【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

海洋放出

2019-10-27 07:45:03 | Weblog

 「汚染水は安全だから海洋放出をすれば良い」という主張があります。それが正しいのだったら、その主張者の地元で海洋放出をしたらどうでしょう。「安全」なのだったら、ためらう理由はないですよね。全量とまでは言いませんが、ある程度引き取ってくれたら、タンクに余裕ができて福島も助かるでしょう。

【ただいま読書中】『解放された世界』H.G.ウェルズ 著、 浜野輝 訳、 岩波書店(岩波文庫 赤276-6)、1997年、700円(税別)

 本書が描かれたのは1913年(発行はその翌年)、第一次世界大戦の直前、飛行機はまだ複葉機で、科学者はラジウムやウランを素手で扱っていた時代です。
 そんな時代に著者は「世界大戦」「原子力エンジン」「ヘリコプター」「原子爆弾」を想像しています。ただし原子力エンジンは自動車や飛行機に搭載されるというとんでもなくコンパクトなものですし、原子エネルギーはビスマスが崩壊して金になるときに放出されるものだし、原子爆弾は、飛行機から手で投下され、その爆発力は大きいが一番の破壊効果は残留放射能によるもの、と、“科学的"には“正しい"とは言えないものばかりです。でもそんなことは“二の次"でしょう。
 本書はSF的な「予言の書」ではありません。著者は「未来の歴史」を淡々と語ります。世界大戦や世界を破滅させる可能性がある原子爆弾によって、世界がどのように変化するのか、「国」がいかなるものに変わっていくのか、を。それと、そういった「世界」を想像しないで目先のことにだけ集中する政治家や軍人に対する不満も、著者は抱いているようです。
 そういった点で、本書はヒロシマ・ナガサキ以降の世界を生きる者が読むべき本、と言えそうです。