マハーバーラタ戦記

2023-11-16 01:03:00 | 古典芸能
芝のぶさんの圧倒的な存在感!見事な○○落ち!

丑之助くんの、とても子役の演技とは言い難いくらい、めちゃくちゃ役者魂を感じる見事な台詞回し!

そして、何と言っても、菊様と隼人氏の圧倒的なイケメンぶり!眼福眼福!

名前は世界史で学んだけど、内容は全く知らないインドの大叙事詩マハーバーラタの歌舞伎化。

粗筋も予習せず、筋書も購入しなくてちゃんと理解できるのか不安はありましたが、なんとなしに太王四神記に似た登場人物の設定だったのでまだ分かりやすかった。

王位継承権を巡って2つの血族の対立を軸に、神様の駆け引き、太陽神と人間の子供の菊様演じるカルナと隼人氏演じる異母兄弟のアルジュラの、それぞれ異なる使命を持って世に生まれ、そして運命の戦いが待っている。

どうやったら戦争を終わらせることができるのか?といった戦争に対する強いメッセージ性があり、三幕目はウルウルしまくってしまった。

大叙事詩の歌舞伎化。菊様の想いが伝わってきて感服してます。

ぶっちゃけさ、神様が登場するんだけど、それがまぁ〜身勝手な神様なんだよ。

世界が戦争で滅びるのを止めるために慈悲の心を持つカルナを産ませ、武力で決着つけることを使命としたアルジュナを産ませる。神様なんだから、人間をロボットみたいに扱うなよ!天界で黙って見とけや!と言いたくなる設定なのと、

慈悲vs.武力の戦いで、果たして2つの血族の王位継承権はどちらの手に?といった設定が実に良く出来てる。

一幕二幕が少し間延びするが、三幕目が見せ場だらけで、もう涙涙。

同じ血族同士が血で血を洗う戦に対する矛盾。慈悲深いカルナのために邪魔者を抹殺したいという身勝手な想い、父親を助けるために子供が犠牲になったり、

ここで描かれている諍いは、人間の身勝手だけでなく、冷静に観たら神様の身勝手さでもあるんよ。結構無慈悲な神様。

別に、脚本が悪い!と言いたいんじゃなくて、神様を社長や国のトップに置き換えたら、リアル世界情勢であり現代社会だと思うんよね。

その戦争、誰のための戦いやねん!?いったい誰得やねん!?って言いたくなる。

そういう意味でも、マハーバーラタの歌舞伎化や舞台化は、とても意義あることだと思った。


神様の衣装の絢爛豪華さ。と対照的に国民は着物といったコントラストが歌舞伎らしくて良かった。この前の「水滸伝」みたいにオール中国風衣装ではなく和テイストな感じが、衣装だけでなくシーンにも取り入れられていて、まるで鳴神?黒塚?みないなシーンがあった。盆も多様し、スペクタクルな作品だった。

神様の駆け引きがあったり、神様が人間に身籠らせたり、我が子を川流したり、身内の陰謀など、最後は人間に任せて神様は寝て過ごす…など、

人間だけでなく神様まで身勝手な振る舞いに、ギリシャ悲劇と変わらんし、古事記も旧約聖書教も一緒なのが、それぞれ違う国の宗教なのに、どこの神様も傲慢やん!?そんなに人間に試練を与えて楽しいか?って言いたくなった。

ま、神様ではなく人間が書いた本ではあるが、神様の扱われ方が、ブレヒトの「セツァンの善人」に出てくる神様と一緒なのが、ある意味というかそこが面白い。

異父兄弟の運命の決闘シーン。妖怪?の女と人間の男との間に生まれた子供が13年後に父親を助けようとしてカルナに殺されるシーンとか、芝のぶさんが敵に倒され呪いの言葉を吐いて勢いよく階段落ちするシーンとか、第三幕は見どころいっぱい見せ場いっぱいで感動しまくった!


ということで、本来観る予定にしてなかったのですが、浦井氏のトークショーの日、実は飛行機を予約していたのですが、新国立劇場から成田空港までの時間しか計算してなくて、チェックイン受付終了時刻を時間に入れるの完全に忘れていたんですよ。トークショーが16時40分までに終わらないと19時のチェックインまでに間に合わないことが判明。31日の岡本さん参加のトークショーでは17時近くまでかかったということで、トークショーを取るか飛行機を取るかの選択で、はいトークショーを優先にし、その日は新幹線で帰ったわけであります。

飛行機は、キャンセルしても払い戻しされないので、だったら、追加料金払ってでも日にちを変更して飛行機を乗ることにし、はい、歌舞伎を観るために東京に来たわけであります。結局、東京にいく方がお金がかかったけどね…。

でも、全く後悔してません。観る価値ありました。

菊様の立ち役は様になる。女形は立ち役を微塵も感じさせないくらい美しいのに、立ち役も違和感なく舞台に立てる方は今の歌舞伎界では菊様くらいじゃないかい?稀有な存在だと思う。

カルナと対照的な人物のアルジュナ役の隼人氏も血気盛んではあるが、同じ血を分けた従兄弟姉弟同士が戦い合うことに違和感を感じる役どころでもある。この気付きを描いているのが良い。見た目のイケメンぶりに加えて、的確な表現力が素晴らしい。

芝のぶさん演じる鶴妖朶王女は、敵に領土奪回されんがために戦をふっかける。鶴妖朶王女は、カルナには戦に加わらせまいと黙っていたのに、カルナは戦争を察知して戦に加わる。そして…。

芝のぶさんの存在感が断トツで圧巻!内心恨みたっぷりなんだけども、カルナに対しては慈悲深さがあるのに、敵に対する恨みが勝ってしまうそのさじ加減が絶妙だった。カルナに対する慈悲深さを敵に対しても持つことができたら素晴らしい女性になのに…と思わせる演技が素晴らしかった。

丑之助くんの台詞回しがめちゃくちゃ上手い!妖怪?と人間との間に生まれた男の子の役なんだけど、台詞回しだけでなく、父親を助けるためにカルナとの立廻りシーンが、もはや実の親子の立ち廻り表現ではなく、父親を慕う役として敵の菊様カルナと対決する様に、ここでもウルウルさせられた。

久々の彦三郎さんの声が、まじイケボ!めちゃくちゃ声が通る!悪役チックな役柄にピッタリな声でした。

カルナとアルジュナの母親役の米吉君もまだまだ若いのにめちゃくちゃ貫禄があった!声の出し方がイイ!壱太郎君とめちゃエエ勝負やな。

弥十郎さんの太陽神も都合がいい神様でしたが、ええキャラでした。

菊五郎さんは最初と最後しか出られていませんが、菊様と丑之助君と共演できてさぞかし嬉しかったことでしょう。丑之助君の成長ぶりに感激していることでしょう。

この作品には、戦の虚しさだけでなく、血族同士が戦い合うことの虚しさ、呪いの怖さなど、インドの昔ばなしではない、現代要素がある内容になっていて、

菊様と隼人氏の立ち廻りだけでなく、芝のぶさんと丑之助君の圧巻の演技を観れただけでも東京に来た甲斐がありました。








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