ローエングリン by METライブビューイング

2023-04-25 21:55:56 | シアターライヴ
この物質社会やSNS時代で真理を見出すのは困難。

ローエングリンは、ルートヴィッヒ2世が愛した作品であり理想かつ憧れの人物像。

ぶっちゃけ、粗筋を読む限り、ルートヴィッヒさん、ローエングリンのどこがいいの???と聞きたくなるような展開である。

愛する人に自分の名前も素性も告げず、聞くことも許されない。

相手には名前で呼ぶのに、相手は名前で呼ぶことも許されない。

どんな辛い過去があったとしても、ちゃんと受け入れる覚悟はあるのに…。

魔女にそそのかされなくても、名前や素性を知りたくなるのは当たり前!

愛する人といる時間は、出会う前よりも我慢しないといけないことなのか…?

私はアナタのなんなのさ!?

なんという自分勝手な主人公や!

と言いたくなる展開。

確かに音楽はいいけどね!演出も美術や装置もいいけどね!

いやいやいやいやいやいや、

実は、そんなご都合主義の、男尊女卑の物語ではなかった!

めちゃくちゃスピリチュアルでもあり、

めちゃくちゃ宇宙の愛がテーマの作品だった。

いやいやいやいやいやいや、

粗筋を書いた人、粗筋を伝えてくれた方、アカンで、ちゃんと説明してくれないと!!

めちゃくちゃ誤解を招いてるやん!!

いやいやいやいやいやいや、

めちゃくちゃ良かった!!!

そりゃ、ルートヴィッヒさん、好きになるわ!

私がルートヴィッヒでも好きになるわ!

ワーグナー、めちゃくちゃええ仕事してるやんかいさー!?


ということで、

ローエングリンは、ルートヴィッヒ2世好き人間は観ておかないといけない大事な作品なのに、実は一度も観たことがなかったため(そもそもオペラは苦手)、たまたまMETライブビューイングで上映してくれるということで、行きたいお寺さんがあったので京都まで観てきました。

10時開始で終わったら15時。急いでお寺さんに行ったよ!は、さておき、

まさかこんなスピリチュアルな内容だとは思わなかった。

どんなヒーロー像が描いているのかと思っていたら、全然ちゃうやん!

粗筋と結末だけは知っていたので、てっきりニコールのドッグヴィルみたいな展開になるのかと思いきや、全然ではないけど、傲慢かつ欲にまみれた作品ではなかった。

世間一般では、騎士道の物語で、ドイツ建国の礎となった登場人物の物語なのかもしれないけど、

私に言わせれば、これは完全に宇宙の愛がテーマの作品です。

そりゃ、名前も素性も言いたくないよ!

2人が愛し合ってさえいれば、名前も素性も年齢も外見も関係ないやん。但し、魂レベルでね。

エルザなら分かってくれると信じていたのに…。

という話だと解釈しました。

これは完全なる魂レベルのラブストーリーでもあり、世界平和を謳った物語でした。

そうなんだよ!エルザが弟殺しの罪を着せられそうになった時、名も知らない騎士に助けを請うて、実際に助けてくれたのに…。

ローエングリンにしたら、なんで今さら名前や素性が必要なんだ…ってことやもんね。

よく練られた脚本やで!

ほんま、そうやねん!魂レベルだったら、肉体を伴わないから、性別も年齢も外見も体型も職業も拘る必要がない。名前や素性なんて以ての外。

真実の愛があれば戦争なんて起こらない。

人が人を愛するのに、どうして諍いや争い、疑いが必要なのか?

本来なら要らない感情なんだよ。これらは物質主義の歪み。

ルートヴィッヒもワーグナー芸術を通して世界平和を訴えたかったんだよ!

めちゃくちゃ分かる!

エルザもさ、確かに魔女にそそのかされたところも大きいけど、愛する人の名前を呼べないって普通に辛いもんな。

ローエングリンは、騎士であると同時に思考は宇宙人でもあるわけだから、根本的に俗世間の人間とは異なるわけだよ。

エルザも最初は約束を守れてはいたけど、やはり宇宙人ではない人間だから俗世間の愛を求めるわけやん。普通の恋人同士のように。

これは男尊女卑になるのかもしれないけど、結果、真実の愛を試されたとも言えるのでラストは辛い別れになるよね。

エルザはあのまま生きていても後悔の念に苛まれて生きていられなかったと思うし、本来そういう真実の愛や宇宙の愛を学びなさい!と観客に訴えている作品ではないから、エルザの突然死は決してツッコミどころだとは思っていない。愛の死だと解釈している。

そうなんだよねー。現代の、この情報社会では、何が真実で何が嘘なのか、情報がごった返すわ、いくらでも捏造できるわで、真実を見極めることすら非常に困難。真実の愛なんて更に難しいよ。宇宙の愛なんてもっと難しいよ。

一人一人が真実の愛、宇宙の愛を学べは世界平和も絵空事にはならないけど、

私みたいにヴィジュアル第一主義なんて言ってる限り、物質主義からは逃れられない。私もまだまだ真実の愛からは遠い存在だよ。

いやー、めちゃくちゃ反省させられました。



本当に、これは、私のオペラに対する偏見と概念を覆す素晴らしい作品でした!

ヒロインが太っていても全く気にならない。見てくれなんてどうでもいい。

大事なのはハート、気持ち、表現力。ちゃんと歌声に気持ちを乗せられるか否か。役のイメージに合っているかどうかだけ。だって、魂の物語やもん。見えるものは大事ではない。

めちゃくちゃオペラの概念を覆されたよ!

っていうか、ローエングリンがめちゃくちゃスピリチュアルで、

ワーグナーがこんなに天賦の才を持った方だとは思わなかった。

ルートヴィッヒもコジマも見る目あるやん。もちろん、前妻のミンナも。

演出もめちゃくちゃ良くて、

まさか舞台が月だとは!

クレーターの中の地下世界が舞台になっていて、クレーターの穴から地球が見える背景になっている。めちゃくちゃ斬新な設定!まるでターン∀ガンダム!藁

ローエングリンは、白鳥に乗って登場するのが本来の物語の趣旨ではあるが、白鳥の模型すら登場しない。100人以上の白い衣装を着たコロス(正確には何パターンの衣装を仕込んでおり、場面によって白や黒、赤や緑にチェンジする)によって表現されている。

決して白鳥には見えないが、コロス全員が白い衣装にチェンジすることで白鳥を見立ている。一人一人が一つ一つの羽根だよね??素晴らしい発想!

クレーターの穴の外からローエングリンが、半分に分かれたコロスの中央から降りてくる演出になっていて、映画館といえどもコーラスもオーケストラの迫力が凄く、圧巻だった!

最初から最後までコロスがめちゃくちゃ良い仕事をしていた。

ライトモチーフという専門用語を学びましたが、ローエングリンが登場する時や、ローエングリンの話をする時にはプロローグの曲が流れ、オルトルートが登場するシーンでは白鳥の湖のライトモチーフ?1小節?が使われているのが印象的だった。わざとなのか偶然なのかは分からないけど。

結婚式の定番の曲もローエングリンだったことに初めて知った。

主要キャストの表現もめちゃくちゃ良くて、何度も書きますが、見てくれは関係ない。役の表現力が素晴らしかったので、ローエングリンの世界観がめちゃくちゃ伝わってきました。

特にオルトルートを演じられた方がめちゃくちゃ良かった!

オルトルートは魔女で、エルザの弟を白鳥に変えた張本人なわけだけど、ただの悪役ではなく俗世間の象徴だと言えるので、人間の内面表現がめちゃくちゃ素晴らしかった!

エルザを演じられた方は、オルトルートの方と違って優しい顔つきの方だったし、ソプラノも美しかったし、疑念がわく表現が素晴らしかった。

ローエングリンを演じられた方も、そのままやん!?って言いたくなるくらい俗世間と一線を画した存在感があって素晴らしかった。

一見、勧善懲悪ものと思わせておいて実はそうでないのがワーグナー天才!としか言いようがない。

やはり、オペラも新作オペラは除き、古典オペラは歌舞伎と同じで、粗筋を知らないと楽しめない芸術だと思った。歌舞伎だとイヤホンガイドですが、オペラは字幕がなかったら何を喋っているのか分からない。メロディーだけでは楽しめない。

昨今の古典オペラは、現代風の美術で上演されるのが主流で、日本とイタリアが古典的衣装を着て上演していると聞いたことがありますが、ローエングリンに関しては現代美術と衣装で正解だと思う。

騎士や白鳥がリアルだったらきっとこんな感想にはならなかったと思う。

舞台設定が月だったことが大きかった。

ローエングリンを観ながら、めちゃくちゃニコールのドッグヴィルがflashbackされたけど、ラースも少なからずともローエングリンに、いや、ワーグナーに影響受けていると思った。メランコリアなんてまさにそうやん。

これで、何がなんでも新国立劇場の「トリスタンとイゾルデ」観ます!