エッティンガーゴルフ２ 16ベンチュラーに試乗(＃2）

Ｉ氏のエッティンガーゴルフ２は、当時の正規輸入元であったToy's Boxが輸入
した貴重な1台です。ですので、ヤナセが正規輸入していた通常のGTI16Vとは
装備や外装色、シャシー（溶接箇所）が違います。

数年探していたＩ氏は、ワンオーナーで出物が出た際、大学４年生の時に購入
されてから現在までの約15年・10万キロ以上所有され、昨年2年間をかけて
フルレストアされました。ですので実質ワンオーナーと同じ状況だと
言えるでしょう。
また、全走行距離の内、奥様も5万キロ程乗られたそうで、マニアは驚くばかりです。

オーバーホールをしてまだ8,000kmというこの車。当時のエッティンガーや
ＡＭＧのように、容量ギリギリにピストンを組んでいるので、本当の味が出て
来るにはもう少し時間がかかりそうですが、それでも現代の大量生産された
自動車では考えられないような、硬質でかつ、なめらかなエンジンの回転は、
”筆舌に尽くし難い”という言葉がぴったりでしょう。

あえて言えば、ホンダの2輪エンジンのような軽い吹き上がりをします。
ですので、運転初期は良く回るエンジンに対して、奥まで踏んで、手前で
クラッチミートするワーゲン純正クラッチとの相性が難しく感じた程です。
クラッチがデリケートではなく、エンジンがデリケートなんですね。
シロッコ16ヴァルブに乗っていた頃と比べると、エンジンの癖は同じですが、
フォルクスワーゲン純正のDOHC16ヴァルブエンジンは、もっとガサツな印象が
残っています。ですから、余計にエッティンガーの良さが分かるという物です。
これはエッティンガーがチューニングしたメルセデスベンツも同じ感触でした。

特にトップ（5速）で100km/h程度からの加速は、これまた驚くばかりの伸びで、
エンジンの最大回転数まで確実に回って行く勢いです。今回この車のエンジンは、
まだ慣らし運転中でしたので、各ギアで5,500rpmまでをリミットとして走行
しましたが、それを視野に入れていなければ、レブリミットまで延々に伸びて
行ったでしょう。アウトバーンの速度無制限地帯を延々と走りたい気分になります。

ちなみに、この車には安全の為、レブリミッターは6,250rpm程度で付けられて
いましたが、当時生産されたモデルには一切リミッターは付いておらず、
ドイツではオーバーレブ（回転しすぎ）で、エンジンを壊したオーナーは
数知れないそうです。
僕はオーバーレブの事ばかり考えていて、躊躇していましたが、助手席のＩ氏
からリミッターが付いている事を聞かされ、安心してアクセルを踏むことが
出来ました。貴重な車を壊したら自動車世界遺産を無くすような物ですからね。

それにしても燃費がいい。故障を恐れて、レストアの際に、本国仕様の
エアコン＆パワステレス、パワーウインドーレスに変更されている事もあるが、
ぶっ飛ばしても8～9km/Lという数値は、驚異とも言えるだろう。
パワー＝悪燃費というのは、エッティンガーには通用しないらしい。

画像はエンジンを暖気している所を撮影。
そう、エッティンガーはレーシーなエンジンなので
最低でも5分程度の暖気が必要なのです。
アイドリングストップが無い時代の車ですね。
とても綺麗なＶＷ純正ホイールにオーナーの愛情が見えます。
もちろんエッティンガー純正ホイールもお持ちだそうです。

＜取材協力＞
Ｉ氏（エッティンガーVWゴルフ２　GTI16Ｖ）