虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

長所に注目!短所は心に留めておく程度に

2019-05-22 22:10:54 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

今日は1歳後半の★くんと☆くんの初めてのベビーレッスンの日。

 

弟である★くんのレッスンではあるのですが、

★くんのお母さんからは、

「発達障がいはないようだけど神経質で何でも人のせいにしてキレがち」という

困ったちゃんの数歳上のお兄ちゃんについて相談をお受けしました。

 

わたしは直接会ったことはないので、お兄ちゃんについて

よくお話しをうかがうくらいしかできませんでした。

 

が、レッスンを初めて少しすると、わたしはお兄ちゃんが困ったちゃんになっている原因についても

それを改善していく方法についても

何となくわかったような気がしました。

 

どうしてそんな気がしたのかといえば、

★くんのお母さんの言動や考え方の癖のなかに

子どもを困ったちゃんにさせる要素がたくさん潜んでいるように思ったからです。

 

★くんのお母さんは礼儀正しくて人の良さそうな常識的な方です。

子どももとても可愛がっています。

 

そんなステキなお母さんではありますが、わたしがちょっと問題だな、と感じたのは、

次のような内容です。

 

★くんはまだ1歳代だとはいえ、とても集中力がある子です。

ボール転がしやボールを回転させるおもちゃで遊ぶ様子を見ていると、

何度も何度も目的を定めてスタートして、最後まで見届ける熱心さから

今後の思考力の伸びが期待できました。

 

また情緒が安定していて、集中して真剣な顔をしている時以外は

いつもニコニコして可愛らしいことこの上ないのです。

 

しっかりハイハイした後で歩きはじめたそうで

「(運動面で)少しゆっくりさん」というお母さんの弁でしたが、

椅子の上に乗ってバランスを取ろうとしたり、

重い物を持ち上げて移動しようとするなど

自ら身体を使うさまざまな活動にチャレンジしようとしていて(同時に多動っぽくもなく)

運動機能の発達も順調そのものです。

工作の活動でも、チョコンと椅子に座って

長い時間、しっかり関われていました。

わたしはこの子の目の使い方や何をするか目的を定める様子、

最後まで見届けて理解した上で再び取り組む姿、注意散漫でなくじっくりやりたいことに取り組み、それをもとにして

次の活動を選ぶ姿、他の子との関わり方などから、

「思考力」に強みを持った考えることが好きな子だろうと感じました。

そして、それをお母さんに伝えました。

 

その後、いっしょに遊んでいた☆ちゃんについても

感じたことをお母さんに伝えました。

☆ちゃんは手と目を協応させることが上手で、頭を使うことと身体を使うことを同時に行うことが

できる器用な子のように見えました。

「何をしようかな」と考えながら、右手にも左手にもボールを持っていて、

瞬時にその両方を玉を入れる口に投入したかと思うと、

次に何をしようかとそれ以外のアイテムをさっさと持ってきて

うまい具合に遊びに加えます。

「運動も勉強もどちらも得意」という子にありがちな

器用さだと感じました。

おもちゃを介してニコニコ笑いながら他人に働きかけて、

上手に遊びを作りだしていく姿

からは創造性の豊かさや社会性の高さも感じられます。

 

★くんは、ひとつのことに集中しはじめると、

いったん外への関心を遮断して、それにじっくり取り組む子です。

☆くんは、同時にいくつものことをしながら集中できて、

外のものも創造的に取り入れて遊ぶ子です。

そのどちらもそれぞれが魅力的ですばらしい個性です。

 

でも、★くんのお母さんは☆くんが運動も得意そうという話を聞くと、

それで頭がいっぱいになってしまって、

★くんが得意な物事にしても、

☆くんはけっして運動が苦手なのではなく自分から積極的にさまざまな

身体を使う活動に取り組んでいるという事実にしても

どこか遠いところへ行ってしまったようです。

それで、★くんの欠点であるかもしれない(とお母さんが思っている)

短所の運動を伸ばすことばかり、

「どうすればいいですか」と心配そうに相談しておられました。

 

わたしは、「どの子も長所があって、短所があります。

短所があることで、長所が守られているという面だってあります。

最初の時点では、たいていの子が長所も短所も同じような割合なんですが、

その後、親御さんが、その子の長所に注目しがちな性質でしたら、長所の割合が大きくなって

短所は底上げされて小さくなっていくでしょうし、

親御さんが短所にばかり注目して、長所はさらっと流しがちでしたら、

短所が膨らんで大きくなり、長所の割合はだんだん小さくなっていくはずです」

と伝えました。

 

子どもが困ったちゃんぶりを発揮するのには、

時期や環境や本人の問題やその他のさまざまな

理由が複雑に絡み合ってるでしょうから、

それをお母さんの言動や考え方のせいだと決めつけるのは

まちがっていますよね。

 

でも、どの子にとってもお母さんという存在は大きいですから、

お母さんが子どものどの部分にスポットライトを当てて、

どの部分を無視するかによって、

子どもの困った行動はだんだん消えていくこともあれば、

こじれにこじれて激しいものになることもあるな、と感じてもいます。

 

★くんのお母さんは心配性で

良いことと悪いことがあると、どうしても悪いことの方ばかり

考えてしまうそうです。

まだ1歳の★くんに対して、運動能力のことを気にかけてしまうのは、

★くんのお母さんが小学生の頃、

運動が苦手でいじめられている子を目撃したことが原因なのだとか。

子どもの頃に見た光景は心に深く刻まれますよね。

 

とはいえ、

子どもは「お母さんの目に自分がどのように映っているのか」「お母さんが自分のことをどのように感じているか」

を参考にしながら、自分の内面にあるものを育てていきますから、

子どもの短所にばかりに注目していると……

(★くんの場合、まだ短所にもなっていないような未知の不安要素ですが)

自分に自信が持てなくなって、短所だけが目立つようになってしまうかも

しれません。

 

幼い子たちの世界には、心配とか不安といったものは

あまりそぐわないものだと思っています。

小さな身体にそんな重荷を負わすわけにはいきませんよね。

 

子どもの長所や魅力的な点について

もっともっと知ろうという気持ちを大事にして、

短所については

心に少し留めておく程度でいいのではないでしょうか。

 

★くんとの関係作りのなかで、

子どもの性質への焦点のあて方を学んでいくと、

自然と★くんのお兄ちゃんとお母さんの関係もいいものになっていくのではないかな、

と思いました。

 

 


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