学びのプラスあるふぁ:日常の気付き

人の人生、それぞれが皆オリジナル。街を歩き人に話しかけることから「なるほど」と納得できる発見がある。

触る文化の危機

2020-06-26 16:39:19 | 日記
大阪の吹田市にある国立民族博物館、大阪の人々の間では ‘民博’ と呼ばれて親しまれている。6月21日付けの読売新聞で、その民博で広瀬弘二郎先生(52)准教授の文化に関する持論が取り上げられていた。僕が今回ブログで取り上げた最大の理由は彼は全盲の文化人類学者なのだ。博物館にはオセアニアから始まっていろんな国々の民芸品などが陳列されていて訪れる人々は世界の人々の暮らしや文化に想いを馳せて異文化と “触れ合える機会” が提供されている。僕も現役時代にゼミの学生を連れて何度か足を踏み入れた博物館である。“触れ合う”という意味は実際に手で触れるという意味も、近くで体感できたり鑑賞することができるという意味もある。
前置きがずいぶん長くなったけれど、今回のコロナ問題で物に触れることを避けるという生活は目に障害を持った人達にとってみれば何を意味するのだろうか。広瀬先生、「さわる文化の危機」という表現で新しい生活様式を表現されている。「はッ」と気付かされた瞬間であった。物に触れて生活する我々だが、目に障害を持った人たちにとって感染を避けるために物に触れられないということの切実さは健常者のそれとは比較にはならない。アメリカに住んでいた時に「触ってごらん」という場面に何度も遭遇した。最初の経験がアメリカンバファローの毛皮に触れた時のことだった。日本人にとって「さわる」にあたる最初に頭に浮かぶ英語の単語は touch(タッッチ)である。その後あまりにもいろんな場面があったのでほとんど覚えてもいないけれど英語では “Feel it!” である。Feel つまり「感じる」である。触って触れて感じてごらん、という意味が強調されて ’なるほど’ と頷いたものだ。我々にとっては物に触れて触って本当に感じる物を初めて身近なものとして意識することができる。マスク、アルコール消毒、人との接触を避ける、ということが今後とも予測できる。これからの生活は本当に「さわる文化の危機」であると言えるだろう。仕事であれ人間関係であれ、“Feel it!”。人と人との接触や人と物との接触が以前のように当たり前にできる平穏な生活を取り戻すことが可能になる日は来るのだろうか。