【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

小中

2019-10-11 09:11:05 | Weblog

 小中高と聞いて、不思議に思う日本人はあまりいないでしょう。
 だけど、小中の次に来るのは、本当は大じゃないです?

【ただいま読書中】『終わりなき索敵(航空宇宙軍史・完全版(五))』谷甲州 著、 早川書房、2017年、1400円(税別)
 『最後の戦闘航海』で登場したロックウッド(当時は少佐、今は大佐)と非人道的な実験でサイボーグ化された「作業体K」が同じ観測船「ユリシーズ」に乗り組んでいます。もっとも作業体Kは乗組員ではなくて装備扱いですけれど。観測目標は、太陽系から遙か遠くを移動しているSG(射手座重力波源)。どうも複数のブラックホールが複雑な運動をしながら一定方向に移動しているようなのです。天然の現象か? それとも人工物か? 人工物なら、それを創ったのは誰でその目的は?
 妙なことに、SGは時空を歪め、そのため「ユリシーズ」は航宙しながら時間の中を行ったり来たりしてしまいます。そしてそこに「人類の未来」が登場しました。超光速の空間流を舞台として、宇宙規模のタイムマシンが実現してしまったのです。
 太陽系外宇宙を探索していた航空宇宙軍は、銀河のあちこちで文明を発見、それを支配しました。しかし支配された側は汎銀河連合を結成して抵抗を始めます。かつて航空宇宙軍と外惑星連合とが対立したのと全く同じ構図です。そしてまた戦争が。
 シマザキ少尉(とその母親と兄)など、過去の作品に登場した人が再登場し、舞台は(これまた過去に戦場となった)エリヌスへ。
 そして、未来から一度現在に戻った人は、また同じ戦場でまた同じ敵と同じ戦闘を経験することになります。そしてまた、同じ死者たちの舞踏が。
 著者による「主題と変奏」は繰り返されます。同じ作品の中で、違う作品の中でも、そして、シリーズの中でも。その雄大な調べに、私は身を任せるしかありません。ただ残念なのは、第二次外惑星動乱が年表の中の脚注のような扱いになってしまっていること。ここでも“歴史的な人間ドラマ"があったに違いないので、読みたいなあ。