東寺(京都市南区九条町) 八号 水彩
初漕ぎ
初詣雲中供養菩薩なり 惟之
初漕ぎの櫓音たかだか比良比叡f
元旦や子らと一日を映画村
正月や孫と添ひ寝の妻うれし
身ほとりに続く別れや冬の空
誌上句会 兼題「東風」
特選
東風荒らぶ灘に隔たる赤間宮 藤子
朝東風や使ひ切つたるジャムの瓶 稔
梅東風や在釜の札に導かれ 安恵
強東風の波の遥かに竹生島 洋子
初東風や高みの堂の五色幕 清次
小地蔵の如き気根を東風過る 秀輔
秀作
オアシスの天空庭園雲雀東風 珠子
孫柔き唇を寄す桜東風 治子
甲斐盆地東風吹き渡る母の郷f 文夫
東風吹くや一番ホームに白き富士 東音
東風吹くや今も釣瓶の残る路地 洋子
その中にお礼の絵馬や桜東風 美代子
強東風や雲寄せ放つ天守閣 篤子
強東風に目玉抜かれて干せる蛸 京子
船宿の灯火ひとつ鰆東風 隆を
東風吹くやせめぎ合ひたる絵馬の数 靖子
梅東風や古刹の庭の石畳 鈴子
東風吹いて急がる庭の手入れかな 秀子
東風吹くや海に開けしレストラン 和男
強東風に法の山路を比叡の僧 静風
強東風に真珠筏の大うねり 三枝子
梅東風の大和三山高からず 美智子
梅東風に歩調いささか伸びにけり 博光
朝東風や竪穴住居跡散歩 惟之
やまびこ(三月号作品から)感銘・共鳴)私の好きな一句
死はいつも身近にありて煮大根 爽見
老医師の一言やさし冬銀河 近子
一葉落つときの流れをゆらしつつ 勝彦
逝き人の写真見直す長き夜 博女
境内の光あつめて銀杏散る 近子
冬落暉あす閉店の文具店 節
綿虫のあとさき渡る河童橋 東音
弔文を書きあげてより火の恋し 勝彦
カーテンのひだの深きや冬館 布美子
冬晴れに威を正したる岡山城 紀久子
眼鏡拭く秋思の吐息かけながら 梨里子
冬の夜や銀器を磨く白き絹 そよ女
つまずきし石の小さやそぞろ寒 節子
風受ける枯葉や音が音を追ふ 裕美
これよりは余熱で生きん姫椿 美智子
俳誌嵯峨野 五月号(通巻622号)より
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