虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

テクニックよりも態度と心 4

2010-12-31 13:33:30 | 教育論 読者の方からのQ&A
子どもの精神面の健康度を測る調査によると、
日本の子どもの幸福度は世界最低レベルなのだそうです。
自分自身や学校などの満足度に関する質問では、多くの子たちが、「ほとんどない」と解答しているのです。
高校一年生の調査では、暗澹とするほど自尊感情が低く、実業系の高校ではクラスの3分の1が、自尊感情がゼロだったそうです。

(くわしく調査内容が知りたい方は、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』古荘純一 光文社新書 を、ぜひ読んでみてくださいね)

自尊感情とは、自分を肯定的にとらえることであり、人生のさまざまな困難を乗り越え、他人と協調していくためにとても必要なものです。
自尊感情が低いと、他人からの言動を被害的にとらえ、
他人のことも否定的にとらえがちです。

自尊感情が低いまま社会に出て行けば、
自分で踏ん張ってがんばっていく前に、職場が悪い、社会が悪い、パートナーが悪い、思い通りに育ってくれない子どもが悪いと、何でも被害的に捉えていく人生がどこまでも続くことでしょう。
世界でもめずらしいほどに、そうした自尊感情が低い子たちを
生みだし育てている日本の家庭と教育の場は、
テクニックに走る前に、
まずこの問題を直視する必要があるのではないでしょうか?

もちろん、子どもの自尊感情の低さは、
周囲の大人たちが、
テクニックにばかりに気を取られて子育てや教育をしていることが
直接の原因というわけではないでしょう。

けれど、子どもに何かの方法を施すことに夢中になると、
与える側も与えられる側も、
自分の身体から乖離し、生身の感情を鈍らせてしまうことが多々ある
ことは事実でしょう。

自分が何を心地よく思い、何を楽しく感じ、どんなことがうれしいのか、
自分が欲し感じ考えることを最優先にできなくて、
テクニックを使って対応してくる側が、欲することや気持ちいいこと、
喜ぶことを第一にしなくてはならないからです。

それが長引けば、子どもの生身の感覚は鈍り、感情はゆがんでいきます。

テクニックで接するということは、つまり、人にマニュアルで接することでもあります。
私たちは、全国チェーンのコンビニやハンバーガーショップで、
マニュアルに基づいた対応を受けます。
全国チェーンの習い事や塾でも、マニュアルに基づいた対応を受けます。

家庭や学校が、コンビニやハンバーガーショップみたいになっちゃったら
嫌だなぁ~と思うんですよ。

対人的スキルって、相手が自分とは別の独自の心を持っていることを理解することから発展していきます。
でも、自分の心ではないマニュアルに基づいて行動する人の態度から、
心を推測しようがないですよね。

私が子どものころの大人は、もう少し、気持ちや考え方や行動が
その人らしくてわかりやすかった気がします。

子どもなりに、いろんな人がいて、いろんな考え方があるんだな、
親によっていろんな対応だな、学校の先生たちもそれぞれ信念やら、それぞれ個別の愛情表現やらあって、揉めごとにまきこまれながらも自分で解決して強く生きているんだな……と納得していました。
そうやって、きれいごとだけじゃない世界で、
たくましく生きていく大人の姿を見て、自分も、
いずれそうやって生きていくんだな~と
感じていました。

子どもにこのようなことをするといい、子どもはこう育てるとよくなる、こうすれば賢くなる~というテクニックを伝授する方法はちまたに
溢れています。

これって、人間相手のものですから、
子どもだって人間ですから……

「こうすれば彼女に好かれる」とか、「このプレゼントを贈れば、彼氏に振り向いてもらえる」とかいうたぐいの
人の好悪の感情や個性やテクニックを施す側の人間性なんかを
無視した上での、
良さげなアイデアに過ぎないんですよね。
そこで、テクニックにだけ走るということは、
『ストーカー』のような一方的なまなざしで、
「雑誌に載ってた通りのプレゼント贈ったのに、彼女が振り向いてくれない、むかつく~ボコボコにしてやりたい」
って感じるのと、似たりよったりでもあるのです。

子どもに何かするとき、大人は、もっともっと、
自分の立ち位置やまなざしのあり方について、
きちんと考える必要があると感じているのですよ。

こういうことって、どうでもいいことじゃなくて、たとえば、
結婚相手から、「家事をテキパキこなして、お金ももうけてくれ、自分に反抗しない完璧な嫁を作り上げよう」なんて考えのもとで、
あれこれテクニックを施そうと構えられたら、たまらないですよね。
単に頭の中で考えているだけ………
といったって、いい気がしないし、そこで、自分らしく快活にこの人と生きていこうなんて気持ちはとうてい起こりませんよね。

子どもだって、同じだと思うんですよ。
親や教師が自分をどのように捉えているか、

それがストーカーや、理科実験をする人や、利益を上げたい会社の上司みたいな
まなざしで、子どもに接するのか、

自ら成長していく子を愛情を持って適度にサポートするのか

そのちがいは、変わらないようで、
ものすごく大きいものだと思うのです。


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