『よみがえれ思考力』にある、子どもが心的パターンを創る過程を援助するための
ガイドラインの続きを書きますね。
<就学前の豊かな環境>
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★ 黒板やぬり絵、粘土や砂、小麦粉粘土、フィンガーペインティング、水、折り紙、
糊、泥んこ等が、子どもの感覚受容系を構造化し、さらに精巧にさせる助けとなる
遊び素材である。
もし手足が汚れるということが気になったら、目を閉じて子どもの混沌とした頭の中で、
ニューロンの小さな樹状突起が枝を広げていくさまを思い浮かべてほしい。
★ 遊びの感覚的な側面は言葉でつなぎとめることができる。
「それはどんなに見え、聞こえ、嗅い、味がし、感じがするかな?」
これは語彙を増やすにはよい機会である(たとえば、手触りがよい、
でこぼこしている、鋭い、おいしい)。
★ 数や文字などの作業レベルの学習課題を「教える」ようなワークブック、
あるいはそれに類似した市販の「学習」教材は避けること。
★ 子どもが大きくなるにしたがって、週ごとの遊びのトピックスを選ぶ。
たとえば、拡大鏡を出したり、ビンを集めたり、箱を並べたり、自然観察のための
図鑑を出したりする。
子どもの興味にそうようにすること。
(『よみがえれ思考力』からの引用)
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ママ友同士の情報では、実際に子どもの認知の発達を研究する人々が追跡調査もして
子どもの脳にとって良いと見なした環境と正反対のものが持てはやされがちです。
子どもの脳内を覗くことはできませんから、
短い一時期、他の子より先に何かできるか、できないか、に目を奪われてしまうのも
仕方ありません。
でも、幼児期は二度とこないのですから、周囲の流行の話題に流されず、
何が重要なのかよく考えて子どもと過ごすことが大切ですね。
周囲に同調するといえば、
話が少し脱線しますが……『物理と対称性』という本の中に、こんな話がありました。
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(原子間の相互作用の話題の後で)
人間集団の場合も、隣の人が右を向いたらそれに見習って右をむく、
隣人に「どうする?」と相談し、「あなたがそうなら私もそう決めよう」という光景を
見かけるだろう。
個人の行動が規制されていて、自由がない社会ほど、
隣と同意見の方が安全だからである。
もちろん、このようなコミュニケーションがあっても、個人の活動エネルギーが、
隣との相互作用より大きければ、やはり勝手な方向を向く。
意見が揃うのは、主体性がないとも見えるが、逆に、他人の意見も聞かず
自分勝手に行動するアナーキーな社会は、社会と呼ぶのにふさわしくない。
個々の構成子が他の構成子に何の影響も与えずてんでばらばらな集団は、
いつまでたってもてんでバラバラで、世論の形成も統制された行動も起こらない。
個性が尊重され、自己の判断で左右を選択できる自由が保障されており、
しかもコミュニケーションが盛んな社会もある。
そこでは、自分たちの方向を、コミュニケーションを通じて選択するので、
社会の発展・進化が可能になる。
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幼い子どもたちが過ごす場も、周囲と同調していないと安心できないような環境や、
それぞれが自分勝手にバラバラに振舞うような環境が増えているように
思います。
虹色教室でレッスンの流れを作るとき、いつも、先の文にあった
「個性が尊重され、自己の判断で左右を選択できる自由が保障されていて、
しかもコミュニケーションが盛んであること」
「自分たちの方向をコミュニケーションを通して選択するので、
個人としても集団としても発展と進化が可能になること」
の2点に気をつけています。

↑ 「今日、何がしたいのか」「いくつかの選択肢の中からどれがしてみたいか」
みんなで話しあいます。
わたしは、活動の中で、それぞれの個性がいかせるように、
適度に手助けしています。
今日のレッスンで、こんなことがありました。
昨日の子どもたちの作品・清水寺(↑写真)を飾っていたので、
それを見た☆ちゃんが、「わたしも世界遺産の建物が作りたい」と言いました。
図鑑を見て、「ピサの斜塔」を選んだ☆ちゃんに、レンガ積み木で作っては?と
アドバイスをしたのですが、清水寺と同じようにブロックで作りたいとのこと。
「でも、ピサの斜塔は、丸い形を作らないといけないでしょ?ブロックだときれいに
できるかな?」と相談に乗っていると、
以前、教室でブロックで曲線を作る方法を教えた時のことを覚えていたらしく、
「こういうふうにつないで、曲げるといい」と答えました。

子どもたちが何を使って、どんな活動をするのか、
最初からお膳立てされている環境では、自分の個性を表現しにくいし、
自分でアイデアを出したり、問題を解決したりする機会が限られます。
といっても、自由すぎる場では、言葉で話しあいながら自分の考えを整理したり、
模倣したり、教わったり、それらを発展させたりすることができません。
集団の場で、一人ひとりの個性や意見が大切に扱いながら、
同時にお互いから学び合い、進歩していく状態を作るのには、
さまざまなコツがあります。
初めて集まった子たちが大勢いる場で工夫しているのは、こんなことです。
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 1
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 2
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 3
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 4
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 5
子どもの能力が伸びる場の決め手は、『循環』 6
遊びの話し合いと発展の例
ジュース屋さんごっこ、レストランで実験遊び
子どもたちのやる気がないとき
「煮干しの解剖」実習セット と カルマンの渦

ほかの子らも手伝って、製作中。

最後に斜めにできるように、ブロックの基礎板を裏返して
土台にしています。