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虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

お正月の読書三昧(『ギフテッド 天才の育て方』など) 1

2011-01-02 13:06:23 | 本の紹介
お正月といわず、年がら年中、活字中毒気味の生活をしているのですが、
取りあえず主婦なので、家事や仕事に気兼ねしつつ、こそこそ読んでいるもんですから、
何も思い煩わず、読みたいだけ読みまくるお正月の読書は、毎年、楽しみにしているものでもあります。記録まで取っています2008年2009年2010年お正月の読書三昧

年末から読みはじめていた本もあるのですが……今年は次の本を読みました。
どれもとても面白かったです。何冊かは、今年、一年の自分の指針となる本でした。これからの記事の中でぼちぼち紹介していきますね。
(★マークは、私の個人的な読後の感想でランク分けしています。今の自分の興味でつけているので、★3つのものもかなり良書でした。)
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★★★★★『「育てない」から上手くいく』  桜井章一  講談社 

★★★★『奇跡の教室 伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀』 伊藤氏貴  小学館

★★★★『メタ認知 学習力を支える高次認知機能』三宮真知子 北王路書房
  
★★★★★『プレイセラピー 関係性の営み』 ゲリー・L・ランドレス 日本評論社
                            
★★★★★★『ギフテッド 天才の育て方』(天才は片寄っている!!発達の凸凹)
杉山登士郎 岡南 小倉正義(著)  学研

★★★『数学と算数の遠近法』    瀬山士郎   早川書房

★★★★『手に取るようにNLPがわかる本』 加藤聖龍  かんき出版

★★★★『「いい人に見られたい」症候群  代償的自己を生きる』
 根本橋夫 文藝春秋

★★★★『困っている子を支援する6つのステップ 問題行動解決のためのLSCI(生活空間危機介入)プログラム』藤野京子  

★★★★『発達障害がある子のための「暗黙のルール」マナーと決まりがわかる本』
ブレンダ・スミス・マイルズ 明石書店
★★★★★『発達障害チェックシートできました  がっこうのまいにちを ゆらす・ずらす・つくる』すぎむらなおみ+シートン  生活書院

★★★『子どもの発達臨床心理』岩川淳 杉村省吾 本多修 前田研史  昭和堂

★★★★『嗜癖する社会』AW・シェフ  誠信書房
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『ギフテッド 天才の育て方』は、
あいち小児保健医療総合センター診療科部長の杉山登士郎氏らが、
新しい特別支援教育の在り方について新たな可能性を探っている興味深い本です。

能力の峰を持つことが、ほかの領域の谷をもつことと一体であることはまれではありません。アインシュタインが、国語領域で芳しくなかったように、
天才はどこかに異常を抱えていることが多いのです。
能力に凸凹を持つ子らは、認知特性への配慮と適切な教育によって
その才能を開花させることができます。

著書の杉山氏は、特別支援教育の専門性の低さと、
通常教育を担当してきた教師に、時として見られる
特別支援教育への言われなき蔑視を痛感したそうです。

特別支援教育とは、多動な子、身勝手な子、知能の低い子、学習ができない子のお守りをしているだけ、といった感想とも本音ともつかない言葉が漏れるのを、一度ならず聞くことがあったそうです。

「もし、このような偏見が行き渡っているとしたら、とんでもない誤解で、
特別支援教育は最も専門性を必要とする教育の領域であり、広がりをもつものである。ハンディキャップのある子も、天才児も、いわゆる健常児もすべて、多かれ少なかれ個別の教育的配慮が必要な領域をもつことにかわりない」

「特別支援教育の発想と経験はその意味で、わが国の画一的と呼ばれることが多い教育に革命をもたらす可能性をもつものである」
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という杉山氏の言葉は、日頃、教室の子どもたちと接する中で、
ひしひしと感じていたことなだけに、
強く心に響きました。

虹色教室には、発達障害の診断を受けている子たちもたくさん通っていて、
そうした子たちの中には、ギフテッドと言えるような高い知能や創造性を持っている子が少なくありません。

またIQがボーダーラインにいる知能の面でのゆっくりさんたちも、
独創性が高く機械を組み立てるような作業に秀でていたり、
芸術的な表現にその年齢のレベルをはるかに超える熱心さと能力をしるしたりします。
親御さんが「この子は何も優れた面がない」となげく
IQもCQもEQも低いと見られる子が、
非常に高いSQ(精神的知能)を持っていて、どんなに辛い境遇にあっても
うらんだり卑屈になったりせず、親や周囲の人たちに深い愛情を与え続ける能力を持っていることもよくあります。

そうした発達に凸凹がある子たちだけでなく
ごく普通の定型発達の子たちも、それぞれの子がその子固有の特別な才能を持っていて、バランスのよさや適応のよさから伸び悩む一面も持っています。

定型発達の子たちは、いつもより広い視点から物を眺めようとするので、
大人が子どもをいっしょくたにしてコントロールしようとすると、
即座に大人の世界の欺瞞を見抜いて、
反抗的になったり、怠慢になったりしはじめます。

一方では、大人たちの期待に過剰に適応して自分らしさを育て損なう子、創造性や社会性の自然な発達を犠牲にする子がいます。
(前回記事にした自尊感情が低い子というのは、
あれだけ比率が大きいのですから、
定型発達の子たちもたくさん含まれているということになります。
ごく普通の子たちが、育ちの中で、どんどん自尊感情を失っていくということでもあるのです)

発達障害の子は、「何が何でも一番になりたい!」
といった一番病とも呼ばれる性質を持っているのですが、
定型発達の子たちは、一番になるより友だちと協調することを選んだり、
競争することの意味を問うたりするので、
競争させることだけで子どもを操ろうとする大人の思惑からそれていきます。

そんな子どもたちひとりひとりの成長を見守っていると、
杉山氏のおっしゃる

「特別支援教育の発想と経験はその意味で、わが国の画一的と呼ばれることが多い教育に革命をもたらす可能性をもつものである」

という言葉が、本当に重要なものに思えてきます。
お正月から、よい本に出会えました。

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1 コメント

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Unknown (かろーら)
2012-04-11 11:31:30
「特別支援教育は最も専門性を必要とする領域であり、広がりを持つものである。ハンデイキャップのある子も、天才児も、いわゆる健常児もすべて、多かれ少なかれ個別の教育的配慮が必要な領域であることに変わりない。」

これを実現するには、フィンランドのように、
勉強を教える先生と、部活等その他のお仕事を
する先生とを別々に採用するしかないのではないでしょうか?

あまりにも、教師の仕事が広範囲にわたっていると感じています。

教育システムの抜本的改革、構造改革?でしょうか?

その問題は別として、このような文章を読むと
胸があつくなります。

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