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HOME/愛しの座敷わらし

2013年09月04日 22時50分18秒 | 邦画>★★
2012年/邦/和泉聖治監督/水谷豊 安田成美 草笛光子 橋本愛 濱田龍臣 岡部珠奈
2013年8月11日 テレ朝日曜洋画劇場特別企画

【あらすじ】
食品メーカー勤務の晃一(水谷)は、東京本社から盛岡支社に転勤になった。妻史子(安田)、母澄代(草笛)、中3の娘梓美(橋本)、小5の息子智也(濱田)を伴い、移り住んだのは藁葺屋根の古民家だった。電気や水道は通っているものの、風呂は薪を焚くシステム(調理は不明)。家は広過ぎトイレは汲み取り、街は遠く町内会はだだっ広い範囲に点在して不便この上ない。しかもこの家には、何かがいた!少しボケの入った母澄代はその<何か(岡部)>を、幼少の頃に死に別れた弟六助だと思い込む。近隣の住民によると、この古民家には座敷わらしがいるのだという。家族がこの座敷わらしらしき<何か>を<ロクちゃん>と呼び親しむようになると、不思議と家族たちに良い空気が流れはじめ…。

「相棒」に何らの思い入れもないので、和泉監督×水谷豊だとか超どうでもいい。ただし!
金子成人脚本てのには、少なからずテンションが上がる。ビバ!キツイ奴ら。ゴローさ~ん。
しかし、今作にキツイの面影は一切なかった。なんともヌルい、都会人向け田舎暮らし憧憬ムービーでした。やっぱ金子氏は、久世光彦の演出あってこそか。
作品的には、当たり障りなくほのぼのとした「東北って、いいなあ~」という安心安全なおハナシである。まあ、東北の、過疎地域の<いいとこ>だけをプッシュしなけりゃいけないテーマではあるんだけどさ。これ見て、「アタシたちも東北の古民家で暮らしたい!」なんて洗脳されちゃうバカがいても、一切責任ないからね。
まずズルいのは、夏というワンシーズンだけで完結しているところ。冬の苦労も百姓の苦悩も映さず、「いいところだ」ってそりゃそうだ。それから古民家も、こぎれいすぎる。撮影用に手を入れすぎてる。ほんとなら庭は草ボーボー、屋根にも草が生えるであろうというか、人が住んでないから腐ってたっておかしくない。広すぎる家屋はすぐに蜘蛛が巣を張るし、周囲は農地、牛馬もいるからハエやアブがぶんぶん飛び回っててしかるべき。ドロバチやなんかの類も、容赦なく室内に(!)幼虫室を建造しにくる。だって自然が豊かなんだもん。
それから、住民が皆いい人すぎる。田舎モン、特に農業中心の地域は押しなべて排他的である。ちゃらちゃらした都会の若者がやってきたら、チェーンソーでお仕置きするのが田舎の礼儀なのである。いや、チェーンソーは嘘もいいとこだけど、都会の習慣を持ち込もうとするやつには超冷たいというのが定石である。逆に地域に馴染もうとぐいぐい来るやつには超やさしい。毎日のように作物のおすそ分けをしてくるまである。集落一帯親戚みたいなもんで、閉鎖的な上に連帯感も強いから監視もきつい。何かやらかしたら、村民全員に知れ渡る。
この地域性はもちろん子供社会にも息づいてて、都会からの転校生はまずハブられる。むしろ子供のほうがダイレクトにいじめられる。
ていう常識(?)が、ロクちゃんによって覆されたもんかどうかは不明だが、東京に帰って「消えてくれてありがとう」の学校に戻るのはまたつらいわなあ。
ま、こういう現実的な想像から目を背けて、フィクションだけを堪能する分には、爽やかでいいんじゃないでしょうかね。<愛>とか、胸糞悪い演説でした。か、金子さ~ん。
ところで、息子役濱田達臣くんはどっかで絶対見たことあるなと思っていたが、またしてもウルトラマンでした。青田買いの聖地だな、ウルトラマン…。
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