『子どもの学力の基本は好奇心です』(汐見稔幸著 旬報社)という
幼児や小学生の子を育てている親御さんにお勧めしたい本があります。
読むうちに子どもの教育に関することがシンプルに整理されて、
迷いが晴れるかもしれません。
この本にこんな話が載っていました。要約して紹介しますね。
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東京大学の数学科の教授があるインタビューのなかで、東大の数学科の学生と
アメリカの大学の数学科の学生と、どっちが優秀かという話が出てきたそうです。
その先生は入学時点では東大の学生が優秀かもしれないが、
4年間教育すれば、ほぼ例外なく逆転すると言ったそうです。
なぜ東大の学生が伸びないのかといわれ、先生は
「感性が育っていないからだ」と答えていたそうです。
こういう感性とは、「なんでだろう」とかあ「フシギだなぁ」とか「こういうものを論理で
あらわせないのかなぁ」というように、
なにかに感じて、そこに問題をみつけ、こだわっていくことらしいです。
数学とは、計算が複雑になったものではなくて、さまざまな現象を論理や数式で
あらわす、たとえば美意識というものを論理化できないかとか、こういうものを美しいと思う人と思わない人と
どこがちがうかを数式であらわせないなどと考える学問。
その根っこは不思議がりおもしろがる感性です。
「感性をそだてるためにはどうしたらよいですか」という質問に、
その先生は、「それは簡単だ。小さいときにあまり勉強しないことだ」といったのだとか。
幼いころから受験勉強のようなことをさせられて、正しい、間違い、という紋切り型の思考をおぼえれば、
ワンパターンにしかものごとが考えられなくなり感性の芽をつんでしまうそうなのです。
豊かな感情をたがやし、豊かな感情をたがやすこと、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」
といった好奇心が学力を伸ばす原動力なのです。
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今日は2歳になったばかりの子どもたちのレッスンでした。
そんな幼い子らも、、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」に
突き動かされるように活動しています。
ひとりひとりの子の発しているものをどう感受するか、
どのようなフィードバックを返していくといいかを親御さんに伝えています。
たとえば、2歳のAくんは、お友だちのBくんがお母さんが作ってくれたトンネルに手を伸ばす度に
「だめぇ、こわれちゃう。こわしちゃだめぇ」と大騒ぎしていました。
遊びを観察していると、電車をぴったりそろえて並べて、
それはうれしそうにしていました。
「数や形やサイズがきちっと秩序だった並び方をしているのがうれしそうですね」
と言いながら、Aくん同様に秩序を好む感覚が優れている子の親御さんが
子どもにどんなブロック作品を作って遊んであげていたのか
駅の一部を作って見てもらいました。
すると合点したAくんのお母さん、下のような歩道橋つきのトンネルを作ってあげました。
Aくんは大喜びです。
「だんだん高くなってる」とか「同じ長さでそろっている」とかいった
目で感じとる美しさを実感していると、
数学的な感性も育ってきますね。
工作タイムに作った船です。
引っぱるとビーズがカラカラ動きます。
気になって透明のコップ部分をはがしてしまい、
青いポリひもを振りながら、Aくんは「雨!」と命名。
お友だちのBくんは、ハンドルを回すとボールがのぼっていく仕掛けが
面白くてたまりません。
自分で何度も回しながら、ボールをつかまえてみたり、段の途中に乗せてみたりして、
「不思議だなぁ」という表情をしながら熱心に遊んでいました。
こうしたささやかな遊びを通して、子どもの好奇心ははぐくまれていきます。