「ジャンヌ」

2013-09-29 00:18:45 | 舞台
なんか、女版半沢直樹やった。色々と興味深いものがあって、そこそこ面白かった。

ジャンヌ・ダルクって、フランスの危機を救ったのに魔女として火炙りの刑に処された悲劇のヒロインだけども、鵜山さんが描く?バーナード・ショーが描くジャンヌ・ダルクは、いわば自由思想の象徴であり、ストーリーはまさに、「半沢直樹」で描かれているような正義感に溢れた熱血銀行マンvs.悪徳上司の闘いのように、神の言葉を信じるジャンヌと彼女を取り巻く社会との争いを描いたそんな内容のように思えました。

どっちかというと、このジャンヌは役が降りてきて演じる…そんな劇的な役でなく、「人形の家」で有名なイプセンや「三文オペラ」で有名なブレヒトの作品に登場するような社会派なイメージの役柄のように感じました。

笹本玲奈さん演じるジャンヌは、それはそれは神の声にクドイくらいにまで従順で、今の社会なら爪弾きにされても仕方ないくらいの傲慢さがあり、その傲慢さが余計彼女を取り巻く社会の矛盾を浮き彫りにさせる役割を担うので、それはそれは見事なジャンヌ像でした。

本当、女版半沢直樹みたいな役で、最終回の直樹の島流しとジャンヌの火炙りに至るまでの流れがよく似てると思いました。言ってること・していることは間違ってはないけど、“出る杭は打たれる”じゃないけど、現社会では通じない歯痒さと矛盾さがどちらにも共通してるように思いました。

イプセンもブレヒトもそうなんだけど、社会の矛盾とか人間の集団深層心理を見事に炙り出した戯曲を書いているので、この時代の劇作家はよく似た思想を持っているな~と思いました。

この「ジャンヌ」のオチなんて、まさにブレヒトの「セチュアンの善人」みたいに皮肉たっぷりで、そのユーモアたっぷりな見せ方にマジ笑えました。

脚本で個人的に関心してしまったのが、ぶっちゃけ私はジャンヌは神から何の言葉を聞いたのかその具体的内容に興味があったんですが、その言葉の内容より、何語で聞いたのかが宗教裁判の審議内容になっていた点が思わず“上手い!”と思ってしまいました。シェークスピア作品みたいにキーポイントなる内容ではないんですが、的を射てる点に感心してしまいました。

そう、観るまでは、この戯曲では神の言葉に非常に関心があったんですよ。「イギリスを倒せ」と言ったのか「イギリス軍をフランスから追い出せ」と言ったのでは意味が全然違うからね。イギリスを倒せなら殺人ありきじゃないですか?でも、追い出せなら平和を主張してるからね。詳しい台詞は忘れましたが、この作品で語られた内容は平和を主張している方でした。

もし、イギリス軍を倒せなら、その神の声は嘘だと思うんですよ。倒せは確実に殺人目的やもん。そんな神の言葉なら私は悪魔の言葉だと思う。

やはりそこは翻訳家さんが上手かったのかどうかは分かりませんが、さすがノーベル文学賞を獲るだけはあると思いました。

戯曲的にも、ジャンヌを魔女か異端者かで審議する点も良かったし、極刑を免れるためのサインの見返りが神の声と反している点も良かったし、本当にジャンヌは神の声を聞いたんだと思わせるくらい、社会の矛盾いわば民主主義の矛盾を浮き彫りにしている点は非常に上手い戯曲だと思いました。

実は、ブレヒトもジャンヌ・ダルクを題材にした戯曲「堵殺場のヨハンナ」を書いていて、これはまさに資本主義経済の実体、労働者の貧困の原因を追及した内容でめちゃ共産主義色が強い内容なんですが、めちゃショーの「ジャンヌ」にも共通するものを感じました。

私にとってブレヒトは、さだまさしさんの♪雨やどり♪の歌詞じゃないですが、私が神様を信じていなかった頃に大好きな劇作家だったんですが、マルクス主義に影響されていたブレヒトもショーも、今は神様の存在を信じている私の視点から考えても二人は間違ったことは書いてないと思いました。私は共産主義じゃないですが、全部読んだ訳じゃないですが、マルクス哲学自体は間違ったことは書いてないと思います。

世の中の仕組みや流れはちゃんと見ないといけないなとつくづく感じました。分かっていて社会に流されるのと分からずに流されるのとでは覚悟の仕方が全然違うからね。

ということで、玲奈さん以外は皆男優という異色の作品ですが…

いや~、エエ声が揃った役者さんばかりでめちゃ耳福でした。舞台はやはり声が命ですね。しかもめちゃ豪華な役者陣!初めての方や懐かしい方々。この役者陣でどうして蜷川さんよりチケット代が安いのか?理由が分からない。

今日は偶然にもトークショー付きだったんですが、舞台の伊礼君を観るのは瞳子さんの「AIDA」以来だったんですが、めちゃくちゃ声も演技も素晴らしかった!でもトークショーで…イメージが…。雰囲気も喋り方も何もかもが竹内力兄やんみたいで「あ゛~↓」状態でした(涙)絶対「ミナミの帝王」の銀ちゃん、伊礼君にピッタリ!だと思う(笑)

ストレートプレイが初めてだという玲奈さんも、初めてだとは思えないくらい、何度も書きますが、ウザイくらいに神の声に従順な見事な役作りでした。その盲信さに迫力があってとても良かったです。

村井國夫さん、中嶋しゅうさん、今井朋彦さん、新井康弘さんに、馬場君など懐かしい方々、初めての大沢健君、浅野雅博さんもとても素晴らしい存在感でした。

トークショーは、客席の後ろで村井さんが見ているという異様な雰囲気の中で、伊礼君が一人ぶっ飛んでました(笑)舞台の伊礼君はそれはそれは格好良かったのに…m(__)m

トークの内容で印象的だったのは…、やはり伊礼君のそれ言っちゃいかんだろトークですかね(笑)内容は書けませんm(__)m

あとは、芝居中に歌いたくなることないか?というテーマで、ストレートプレイ畑の浅野さんに、ミュージカル畑の玲奈さんが振った時は大爆笑でした。歌いたくなるわけないじゃん!?(笑)玲奈さんって意外と天然入ってます???(笑)

神の声を聞いたことあるかというテーマの中で、今井さんがいい事言ったのに、伊礼君の「自慢ですか?」の返しはアウト!!!ダメダメ!(笑)

私はね、閃きは神の声だと思う。あ、守護霊の導きかな…?(笑)

関西は明日までです。特にブレヒト好きな方にオススメします。

今日のまとめ:バーナード・ショーの「ジャンヌ」は意外と社会派心理劇です。私は女半沢直樹だと思ったんだけどね…。どうでしょう…?
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