不定期の算数クラブの様子です。
遠方から来た女の子が暑さにまいって半べそをかいて教室に着いたのに
帰る時は満面の笑顔で、「このまま、ここに泊っていきたい」と言っていました。
自由に活動を選ぶ時間に、午前の部の男の子たちはブロックで海賊船を作ったり、
ロジックパズルや科学手品をしたりして遊びました。
「長くて大きな海賊船が作りたい」「宝がたくさんいる」「島を作らないと……」
「ガイコツの絵が描いてある布(帆)みたいなのがいるよ」と意見がアイデアが
出るたびにだんだん大掛かりな作品になりました。
<「大きい、中くらい、小さい」の3つのサイズの帆の簡単な作り方>
紙を半分に折って切ります。
一方の紙を片側が大きくなるように折って切ります。
このように切ると、2回折って切るだけで、<2分の1、2分の1よりも小さく
最も小さいサイズよりも大きい、最も小さいサイズ>の3つのサイズの紙ができます。
子どもたちにとって帆をブロックで作った棒に挟む作業は、
ちょっと難しくて楽しいものだったようです。
28+□の繰り上がりのある計算を瞬時に言う練習をしています。
どの子もコツをつかんで、上手に答えることができていました。
午前、午後どちらのレッスンの子らも、
『きらめき算数脳』の文章題に意欲的に取り組んでいました。
目新しいおもちゃで遊ぶ時と同じくらい夢中になって、
「次はぼくが解きたい」「わたしが解きたい」と手を挙げていました。
算数の課題をする時、「やってみたい子?」とたずねると、
ハイ、ハイと調子よく手を挙げる子らと、「できなかったらどうしよう」という表情で
尻込みしている子がいました。また、問題がどんどん難しくなっていっても、
「やりたい」と手を挙げ続ける子と、それまでミスもなく正解していたけれど
他の子の解く様子を見て、「これは難しそうだから、もうやめておく」と
告げた子がいました。
レッスン後、子どもたちの学習の様子を見ていた
親御さんたちから、「家でもきらめき算数脳のような問題を進んでやりたがるものの
少し難しそうな問題にぶつかると、今日のように、難しそうだからやめておく……と
言うのですが、どう対応したらいいでしょう?」とか、
「のんびりしたタイプなので、つい先まわりしてあれこれ言い過ぎてしまうためか、
自分で考えようとしません。難しそうだと思うと最初からやろうとしないところも
あります。どのような声かけをしたらいいのでしょう?}
といった相談をいただきました。
ひっぱりますが次回に続きます。
少し難しそうな問題にぶつかると、難しそうだからやめておく……と言う子に
どのように対応すればいいのでしょう?
毎度、同じような答えで悪いのですが、子どもの気がかりについての問いの答えに
「これ」という正解はなくて、子どもの性質、能力、発達段階などによって
一人ひとり異なるのではないか、と考えています。
この日、相談をいただいたAちゃんの場合、子どもの発言が大人の意向と違っても、
その子の言葉を言葉通りに信頼してあげるといいのではないかと感じました。
つまり、本人が「やめておく」と言うのなら、
今は「やめておくことが賢明な判断なんだろう」と受け止めるということです。
算数の学習の前、『LASER MAZE』という頭脳パズルで遊んでいた時のこと、
どの子もはじめて触れる問題でわけがわからないようでした。
が、あちこち課題の鏡を置いてみるうちに、たまたま置いた位置が正解でした。
すると、Aちゃんの表情が、「あっ、そうか」と納得したように輝きました。
そして、次の問題を解く時は、わかったことを利用して丁寧に推理する姿がありました。
また他の子らが解いている時も、ただ眺めているだけでなく
自分の頭でも一生懸命に考えていたようで、
「どうしてうまくいかないんだと思う?」とたずねると、
Aちゃんは、毎回手を挙げて、的確な答えを言っていました。
工作でカゴを作っている時、
こんなことがありました。Bちゃんがカゴを飾るリボンを貼ってみると、
長さが少し足りませんでした。
子どもたちに、「Bちゃんは、ちゃんとこんな風にリボンをカゴに巻いて
ちょうどいい長さになるように測って切ったのに……貼ってみると
長さが足りなくなったの。どうしてだと思う?」
とたずねました。するとAちゃんが手を挙げて、
「カップの真ん中らへんの周りの長さの方が上の方の
まわりよりも短いからでしょう?」と答えました。
他の遊びの場面でも、わたしが、「どうしてだと思う?」と問いかけると、
Aちゃんがすかさず手を挙げて、「○○だから?」と真剣な顔で答えていました。
そうしたAちゃんの態度と言葉から、Aちゃんが
何をする時も、自分の頭と心をしっかり働かせている子で、
理解したことを言葉にしたり推測したり分析したりするのが好きな子であるのが
よくわかりました。
また知的好奇心が強くて、積極的に考える活動に参加しようとする子でもありました。
ただその一方で、一番になって目立ちたいという気持ちや競争心は薄く、
自分にそれができそうか、本当にやりたいのか、慎重に判断してから
するかしないか決めていました。
Aちゃんのお母さんは、Aちゃんが洞察力が優れた知的好奇心の強い子であるのを
理解しつつも、じっくり考えていく持久力が足りないのではないか、と気にかけている
ようでした。
こんな場合、成長を見守るべきか、適度にプッシュすべきか迷うところですよね。
Aちゃんのお母さんは取りあえず参考に……とわたしの考えをたずねはするものの、
子どもとどう関わるか、自分自身でちょうどいい加減をわかっている方のようでした。
ですから、この質問をわざわざブログで取り上げなくてもよかったのですが……。
でも、Aちゃんという個別のケースについて、
どんな点に注意を向けて、どう判断したのか書くことは、
「こういう子にはこのように対応します」とひとつの一般的な正解を示すより、
別のさまざまなケースについて思いを巡らすのに役立つんじゃないかな、と
考えています。
この日、いっしょにレッスンしていたCちゃんは、
難しい問題になってもどんどんチャレンジする意欲的な子でした。
ただ取り組む前に推理したり分析したりすることはないようで、
とにかくやってみて失敗してから、どこがまずかったのか気づいて、
それから正しい方法で解いていました。
失敗にはとても強くて、間違えると、何とか克服しようとやる気が増すようでしたし、
失敗した後に集中して考える姿がありました。
それに対して先に記事にしていたAちゃんは、取り組む前に慎重によく考えていて、
何もしていない時も気になることをあれこれ考えているようでした。
そのせいで「難しそうだからやめておく」ということになるのですが、
だからといって、AちゃんとCちゃんのどちらのやり方がいいというわけではなく、
それぞれに一長一短がある個性の問題と捉えるべきなのでしょう。
Aちゃんの場合、「やめておく」と言っていったん問題から離れても、
時間が経つと、自分から「あの問題をやってみたい」と言うタイプでした。
そうして自分のペースで難しいものにチャレンジしていく気持ちを
後押しするのは、信頼されることと、新しい知的好奇心を刺激するひらめきを得ること
だと思います。
「難しそうだからやめておく」という子はAちゃんのように
考えることを苦としない子もいますが、
考えることをめんどくさがったり考えるのが苦手だったりする子もいますよね。
そうした子には、ただ成長を待って見守るだけでは
ダメかな、と思っています。Aちゃんにしたように、「やめておく」という言葉を
言葉通りに受け止めるのも、ちょっとまずいかもしれません。