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虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「語りかけ育児」の弊害 と「語らなさすぎる育児」の弊害 4

2011-09-08 16:34:46 | 幼児教育の基本

「愛着」の形成がうまくいかないのは、
前回の話のように、子どもを放置しがちで世話を怠ったり、
愛情不足や関心の不足から起こるとばかり言えない気がしています。

それはそれは子どものことを気にかけ手をかけ、
しょっちゅう話しかけて、抱っこもしている……
祖父母も総出で可愛がっている……と、
自他共に認める方でも、
子どもとのコミュニケーションの様子を見るとかなり気がかりで、
それが1~3歳の子の行動の仕方や耳の聞こえ方などに影響を及ぼしているように
見える場合がよくあります。
発達障害はないのに、親に呼ばれても振り返りもせず
目は合うには合うけれど、親の表情を読むだけで自分から目で親に気持ちを伝えようとしない。

表情から親への信頼感や親に寄せる安心感が感じ取りにくく、ペットの動物のように動くことがよくある。(その間、親は言葉のシャワーのように声かけをしていることが多い)

抱っこのされ方がぎこちない(ハグ!ハグ!と親は思ってしているのだけど、ぬいぐるみを抱きしめているかっこうになって、子どもの抱いて欲しい気持ちが満たされていない)

気質の強い子にしっかり注意しない、気質の弱い子に強い態度で接するなど、
親のしつけが子どもに正しく届いていない

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愛着の形成がうまくいかないという問題は、
現代の日本の何とも言えない
幼児と親の危ういコミュニケーションのあり方の中で、
特別なことでなく、誰にも、どこの家庭でも起こることになりつつあるように
感じるのは私だけでしょうか?

ずいぶん前に、テレビで赤ちゃんたちをハイハイさせて競争させる番組を見たことがあります。
ハイハイしてママのところまで一番先に着いた子が勝ちというルールです。
途中で、音や光の出るおもちゃといった赤ちゃんにとって魅力的な障害物がたくさん置いてあるので、それに気持ちが惹かれてハイハイするのを忘れてしまった子はアウトです。
赤ちゃんは本能的な親を求める気持ちに駆り立てられて
一生懸命前に進むのですが、
さまざまな目を引くものや、気が散るものに囲まれているため、
だんだん何をしているのか忘れ、しまいに親を目で追うことすら
しなくなる子も多々いました。

その光景は、今も目に焼きついていて、思い出すたびに不安を掻き立てられます。

さまざまなおもちゃにかこまれるうち、お母さんを求める気持ちを見失ってく赤ちゃん。それと同時に、テレビの撮影現場という特殊な設定に舞い上がり、
この日の経験が赤ちゃんの心に残すかもしれない影に気遣うことも忘れ、
心を持った赤ちゃんをまるで機械仕掛けのおもちゃのように扱ってしまう大人たち。

環境によって本能的な親を求める強い気持ちといったものを失うパターンを学習するって……
現代の物に囲まれ、次々めまぐるしく変わる新しいCMからの刺激を受け続ける世界で
親たちもまた、
「赤ちゃんに惹きつけられる」といった本能的な心を見失わないのでしょうか?

これは特殊な光景ですが、
実際には市が行う子育て支援の場などが、
参加する親たちに非言語の状態で、
赤ちゃんと親との誤ったコミュニケーションのあり方を教え込んでしまうことも多いなと感じています。
ひとつは、私も少し関わっていたのですが、
一部屋の会議室に何十人という赤ちゃんと親を集めて
教育をしたり、遊ばせたりするものです。

その設定は、人が密集した騒がしすぎる場所で、
赤ちゃんの様子も見ないで過すことを「普通」と錯覚させる危険なものでした。

その赤ちゃんと親のための教育プログラムはとても人気があったため、
毎回、募集人数を応募人数が超えていました。
なので、当日、連絡なく遅刻した人は、やめさせられて、別の新しい人がメンバーになるきまりになっていました。
連絡なく遅刻するのは確かに問題がありますが、
初めて赤ちゃんを育てはじめた親にとって
出かけようとしても予期せぬアクシデントがつきものですし、
心がまだ不安定な時期でもありますから、
こうした外の世界のルールに合わせるよう赤ちゃんがらみのことで
強制されると、
赤ちゃんの様子がいつもとちがわないか、熱がないか、もっと寝たがっていないかといった赤ちゃんのサインを読み取ることより、
外の世界の進行に乗り遅れないことばかり気になってしまいますよね。

別の子育て支援施設の「子供向けの広場」も、
赤ちゃん連れもたくさんいるにも関わらず、
大人でも耳を塞ぎたがるような喧騒の中で、行われていました。
大人同士、声をかけても、相手の声が聞こえないのです。
そこに大勢の赤ちゃんが放置され、親同士はおしゃべりに花を咲かせているのです。

赤ちゃんを持つ親だけでなく、
主催する市の職員さんたちも、手伝うボランティアも、
赤ちゃんという生命あるものへの感性を失いつつあるのではないか?
そんなもやもやする思いを抱いた経験でした。

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次のようなコメントをいただきました。

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今回の記事は、ずっと感じていたことがあまりに明確に書かれていたので、思わずコメントさせていただきました。

ずっと静かにベビーカーにすわりっぱなしの赤ちゃんがとても多いのには本当に驚きます。本来、赤ちゃんは常に親とのコミュニケーションを求め、また、少し大きくなると、周りの興味対象について親と共感したがるものですよね。でも、小さい頃からほっておくことで、長時間、ひとりでぼーっとしておく技を身につけていってしまうように感じます。これも一種の花火自己防衛本能ですよね。
赤ちゃんの頃にこうやってじっとしている子の親は決まって「うちの子は手がかからないのよ~」といいますが、2歳くらいになると決まって手がつけられないほど暴れ回るようになり、外食なんてままならなくなっています。コミュニケーション不足で、親のいうことを理解することができなくなってしまっているようです。

悪いのは子供ではないですよね。
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ベビーカーに座りっぱなしの赤ちゃんというのは、最近ではあまりに当たり前になってしまって、
公園やショッピングセンターで他の親の子育てを目にすることで、
自分の子どもへの接し方を修正するということが
できなくなってきたように感じています。

今朝、テレビで、携帯電話やパソコンのメールなどの影響か
対面してする会話が苦手にな若者についての特集をしていました。

お互いに顔を見てする会話が苦手で、
親しい者同士でも携帯のメールがあるので、
わざわざ会って話をする必要を感じない……

そうした若い方々が増えていて、職場で上司や取引先の人と話をしなくてはならない場面で、困っているようなのです。

顔を見てする会話が苦手。その必要も感じない……も、
会社で大人を相手にする場合、トラブルにぶつかって悩んで自分を変えようと思うか、
うまくいかなくても相手も大人なので、人間関係が壊れる程度ですむことですが、

相手が幼いわが子だった場合、表立ったトラブルはないものの、害は深刻ではないでしょうか。

以前、ショッピングセンターの前にある公園で
こんな光景を目にしました。
若いママさん(子どもが「ママ」と呼びかけていたので、ここではママさんとします)が、携帯電話でメールを打ちながら、
そばにいる2歳くらいの男の子に買ったばかりらしい戦隊物の人形を箱のままで渡していました。
男の子は、ぼんやり突っ立ったまま、うれしそうな様子もなく
その人形を見ていました。
その子のママさんは、かなりの時間、携帯の画面に釘付けだったのですが、
子どもの方は、ぐずるでもなく、暴れるでもなく、甘えるでもなく、
おもちゃを箱から取り出そうとする気配もなく、
立ち続けていました。
そうしてママさんの視界から締め出されることに、慣れっこになっている様子です。
すると、その子より年下らしい
まだ歩き方がヨチヨチとぎこちない男の子が、そのおもちゃに惹かれて
近づいてきました。
手こそ出しませんが、興味しんしんの様子でおもちゃを覗き込もうとします。
おもちゃを手にしている男の子は無言のまま少し後ずさりしました。

すると、若いママさんが不意に携帯から顔を上げ、
無言のままで、ヨチヨチ歩きの男の子をあっちに行けと言いたげににらみつけました。

そのヨチヨチ歩きの男の子のお母さんも、別のベンチで携帯メールを
打っていたらしく、今、気づいたという様子で子どもを連れにきてました。
子どもを背後から抱き取って連れ去る際、何か言うのかな……トラブルにならないかなと気にかけていたのですが、
周囲の状況にはまったく無関心で、無言でした。

この光景にちょっと驚きはしたものの、めずらしさは感じませんでした。
本当によく見かける風景なのです。

若いお母さん同士で、携帯で子どもの写真を撮るときと、
子どものファッションについて話題にしているときだけ、
子どものことを見て、後は一瞥もくれないし、
子どもの方もお母さんの顔を見ることに関心がなく
おとなしすぎるか、動きすぎるかのどちらか……という光景は、
そうでない方が目を引くほどに、街中では当たり前の親と乳幼児の姿なのです。


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