この夏、アメリカのシアトルで、私立幼稚園の教室をお借りして
工作と算数のレッスンをしました。
前回、アメリカでのレッスンに参加していただいた方の要望もあって、
今回は午前と午後それぞれ1クラス親子5組までの少人数で、ひとりひとりの子の個性にていねいにフォーカスする形で
レッスンをすることにしました。
(シアトルの私立小学校のバイリンガルクラスの先生からレッスンを依頼していただいていたものの、
スケジュールが合わずお断りすることになったのですが、
今回、来てもらった子の中にその学校の生徒さんがいてびっくりしました。)
同じおもちゃで遊んでいても、子どもの遊び方は千差万別です。
遊び方を見ると、その子の資質や才能や学び方や能力の伸ばし方などが
見えてきます。
それではわたしが遊び方のどのような点に注目して、気づいたことをどのように発展させているのか、
シアトルでのレッスン風景から具体的に説明させていただきますね。
レッスン中、組みあわせて遊ぶプレートと積み木、紙や空き箱で遊ぶ時間を設けました。
その場にいた6人の子どもたちは、
関心の向ける方向からアイデアの取り入れ方や広げ方、友だちとの協力の仕方、
問題の解決の仕方、集中の移り変わり、素材の活かし方、イメージの扱い方、どんなことに粘り強くあれるか、など
どれをとっても一人として同じ子はいませんでした。
たとえば、写真にあるプレートは、切り込み同士を差し込んで作品を作っていくおもちゃなのですが、
ひとりの男の子は、わざわざ切り込みのない面にプレートを差していました。
この子は他の子らが切り込みと切り込みを合わせてものを作る様子を
じっくり眺めていたので、このプレートの基本の扱い方については十分承知していたようでした。
眺めていた分、他の子らより出遅れていたのですが、
作りはじめたものは、他の誰の発想からもかけ離れたもので、おそらくこのプレートのおもちゃの
従来の遊び方を超えたものでした。
何を作っているのかたずねると、「こうして後ろに倒したり、前に倒したりして、ミサイルを打つんだよ」
と答えてから、
可動式にするために工夫したことを説明しはじめました。
見ると、別の作品も、見た目は地味だけれど、動く過程をイメージしながら
作られていました。
作品についてさまざまな質問を投げかけると、
どんな理由で、どのような目的で作ったのか
くわしく的確に答えることができていたことから、できあがり作品はいたってシンプルだけれど
この子が非常によく考えながら作っているのが
わかりました。
この子は算数の文章題を学ぶ時間も、他の子の答える様子を黙って眺めていましたが、
自分の番になると、他の子の答えに引きずられず、
他の子らの試行錯誤の結果から、自分の考えをじっくり練っていって
正しい答えを導きだしていました。
子どもがぼんやりと他の子の様子を眺めたまま
なかなか作業に入ろうとしないとやきもきしてしまいますよね。
でもそうした観察する時間が長い子のなかには、
頭の中で試行錯誤を繰り返したり、
よりよいアイデアを探求したりしている子もいるのです。
子どもの個性はそれぞれ面白いですね。