傾向が強い)、
自分を相手に投影させて、相手に至らない点があるのだと責めるようになる。
こうした戦略を探っていると、果たすべき責任を回避するようになっていく。
虐待を受けていることを否定していれば、自分を守るために立ち上がる必要はない。
自分の過失を他人のせいにしておけば、自分を変える必要もない。
他人の差別意識や敵対心といった悪意に満ちた態度を内面化させていれば、その状況から
のがれるすべを見つける必要も、自分の無力さをかみしめる必要もないまま、
自分を責め続けていればいいからだ。
幼子は、ペルソナ(仮面)や社会的役割のイメージどおりの姿にとどまることや、
世間に隠し事をしないことが重要なのだと信じている。
(省略)
魂の成長に関わるアーキタイプは、
あまりにも威圧的だという理由で、別の姿に投影されてしまうだろう。
探求者は異端者。破壊者は敵対者、求愛者はふしだらな誘惑者、
創造者は危険思想にかぶれた在任、といった具合だ。
そういう時の幼子は、胸にぽっかりと穴があいたような気分で生きており、
自己破壊的な習慣や性的な欲求に取りつかれ、無意識のうちに、
劇的な状況や困難な状況を創り上げたいという欲望を抱えている。
『英雄の旅』キャロル・S・ピアソン 実務教育出版 P129、130
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次回に続きます。