北野天満宮(2019年3月)
木之本宿
山霧のゆるりと流る賤ヶ岳 惟之
木之本の牛馬市跡初時雨
鐘楼の鐘は打てずに冬に入る
漆黒の戒壇巡り冬の銅鑼
軒下の杉玉ずしり冬めける
誌上句会 兼題「寒」
特選
寒雀丸くなり尚丸くなり 万智子
なかんずく青信号の灯の寒し 清次
寒鯉寒鯉釣りも動かざる 三枝子
曳き売りの距離を計らふ寒鴉 京子
寒の星動く生きよと亡妻の声 洋子
秀作
稚魚遊ぶ底に動かぬ寒の鯉 惟之
寒禽の風強ければ強く鳴く 篤子
ちぎれ雲寒空を来て海へ出て つとむ
夕厨不意にヒューズのとぶ寒さ 恵子
寒日和児に小庭の石に猫の来て 紀久子
嵯峨野の夜の竹打つ音や寒に入る 円町
飼い犬の聞き耳立てる寒さかな 里子
走り根に浮くアスファルト寒日和 葵堂
寒き夜の母にせがみし民話かな 捨弘
寒風を斜めに受けて六地蔵 信儀
やまびこ(11号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
赤とんぼ地蔵の膝がほんに好き 素岳
衣被好みて歳を重ねけり 喜志子
還らざる遺骨啾啾雁渡る ともはる
少年がやや大人びる九月かな ひさ女
平凡に日日を老いゆき秋ざくら 惠弘
むさしのの秋は水より芒より 東音
右読みの屋号の町や秋灯し 東音
恙なき今日を惜しめとちちろ鳴く きぬ
蟲の声ちつと途切れて新聞来 圧知
満月の裏にあるやも能舞台 怜
子の古き机に燈火親しめり 近子
鈴虫のこゑのふくらむ明けの土間 布美子
友逝きてはやひととせや夏深し 悦子
小流れの果ては海原秋気澄む 正弘に
太刀魚のくの字くの字に釣られけり 睦美
花すすき活ければ風の生まれけり 古奈
俳誌 嵯峨野 三月号(通巻596号)より
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