虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子育ての迷いや悩みから抜け出すため の あれこれ 21

2014-09-07 22:10:48 | 日々思うこと 雑感

★ 20 の続きです。

これまでの記事を読んでも、

「アーキタイプ(元型)って何のことなのかさっぱりわからない」という方が

いらっしゃるかもしれませんね。

誤解が生じないよう、もう一度、簡単に説明しておきますね。

 

アーキタイプ(元型)とは、

集合的無意識(個々の心の深層にある人類が共有する無意識)にある

特定の心の形式や普遍的なイメージのパターンやモチーフを形づくる傾向のことです。

集団的な経験のパターンは、一方では人から人へ話をすことによって社会的に伝達され、

もう一方では、生物学的に伝達されて、

普遍的な無意識の中に保存されているのだといいます。

元型的なイメージは、

わたしたちが心の中で想像するからあらわれる心の産物ではありません。

ユングはアーキタイプを数学的基盤を伴うプロセス構造として定義していて、

人にとって元型的なイメージは、強い生命力があって、

自律的な内なる他人のような存在としてあらわれるといっています。

 アーキタイプの代表的なものには、影、アニマ、アニムス、グレートマザー、老賢者、

自己などがありますが、

今回の記事は『英雄の旅』で取り上げている心を育む手助けをしてくれる

12のアーキタイプについて書いていきますね。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 1

の中で、わたしの母はわたしが物心ついた頃から子育てに悩む人であったこと、

そんな母に育てられていたわたしは、子育ての悩みというものや人の心について

敏感になっていったことを書いています。

 

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 2

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 3

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 4

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 5

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 6

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 7

☆親のコンプレックスと子どもの困った行動 8

 

わたしの母は、楽天的で純粋で優しい性格で、

辛いことがあっても少しすると良いように解釈して気を取り直していましたし、

どんなにひどい目にあっても、人への信頼感が揺らぐことはありませんでした。

また、非常に子ども好きで、わたしと妹に対する愛情も格別でした。

 

ですから、そんな母が、始終、子育てで悩む人であったことは、子どもの頃、

ずっと抱いていた不可解な謎でした。

時折、母が、「世の中には子どもに辛くあたったり、放りっぱなしだったりする

母親もいるのに、どうして自分だけ、悪い方に悪い方に進んでいくのか」という疑問を

口にしていたので、余計に不思議に感じたのかもしれません。

 

もっともわたしが抱く疑問は、母のそれとはずいぶん異なるものでした。

「母の純粋さにも優しさにも妹への愛情にも嘘は感じられない。

それなのにどうして、

いつになっても妹とのこじれた関係を修復することができないのか?」

「母の妹に対する態度が特にひどいように見えないし、

妹が特別悪い子なわけでもない、

母が歩み寄る努力をしていないわけではないし、

妹の母への愛情が薄いわけでもない。

それなのに、問題はどんどんこじれて悪化していくのはなぜなのか?」

 

今、アーキタイプという概念を通して母と妹の姿を振り返ると、かつての

謎の答えは至極単純なものに感じられます。

おそらく、母はいくつになっても、どんな場面でも、『幼子』のアーキタイプで

乗り切ろうとした人だったのでしょう。

また妹は、『孤児』のアーキタイプの影の面を生きざるをえなかったのでしょう。

 

『幼子』のアーキタイプは、

自我の発達に関わる4つのアーキタイプ(『幼子』『孤児』『戦士』『援助者』)の

ひとつです。

 

『幼子』とは、わたしたちの中の人生や自分自身や他人を信頼する気持ちを

指しています。

愛情をかけられて育った子は、他人を信頼し、結果として自分自身を信じるように

なるおかげで、生きていくのに必要なスキルを身につけることができます。

わたしたちは『幼子』の力を借りて、ペルソナ(世の中で身につける仮面。

個人の人格と社会的役割を示す)を身につけます。

幼子の望みは、社会から受け入れられ、うまく適応し、愛され、

誇らしく思ってもらうことです。

 

 『幼子』の問題への対処法は、「存在を否定すること」です。

 

『英雄の旅』の中で「幼子の影」について書かれたこんな文章があります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

幼子はすぐに物事を否定しようとするので、親や恩師や恋人が信頼に

値しない人間だという事実を直視したがらない。

そのせいで、他人から虐げられるという状況に自ら踏みこんでいって、傷つけられたり、

不当な扱いをうけたりする状況を何度も何度もくりかえすのだ。

(省略)

幼子は自分の行動を否定するという行為にも走りやすいため、問題が起こっても、

自分の責任から目を背けてしまうおそれがある。

幼子は、少なくとも初めのうちは、絶対主義的で二元的な存在なので、

「自分にも欠点がある」と認めた段階で、自分自身に恐れを抱いてしまうからだ。

だからこそ自分に至らない点があるという事実を

頑なに拒み続けるか、罪悪感や羞恥心に支配されてしまうかの、

二つに一つになってしまうのだ。

(省略)

傷ついた幼子が、

自分の至らなさと向き合うのを恐れるようになると(大人のほうがその傾向が強い)、

自分を相手に投影させて、相手に至らない点があるのだと責めるようになる。

こうした戦略を探っていると、果たすべき責任を回避するようになっていく。

虐待を受けていることを否定していれば、自分を守るために立ち上がる必要はない。

自分の過失を他人のせいにしておけば、自分を変える必要もない。

他人の差別意識や敵対心といった悪意に満ちた態度を内面化させていれば、その状況から

のがれるすべを見つける必要も、自分の無力さをかみしめる必要もないまま、

自分を責め続けていればいいからだ。

幼子は、ペルソナ(仮面)や社会的役割のイメージどおりの姿にとどまることや、

世間に隠し事をしないことが重要なのだと信じている。

   (省略)

魂の成長に関わるアーキタイプは、

あまりにも威圧的だという理由で、別の姿に投影されてしまうだろう。

探求者は異端者。破壊者は敵対者、求愛者はふしだらな誘惑者、

創造者は危険思想にかぶれた在任、といった具合だ。

そういう時の幼子は、胸にぽっかりと穴があいたような気分で生きており、

自己破壊的な習慣や性的な欲求に取りつかれ、無意識のうちに、

劇的な状況や困難な状況を創り上げたいという欲望を抱えている。

     

     『英雄の旅』キャロル・S・ピアソン 実務教育出版 P129、130

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次回に続きます。


うまくいかない時も、投げ出さずに何度も何度も再挑戦する力

2014-09-07 17:35:04 | 工作 ワークショップ

小2の女の子たちのグループレッスンで。

ユースホステルでサンダルを作って以来、何度も何度も改良を加えて

作り直しているというAちゃん。

自分の足型を取り、前に失敗した原因をていねいに分析し、

何回もゼロから作り直しています。

Aちゃんは、勉強でもうまくいかないときにも、落ち込まずに

何度も再挑戦する強さを持っています。

 

教室にはAちゃん同様、失敗や挫折に強くて、

うまくいかないときにも、りラックスした状態で何度でも再挑戦していこうとする子たちが

たくさんいます。

そうした子たちの親御さんには、とてもよく似通った面があるのを

感じています。

 

「何かする度に、出来不出来の評価しない。その時できなくても、先の心配をしない。

遊びも勉強も同じように大切にしている」というところです。

 

1年程前に、教室の折りたたみ式のドールハウスに感動して以来、

Aちゃんが何度も作り直している「からくりハウス」。

今日はわたしといっしょに隠し部屋を作りました。

 

シンプルな小さな部屋があっという間に広がって隠し部屋が生まれます。

 

 

Bちゃんが作った化粧コンパクト。

Bちゃんは目にしたものを何でも作ろうとします。

円柱形のものを作ることが多いです。

 

今日、Bちゃんが教室で作っていたドールハウス。

ベッドやテーブルなど、自在に形を創りだすのが得意です。

カーテンは開閉できる工夫をしていました。

 

少し長い文章題を整理しながら解く練習をしています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なわとびを しました。つとむさんは 1回目は86回 とび、

2回目は 1回目より 38回 多く とび、3回目は 2回目より

27回 少なく とびました。

まさとさんは 1回目は93回とび、2回目は1回目より17回少なくとび、

3回目は 2回目より29回多くとびました。

3回目は どちらが 何回 多く とびましたか。

              (トップクラス問題集2年生より ) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


算数が得意なBちゃんが、めずらしくうっかりミスをしたものの

3人ともよくできていました。

 

ガタガタした形のまわりの長さを問う問題をいくつか解きました。

合わせると、縦(横)線と同じになる部分に、顔や身体を描いてみると、

とてもイメージしやすくなります。(数字が逆さまの部分は気にしないでくださいね)

 

計算の数当てクイズも楽しかったです。


年中、年長さんグループ 絵本作り と カードゲーム

2014-09-06 18:08:42 | 通常レッスン

 

年中のAちゃん、年長さんのBちゃん、Cちゃん、Dちゃんのグループで、

絵本作りをしました。

それぞれ独創的なすてきな絵本を作っていました。

 

 Bちゃんは教室にあった冠をかぶって、お姫様の絵本を。

 

Cちゃんは教室に来る途中に拾ったどんぐりに顔を描いて

ゴムひもをつけて、どんぐりの冒険の絵本を作りました。

 

Aちゃんは、教室にアンモナイトの化石を持ってきてくれました。

「化石を発掘する絵本を作る}とはりきっていました。

とてもすてきな絵本ができていたのですが、写真を撮りそびれていて残念。

 

 Dちゃんは鳥たちが結婚する物語を作っていました。

 

Aちゃんが寝坊した朝の出来事をていねいに話してくれたので、

わたしが話を聞きながら絵を描いて、ミニ絵本を作りました。

こんなお話です。

 

「朝、起きるときにお布団はかけないで寝ているの。

うさぎのお人形が3匹と、とっても可愛い馬のお人形といっしょに寝ているの。

うさぎたちは、木でできた靴をはいているのよ。

わたしは馬のお人形にお話をしてあげたり、

積み木をえさだってことにしてあげたりして、いつも遊んであげる。

寝坊をた日の前の日は、お母さんがお父さんに、

もしかして朝、起きれないかもしれないよって言ったのに、

朝になるとお父さんは忘れてしまって、そんなの聞いていないよって言ってた。」


子どもたちはAちゃんが体験した物語に大喜び。

絵本を作るうちに、手がのりでベタベタした子がいたので、こんなお話も作りました。


「ベタベタベターのお話。ベタベタベターはたべた、

ベタベタベターはベタベタになっちゃった。

おしまい」

 

 『カタンの開拓者』というゲームと、数当て遊びをしました。


チュッパチャップスを回転させる道具  作り方を改良しました。

2014-09-05 19:46:28 | 初めてお越しの方

チュッパチャプスを回転させてなめるおもちゃを作ってみました

の作り方と使い方を少し改良しました。

 

ストローをまげるためにモールを入れていたのですが、

曲げない方が子どもには回転させやすいようです。

ごくごくシンプルに細い方のストローにチュッパチャップスの棒に合うように

詰め物(ストローを切って丸めたものがいいです)を入れて、

太いストローに穴を開けて細いストローを通すだけで、できあがりです。

 

今日レッスンに来た子どもたちは、レッスン終了数分前に作り始め、

「お友だちのプレゼントにチュッパチャップスをつけて渡したい」と

大満足の様子で帰っていきました。

 


遊びと学びの中間ゾーン

2014-09-05 19:18:17 | 工作 ワークショップ

工作はただ工作するだけでも、

巧緻性や創造力や芸術的な感性を高めてくれる楽しい活動です。

でもそれではちょっともったいないな~と感じるのです。

工作活動を支援する大人がほんの少し工夫するだけで工作は小学校に上ってからの

さまざまな分野の学力の基盤を作ってくれるものだからです。

そのためにはどんな工夫をすればよいのか、私が気にかけている点を書いてみます。

工作教室やアトリエに通っていると、「もう工作はしたから十分」と大人は思って

しまいがちです。けれどもそうした創作活動だけを主とした場とは別に

工作と勉強の中間ゾーンを意識した活動時間も持っていただきたいのです。

工作中、どんなことに気をつけると学力につながるのか……というと、まずひとつは、


★「見積もる力をつける」ということです。

見積もる力は、大人の指示に従いながら、集団で同じものを作っているうちはなかなか

身につきません。どんな簡単なものでもいいから、自分で作りたいものがあって

試行錯誤するとこうした力はアップします。

たとえば、四角形の周りの長さが20センチ、縦の長さが4センチの長方形の面積を

求める問題を見積もる力は、箱やひもを使って工作しているときに、

材料が足りなかったり、思うように作れなかったりする経験の積み重ねから生まれます。

準備しすぎず、完璧を目指しすぎず、教えすぎないことが工作を学力に結び付けます。

もうひとつ。

★ 道具の使い方を教えることも大事。

それも完成した道具よりも、ひもとプッシュピンと鉛筆をつないだコンパスとか、

お皿を使った円の描き方とか……が最適です。

なぜかというと、そうした原始的な道具は、辺や中心点の意味をそのまま子どもに

悟らせることができるからです。

また、ものさしの目盛りの読み方や、はかりや分度器の使い方をマスターさせると

理科でも算数でも役立ちます。

教え込むのでなくて、ゆっくり子どものペースでマスターさせていきます。

★ 動きを加えて、理科の知識を増やし、工作道具で遊ぶことが、実験の結果を

理解することにつながるようにする。

★ さまざまな角度からのものの見え方に興味がわくように工作する。

★ 手を使ったさまざまな作業を正確にマスターさせる。

★ 素材について学ばせる

★ 積み木やブロックなどシンプルなもので、頭を使う。

デュプロブロックとレゴの小さなパーツのブロックでは、デュプロの方が見積もる力を

育ててくれる一面があります(本格的なレゴ作品は別)。

パーツの形が決まっているので、計算しながら組み立てないと、

形が作れないからです。

どんどん複雑に、難しいものを・・・と親心でおもちゃのレベルを上げることは、

学力につなげるという点からいうとあまりよくないように思います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先の記事と重なる部分が多いのですが、遊びと学びの中間ゾーンを意識した活動の様子を

いくつか紹介しますね。


小学生の女の子ふたりの『お祭りの屋台ごっこ』です。

「分類する」作業が遊びに含まれていると、

楽しさが増すし、遊びの世界が広がります。

カラフルなおはじきやビー玉を色分けしては、キャンディー屋さん、ジュース作り、

魚の配達などをして遊んでいます。

  

水風船を膨らませて、ヨーヨー釣りを作りました。

 

「ろ過する」作業を喫茶店遊びに入れています。

  

屋台で売る小物として指輪を作っていました。

「折り紙を半分に折り、もう一度半分に折る」という作業で、

どの折り方が適切な細さになるのか考えました。

 

こんなシンプルな物作りでも、折った後の形を推理するようにしていると、

算数のセンスが身についていきます。

 

 

屋台とは関係がないかもしれませんが、

『ピッケのつくるえほん』というソフトで手作り絵本を作って、

販売するコーナーを作りました。

本作り、マンガ雑誌作り、新聞作り、詩集作り、写真集作りなども

遊びに取り入れると、遊びの質が上がります。


クレープ製造機。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この日の午後に来た小1の男女のふたごちゃんと幼稚園の女の子のレッスンの様子です。

午前のレッスンの女の子たちが作っていた屋台用の遊び道具をもとにして、

自分たちが考えた遊びをいろいろと発展させていました。

 

色違いのスライム作り。

 

ヨーヨー釣り用の釣る道具は

ティッシュペーパーにモールの釣り針をつけて作ります。

簡単な工作だからこそ、物差しで測る作業や

「1㎝はどれくらいの長さか?」「10㎜は何㎝か」といったことに

気をつけて作ることができています。

 

濃度の異なる砂糖水を作って、二層ジュースを作っています。

 

水で膨らむジェルを使って遊ぶついでに試験管に入れて遊びました。

それぞれの数を描きだしたり、大きい球のときと小さな球のときでは、

どちらがたくさん入るのか推理したりしました。

  

「Aの5」「Fの6」など、座標を言って攻撃するバトルシップゲーム。

とても面白かったようです。

 

付録のおさるのてんびんばかりで遊びました。

付録で遊ぶときは、説明書が自分で読めるようになるようにサポートしています。


1歳後半の子の数の敏感期、3歳児さんとの数遊び 

2014-09-05 13:35:13 | 算数

1歳11ヶ月のAちゃん。いやいや期が始まって、

何を聞かれても第一声は「イヤ!」です。

「イヤ!イヤ!」とごねる一方で、秩序のある活動に集中して取り組むことも

増えています。

積み木の椅子にお人形を座らせていく遊びをしています。

 

3歳のBくんと動物にエサをあげる遊びをしています。

本当は今日はBくんの妹ちゃんのレッスン日だったのですが

風邪を引いてしまったそうで、お兄ちゃんが代わりに参加しています。

『ハリガリ』で遊んだり、ドッツ遊びや指を使った数遊びをしました。

 

カードを絵柄ごとに分類しています。

Aちゃんも正しい位置に絵カードを置いて、得意そうにしていました。

 

 


子育ての迷いや悩みから抜け出すため の あれこれ 20

2014-09-04 20:01:47 | 日々思うこと 雑感

教室をしていると、

子どもたちの中でひとつのアーキタイプ(元型)が活性化されることで

子どもにそのアーキタイプから得られる才能が身につき、

変容していく様を目にすることがよくあります。

それはまさしく変容という言葉が表す通り、

子どもの内面の変化に伴って外に表す態度が変わることで、

諭されたりしつけられたりして態度を変えるのとは別物です。

 

たとえば、前回までに紹介した『援助者』のアーキタイプは、

『戦士』と並んで「責任感」を身につけることと関連があるので、

このアーキタイプが活性化される体験を経て、子どもが責任感を持って

物事に取り組むようになるのを何度も目にしています。

 『援助者』のアーキタイプは、他人の世話を必要とする責務(親になるなど)を負った

ときや、他人が困っていることに気づいた時などに活性化されるアーキタイプです。

 

教室でこんなことがありました。

アスペッ子のAくんは就学準備グループで同年代の子と過ごしていた間、

「自分の好きなことを好きなようにしたい、いつも好きなことしかしたくない」という

態度を固持していました。

 

興味があることは、ほかの子にやらせず独占してしまい、

片付けや少し苦手な勉強となると、屁理屈を攻撃的な口調で並べたてて、

意地でも取り組もうとしませんでした。

 

ある時、ほかの子とコミュニケーションを取るのが難しい、一学年下のBくんが

Aくんといっしょにいるときはよく笑っていることに気づき、

それから毎月、AくんとBくん、ふたりのレッスン時間を設けることにしました。

回を重ねるにつれて、ふたりの間には本当の兄弟のような親密さが生まれてきました。

この時間は、Bくんの会話力や人と関わる力を伸ばしてくれただけでなく、

Aくんの外の世界との関わり方を心の深い部分から変えることにつながりました。

 

最初の頃、Aくんは「Bくんがぼくが作った電車と駅を取ろうとする!」

「ここはぼくの場所なのに、Bくんが入ってくる!」と文句を言う一方で、

Bくんが先に手にしている物を、理由をつけては奪い取っていました。

Bくんの幼さを受容できない上、Bくんの幼さにつけこんでそれを利用する態度も

目立っていたのです。

 

わたしはふたりの間に適度に入りながら、AくんとBくんのふたりだからこそ

楽しめるような遊び(Bくんはサスペンス調の劇遊びが好きです)や実験や工作が

楽しめるように環境を整えていました。

Aくんの意欲をかきたてる形で、Bくんの手助けをしたり、Bくんの状態に気遣ったり、

配慮したりする機会を作りました。

 

実際にBくんのお世話をしたり、Bくんにゆずってあげたりしながら、

お兄ちゃん気分を味わったり、達成感を得たり、自分がとてもしっかりしていて

役立っているという実感を持ったりする体験を重ねるうちに、

Aくんの片付けや学習に対する態度が変わり始めました。

 

Aくんは気持ちを切り替えるのが苦手なので、

遊んでいた道具を片付けて学習の準備をする際に必ず一悶着あったのですが、

テキパキ動いて、Bくんが散らかしたものまで片付けてくれるようになりました。

以前のAくんは、学習中、少しでも考えなくてはならない問題にぶつかると、

「こんなの嫌だ!こんな問題、悪い問題だよ」と言い張って勉強をやめてしまい、

こちらの話を聞いて理解する場面では、

毎回かんしゃくを起こしてしばらく機嫌がなおりませんでした。

が、自分よりできないことがたくさんあるBくんに配慮しながら

遊んだり学んだりする時間を過ごすうちに、

不安で気持ちが高ぶっているときも、

「できなくても、何回かやっていたらできるようになるんだよ」とか、

「ちゃんと話を聞いたら大丈夫だよ」といった自分で自分を鎮める言葉をつぶやいて

最後までがんばり抜くようになりました。

それは、なかなか席に座ろうとしないBくんに対して、

Aくんがかけてあげていた言葉でした。

いつの間にか、自分で自分を律するときの言葉になっていたようです。

 

 

 

 

 


楽しい本作り と 望遠鏡作り  年長さんたちの算数タイム

2014-09-04 14:10:04 | 算数

年長のAくんが、『ようかいウォッチのまんが』という本を作ってきてくれました。

Aくんはこれまでずっと見本を見ても、上下や左右を捉えることが難しい様子でした。

お家ではあえて字の練習等はしていないものの、

たまに易しい字を教えようとすると極端に嫌がるので

あとで文字の学習でつまずかないか気にかけていました。

虹色教室でする工作は大好きです。

教室やユースホステルのレッスンで劇遊びをしたことがとても楽しかったようで、

自分が思いついたお話を誰かに伝えたい、自分の中にあるイメージを

何かの形で表現したいという意欲が高まってきました。

 

幼稚園のパンフレットに載っていた実験も、

みんなにやってもらいたくて実験の手順を書いた本を作ってきてくれました。

 

教室で忍者屋敷の仕掛け絵本を作るときも

さまざまな場面で伝えたいことを文字で書いていました。

いつの間にか、Aくんはすっかり文字と仲良しになったようです。

 

 

教室に来るなり「望遠鏡が作りたい」と言うBくん。

ラップの芯等で望遠鏡作りをすると、

虫めがねをレンズ部分に貼るのでは太陽を見てしまう危険性があるし、

セロファン等を貼るのでは物足りないでしょう。

そこで、小さいルーペで箱内の風景を眺める、固定された望遠鏡を作りました。

クレヨンの山がくっきりと本物の風景のように見えます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

望遠鏡がどんな作りかわかりにくいと思ったので、別の日の幼い子とお母さんの作品を

貼っておきます。ルーペは100円ショップのものです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

AくんとBくんの算数レッスンの様子です。

ふたりとも算数が得意なので、最レベ1年生の最高レベルの問題を解いています。

大きな立方体から、色ごとにいくつずつ小さい立方体を取り除くと

問いの図になるか考えています。

 

「公園にいる子どもたちはみんな犬か猫を飼っています。

犬を飼っている子が9人、猫を飼っている人が4人、どちらも飼っている

子が3人います。猫だけを飼っている個は何人ですか。」

といった問題。

 

ボードゲームもとても盛り上がりました。

 

 

 


ガムマシーン作り

2014-09-03 21:18:56 | 初めてお越しの方

ペットボトルの上部を切って、

穴を開けた紙コップに入れます。

紙コップの壁面2ヶ所に切り込みを入れ、

木の板(アイスキャンディーの棒など)をさしこんでレバーにしています。

レバーを左右に動かして、ペットボトルの穴がふさがる状態か

開いた状態になるようにするとできあがり。

 

ビー玉をいくつかペットボトル部分に入れて使います。

 

「いっぺんに何個も出てくるから1個ずつ出てくるようにしたい」とAちゃん。

 

もう一段、レバーで操作する部分を作るとうまくいくかもしれません。

オリジナルのガムマシーンを作ってみてくださいね。


子育ての迷いや悩みから抜け出すため の あれこれ 19

2014-09-03 08:08:26 | 日々思うこと 雑感

<不思議がいっぱい>


年中のAくん。

タワー型の送風機を見ながら、「風が後ろから入ってきて出て行くのでもないし、

飛行機のプロペラみたいになっているのでもないのに、どうして風が出てくるの?」

と不思議がっていたそうです。

「影の大きさは何で決まるの?大きい猫の影は大きくて、小さい猫の影は小さいの?

でも夕方の影は小さい猫の影も大きいね。大きな建物の影なのに小さい時がある」と

首をかしげていたことも。

Aくんといっしょに、風の流れを体感する道具を作る予定だったのですが、

作ってるうちにビー玉を転がすおもちゃになりました。

ビー玉の滑る力が大きくて、穴に入らず飛び出してしまうので、

Aくんがコップでカバーを作ることを考えました。

ストローをつなげて、ビー玉のコースを作るのもAくんの案です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


9月に入って忙しい日が続いています

アーキタイプについて書き始めたものの、扱っている内容が膨大で複雑な上、

多くのブログを見ている方にとって未知の概念であることを思うと、

自分の手に余る気もして気持ちがひるみかけています。


内容を要約して伝えるだけの場面でも、誤解を生むような書き方になったのでは、

誤ったわたしの解釈が含まれているのでは、と悩んだりして...(前回の記事は、

読み直すとおかしなところが多かったので書きなおしました)。

 

でも、書き始めた以上、間を空けると続きが書きにくくなるので、

(これまで、これでたくさん失敗しています)

多少、下手な伝え方になっても書き切ってしまうことに決めました。


というのも、アーキタイプについて知ることで、

多くの方がそれまで悩みや障害や問題として捉えていたことに

新しい肯定的な見方を与え、

罪悪感ではなく、旅に出るときのような意気揚々とした気持ちで向き合う力を

得られるだろう、と思うからです。

 

たとえば、アーキタイプには、『孤児』というわたしたちの内なる子どもが、

裏切られたり、ひどい扱いや無視を受けたり、幻滅させられたときに、

活性化するものがあります。

 

一見、悪いものにしか思えないこのアーキタイプも、

わたしたちの人生にかかせない大切な象徴のひとつです。

『孤児』の活性化は行き過ぎれば機能不全をもたらしますが、

成長と発達に欠かせないものです。

わたしたちはこのアーキタイプから「自分の面倒は自分でみなさい」

「他人をあてにするのはやめなさい」と教わります。

アーキタイプを通して、現実に対処する知恵が育まれ、

責任感と自立心が身についていきます。

このアーキタイプを成熟させていくことで、権力者に依存する代わりに、

助け合いと団結の精神で権力者に対抗する人々と相互依存の関係を築き、

現実的な予想を展開させます。

 

また、『破壊者』というアーキタイプは、確立されバランスのとれた自我が、

身近な人の死に遭遇したり、無力感を味わったり、目標にしてきたものや築きあげて

きたものが、水泡に帰したときなどにあらわれるアーキタイプです。

これも、あってはならない悪いものでしかないように思えますが、

他のアーキタイプ同様、欠くことができない大切なもののひとつです。

破壊者のアーキタイプが活性化されることで、

自分という人間や世界の存在意義についての認識が否定され、幻想が打ち砕かれた結果、

わたしたちは自分のアイデンティティーを魂のレベルで発見する機会を手に入れます。

『破壊者』は、古い自己を手放し、新しい自己を誕生させるプロセスをつかさどる

アーキタイプなのです。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

少し話が脱線しますが、つい最近、『無痛文明論』(森岡正博著 )という本を読み、

その後、ネット上の『無痛文明論』に対する批判も読み、

それから『無痛文明論』への批判に応えて—という著者の文章にも目を通しました。

 

著者による「無痛文明」とは、

「苦しみを遠ざける仕組みがはりめぐらされ、快に満ちあふれた」社会、

「あらゆる面で痛みや苦しみをできるかぎり排除しようとする人工的に管理された」

社会ことです。


著者の主張は、

人間の「身体の欲望」が、人間自身から「生命のよろこび」を奪っている、というもの。

ここで生命のよろこびとは、

苦しみやつらいことにあった時、そこから逃げようとせずに、

自分自身の方を解体し、変容させ、再生させたときに訪れるよろこびとされています。


無痛文明論に対する批判の多くは、「現代文明にある必要不可欠なものまで

あれもダメこれもダメと攻撃し、

昔に戻れ、田舎に帰れというありがちな説教をされているようでイライラする」

という「批判の多さに対する批判」や、

文章のあり方として、「生命のよろこび」が鍵概念であるのに、

十分に語られていないことに対する批判や、

著者が出した答えである「無痛本流と戦う」というあり方の矛盾点を突くものでした。

 

わたしはこの本の書かれ方や著者のこの問題への向き合い方がどうのこうのということは

いったん脇に置いて、

快を過剰に保証しようとする社会が、苦しい体験を通して、

自分自身を変容させ成長するという人間のあり様を変えつつあることに

危機感を抱きました。

 『キャラ』という成長しない、ひとつのイメージに自分を閉じ込めて

成長を拒む子たちや、

遊ぶことにすら、「めんどくささ」という苦痛を感じることが多くなった子たちのことを

思いながら……。