私なら、作品賞!
長澤まさみさんにも女優賞!松山ケンイチ氏にも男優賞あげる!
柄本明さんもめちゃくちゃ素晴らしかった!エゴイストと同じ俳優さんとは思えないくらいリアルに上手かった!私なら助演男優賞!
そして、綾戸智恵さんもめちゃくちゃリアリティーがあった。エゴイストの阿川佐和子さんもそうだけど、俳優畑じゃないのに演技がリアルって…。絶妙なキャスティングやね!
いやー、めちゃくちゃ良かった!めちゃくちゃ泣かされた!
ということで、予告編を見て、長澤まさみさんの間瞬きしない緊張感がある目の動きと泣きの演技に魅了されて観てきました。
まるで私のために制作して下さったと言わんばかりに、親父と過ごした最期の2年間がオーバーラップされまくってめちゃくちゃ泣かされた。
作品のテーマは、介護する側と介護される側の救済としつつも、日本に限らず全世界共通でもあろう高齢化社会における老人介護に対する社会の闇を露呈する内容でもあったので、
格差社会の歪みが介護社会にまで及んでいる日本社会の闇を浮き彫りにした本当に素晴らしい作品でした。
誰もが思うように、知的障害者を19人も殺害した相模原障害者施設殺傷事件を題材にした作品だと思ったら、原作は事件前に発表されていたので、未来を予見する内容でもあったということですよね。
予告編を見た時から、マタイ福音書の一節
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」( マタイによる福音書 7章12節)
を語られていて、てっきり宗教的救済を行おうとしたオカルト要素が強い内容なのかな…と思っていましたが、
いやいやいやいやいやいや、完全に日本社会の闇を露呈する内容でしたね。
はっきり書きますが、安倍元首相が殺害された時、殺害理由が、犯人の母親が行った宗教への高額献金に対する逆恨みだったわけじゃないですか?
国はその後、すぐに宗教に対する高額献金や霊感商法に対する規制を取り決めましたよね?なのに、昔から高額献金は行われていたし、政治家どの癒着だって今に始まったことではないのに、いくら元首相といえどもたった一人の人間なのに、
そのたった一人の人間ために国が動いたんですよ。
ストーカー規制法もそうですが、犠牲者が何人出たら国は動いてくれるんですか?という問題が孕んでいるんですよ。
実際に例の殺傷事件では、45人が犠牲者となり、犯人は死刑確定。これで問題は解決したんですか?他の知的障害と高齢者は関係ないんですか?
昔から施設による介護者の虐待が取り上げらてますが、現実は自宅での家族の虐待が多いんですよ。強制的に施設に入所させて会わないようにさせたら問題解決になるんですか?クビにしたら問題解決になるんですか?
介護疲れによる殺人事件や自殺も昔からあります。何か良くなる対策をとってるんですか?
スタッフの再教育、介護者のレスパイトケアだけでは問題解決しないんですよ。休息と教育だけで人間が簡単に人格者になれると思うんですか?
一体、何人犠牲者を出したら根本的問題を改善するよう取り組んでくれるんですか?
というのが、この映画の核心だと思うんですよ。
お金があったら施設入所できます。お金がなくて24時間のケアが必要な自宅要介護者はどうなんですか?
疲弊した家族以外で、24時間ヘルパーさんが付きっきりで介護してもらえるんですか?介護保険じゃ単位が足りなくなるから1週間も無理だね。そうなると1ヶ月だとほぼ自費だね。結構な額になるよ。お金がないのに。
生活保護の問題も昔から取り沙汰されていますが、映画のように同居して誰かが働く能力があると申請受理されないんですよ。ということは別居すれば不正も可能なんですよ。それっておかしくない?
一体、どれだけ問題が露顕されないと国は動かないの?という話になってくるんですよ。
警察だって同じ。犠牲者が出る前に取り締まってほしくて相談に行ってるのに、事件にならなければ動かないってどういうこと?
根本的におかしくないか?セキュリティを強化したけりゃ自費でボディーガードを雇えってことですか?それもまた格差社会の弊害ですよね?
めちゃくちゃおかしくないですか???
映画の出來事はあくまでフィクションではありますが、伝えているメッセージはめちゃくちゃ社会批判です。問題提起だらけ。そういう意味も含めて素晴らしい作品だと思った。
話を映画にもどすと、
長澤まさみさん演じる検事(母親は施設入所中)とケンイチ氏演じる自称救済者(犯人)の対比の仕方がめちゃくちゃ素晴らしい。
片や裕福、片や貧乏。片や介護の苦しみが分からない、片や苦しみを知っている。
検事も自称救済者も見事に対比されているようで、検事もまた母親を施設に送った(厳密には母親自ら希望した)という意味では、ただ闇を経験していないだけで自分も救済されているんですよね。
殺した殺してないかの違いなだけで、やってることは同じ。
国は、高齢者への尊厳を謳っているが、それも足枷になっているのも事実。要介護者が虐待されるケースもあれば、介護者側が性的虐待をうけているケースもある。
日本では、昔からお客様は神様思想が蔓延してますが、その思想自体が歪みの元なんですよ。勘違いさせる原因だから良くない。お客様も人間です。神様じゃありません!
クレーム言ってくる人間にヘイコラしないといけないのか私には分からない。こちらのミスなら平謝りですが、そうじやない身勝手なクレームに対して謝る必要ありますか?あなたから給料もらってませんから!と言い返したくなる。
介護の問題だけでない日本社会の問題を露顕してる!
結局話が逸れまくりですが、
やはり、ケンイチ氏はカメレオン俳優やね。心優しい介護者と自称救済者の裏の顔の見せ方が上手い!全く別人格ではなく、自称救済者の内面にも優しさが見え隠れする演技がお見事!
予告編の時から魅了された長澤まさみさんの演技もリアル過ぎて、演技の枠を超えてその役の人物そのものだった。
ぶっちゃけ、演技ってね、どんなに上手い役者さんでもリアルな感情には勝てないんよ。まさみさんは、まさにリアルな感情を剥き出しにしてた。間違いなく女優賞!
もうさ、柄本明さんが、めちゃくちゃリアルな存在感があってラストは涙なくして見れなかった。ぶっちゃけ、私自身が柄本さんに救済された。
親父との2年間。まさかの親父との2年間。母親が先に亡くなるとは思ってなかったからね。私の親父は、ずっと入院暮しで最初は転院をくり返した。最期は宝塚の花火が見える療養型の病院で、2回屋上から花火を見たね。その病院で亡くなったので施設入所と変わらない。
その頃は、兄貴が遠くに住んでいたので洗濯物や着替え、オムツを病院に持っていったり、他病院への送迎は私がしていた。
母親が亡くなった時には既に親父は入院生活だった。母親が亡くなるまで母親が面倒をみていた。私は全くお見舞いに行かないくらい毛嫌いしていたから親父との交流がほとんどなかった。
それが、まさか母親が先に亡くなり、親父の面倒をみるなんて思ってもみなかった。
兄貴の結婚式の時は、車の中でオムツの交換したり、他病院に行く時はドライブしてケーキを食べさせたり、親父でなくて自分の子供を養ってる感覚だった。
兄貴と話合って、親父には母親の死を長いこと伝えていなかった。面会に行くたびに「おかあさんは?おかあさんは?」と聞くから正直に話せなかった。
でもね、ずっと黙っていても本人も薄々分かっていると思ったから、外出の時に兄貴に黙って実家に連れて帰ってお仏壇を見せた。親父は涙も見せず手を合わせてたね。一緒にケーキ食べたね。これは完全に私のエゴですが、糖尿病の親父にケーキを食べさせた。美味しそうに食べるんからね。たまの外出だからちょっと贅沢させた。
親父が入院中は、宝塚をほとんど観てなかったので、いつも大劇場を車で素通りして病院に行っていましたが、花火は2回見れたね。看護師さんが気を利かせてくれて私も一緒に花火を見た。いまでもポケモンの花火が忘れなれない。
2回急変があって今日がヤマかもと言われ、兄貴と兄嫁さんの3人で24時間交代でそばにいましたが、一回目は奇跡の復活で人口呼吸をつけることなくそこから1年生きた。
2回目は、兄貴と一緒に看取ることができた。実は、その時には既に強制的休職中だったから、火葬されるまで2日以上あったのでずっと棺桶のそばで折り紙折ってた。
なんの因果か、10代20代の頃は親父に反抗しまっくてほとんど関係を断ち切っていたのに、まさか親父と濃密な時間を過ごす日がくるなんて思ってもみなかった。
亡くなる数週間は全身に管が通されていて呼吸も苦しそうで見てるのも辛かったけど、親父の生き様を見て過去に抱えていた憎しみが雪のように溶けていった。
親父も親父で苦労して生きていたんやもん。酒を飲むと豹変する暴力親父ではあったけど、酒を飲まなかったら優しいとこもあったしね。
若い頃は、親ガチャだと思っていたけど、今は子ガチャやなって思う。こんなワガママ息子にたくさんお金を使ってくれたと思うと感謝の言葉しかない。
長くなりましたが、柄本さんの演技にはその想いを引き起こす力があって、ラストは本当に号泣に近いものがあった。
本当にあの折り鶴と手紙が私を救済してくれた。
柄本明さんに助演男優賞、作品賞も上げたい!
人殺しは良くないのは当たり前。検事の台詞も真理。
だからこそ、格差社会の歪みを正していかないと、もっともっと犠牲者が増える。
明日は我が身。今度は自分たちが高齢者、介護される側に回るんだから、子供たちを犯罪者にさせない、我々も犯罪者にさせない世作りが必要。
そのために今、何が出来るか?
真剣に考える時がきたのではないのでしょうか?