虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもが思い通りに育たないのは、育て方を失敗したため?

2019-12-28 20:45:24 | 子どもの成長

世の中には正しくて善意に基づいた子育てアドバイスがごまんと溢れています。

また園や学校や習い事では、毎日のように、

「そこの場で共有されている常識」を耳にすることでしょう。

子育て中のタレントのブログやネットの掲示板では、子育て中のママはどのように

振舞うべきか厳しい意見が飛び交っています。

 

そうやって母親のもとへ大量に押し寄せてくる情報は、どれも一理あるし、

子育てが順調な時には、日々の指針にしたり、問題を解決したりするのに

役立つ便利なもののはずです。

 

でも、順調とは言えない時……

子どもを育てていれば、否が応でもしょっちゅう遭遇する事態ですが……。

つい必要以上に子どもを叱り過ぎてしまったり、

理想の親像、子ども像と現実とのギャップに苦しんだりしている時期。

それまで何気なく取り込んでいた情報からまるで毒素でも流れ出しているかのように

内面を蝕まれていくようなことが起こりがちなのではないでしょうか。

 

子どもの言動が手にあまるような場合、内面化した多くの情報に責め立てられて、

子どもの気がかりや問題のすべてを、自分の育て方の失敗と結び付けて考えて

おられる方はたくさんいらっしゃいます。

 

でも実際に親御さんに会ってみると、どの方も9割方はきちんと子どもに対応していて、

罪悪感や失敗感は不必要という印象があります。

必要なのは、子どもの個性に添って、ほんの少し接し方を微調整すること、

修正するにしろ自分のあり方のだいたいに自信を持つこと、

子どもの育ちの道筋の大きな流れを把握して、うまくいかない状態に不必要に

うろたえないことではないでしょうか。

 

子どもによっては唖然とするようないたずらを繰り返す子もいるし、

かんしゃくや駄々をエスカレートさせていく子もいます。

年中、文句ばかり言ってやる気がない子もいるし、

激しく動き回って、トラブルばかり起こす子もいます。

自分の言い分を通そうとして長い時間ごね続ける子もいるし、

不安や緊張が強くて、新しい活動に頑として取り組もうとしない子もいます。

 

そうした子と接していて経験的に言えるのは、

子どもの困った行動の多くは接し方を変えたり、十分に甘えられるような時間や機会を

設けたり、過干渉を減らしたり、子どもの長所や強みにスポットライトを当てることで

改善するけれど、だからといって、今、子どもの問題に悩んでいるのは、

それまでの過去の失敗の結果でもないということです。

 

わたしがこうした意見のよりどころとしているのは、

「たくさんの子どもたちと接する機会がある」という点と

「今、困った状態にある子と非常によく似た時期を経た子が、

その数カ月後、1年後、数年後には、

どのように成長していったのか目にしたことがある」という点で

培った勘のようなものです。

が、それは、子どもの言動に途方に暮れている親御さんが感じたり考えたり

判断したりしている内容と、かなりずれがあります。

 

子どもの問題行動がエスカレートしている時、たいていの方は、

「叱りすぎているのでは」「これまでの接し方が間違っていたのでは」と

親の自分にその原因があるのではないかと悩んでいます。

でも実際にそうした子とじっくり付き合ってみると、子どもの気質の側に因があって、

親の叱り過ぎや接する際の悩みを引き出しているように見えるのです。

 

周囲を疲労困憊させるほど困らせる子には、

発達に偏りのある子もごく一般的なもあるでしょうが、

どちらにしろ、際だって魅力的な面を持っている場合がほとんどです。

知能がとても高かったり、美的な感性が優れていたり、好奇心が強く科学への関心が

強かったり、エネルギッシュで粘りがあったりするのです。

繊細で優しい気持ちを持っていたり、

きちんとしよう完璧であろうがんばろうという気持ちが人一倍強かったりする子も

多いです。

わたしが教室で見かける親を困惑させる子のほとんどは、

発達障害による育てにくさがあるか、ハイリーセンシティブな子か、

ギフテッド(ハイリーセンシティブな子や発達障害の子と重なる部分を持っている

ことが多い)の子のいずれかの特徴を持っているように見えます。

ギフテッドは、先天的に平均値よりも顕著に高い能力を持つ子たちのことです。

 

ギフテッドの子どもたちは、神経の感受性が増すことによって通常の人間より

刺激を生理的に強く経験する特徴を持っているとされています。

こうした刺激に対する並みならない反応をすることは、OE(過度激動)と

呼ばれています。

ギフテッドの子らのように高い能力を持っているわけでなくても、

ハイリーセンシティブな子たちは、よくこのOEという精神状態にあります。

 

ポーランドの心理学者、精神科医、詩人であるドンブロフスキは、

OEという平均以上に敏感な精神状態を5つの分野に区分けしています。

 

1精神運動性OE

落ち着きがなく頭の回転が速い印象を与える。話が一気に飛躍する、

頭が働いて眠れないなど

 

2. 知覚性OE

神経質さ。光、音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応する。

美的感覚にもつながる。


3. 想像性OE

隠喩などの詩的表現に優れる。「注意力散漫」と見られる。白昼夢を楽しむ。


知性OE

広く知られているギフテッドの特徴。知識を渇望し、疑問は研究し、理論的な分析や

真実の探求を愛する。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、

頭脳パズル、知覚ゲームを好む。


5. 感情性OE感情の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示す。

より楽しみ、より悲しみ、より怒り、より驚き、より恐れる。深く感情移入し、

愛着心、責任感、自省意識も非常に強い。

 

子どものOE過度微動が強ければ、育てる親にすれば、

日々、へとへとに疲れ果ててしまうことは想像できます。

でも、こうしたOEの強い子たちの優れた面に光を当てて、

もがき苦しみながら成長していく姿に寄りそい、創造性や強い探究心を発揮する場を

保証してあげるなら、思い通りに育たない不全感は、思った以上の、

想像できなかったほどすばらしい個性の面白さに変わっていくのだと感じています。

また、実際に教室で、そうした姿を目の当たりにしています。


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