【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

夢を叶える

2010-06-19 14:38:50 | Weblog
私の夢をあなたが叶えて、それが何になるでしょう? 私の夢は私が叶えるから意味があるのです。私は私の、あなたはあなたの夢を叶えましょう。

【ただいま読書中】『マハラジャのルビー ──サリー・ロックハートの冒険1』フィリップ・プルマン 著、 山田順子 訳、 東京創元社、2007年、2200円(税別)

赤ん坊の時にセポイの反乱で母親を亡くしたサリーは、16歳の時に父親を海難で失います。所有する会社の報告書の矛盾を調査するためにシンガポールに出かけた先での事故でした。直後サリーはシンガポールから謎の手紙を受け取ります。会社に乗り込んだサリーがその手紙の言葉を重役の一人に言うと、重役は心臓発作を起して亡くなります。1872年のことです(いろんなことが起きた年ですが、私にとっては「マリー・セレスト号事件の年」です)。
サリーに危険が迫ります。なにか、値段もつけようのない宝物が関係している、と言うのですが……って、タイトルに書いてありますね。セポイの乱で、宝物なのですから。
さて、ここから「サリー・ロックハートの冒険」が始まるのですが……なんというか、いかにも「ヴィクトリア朝時代のロンドンの物語」といった雰囲気です。そのへんからひょいとシャーロック・ホームズが出てきてもおかしくないような。ロンドンの霧と石炭の煤煙の臭いが行間から立ち上ってくるようです。
サリーは、2回も泥棒に遭い、貴重な手がかりや大切な物を盗られてしまいます。しかし、職人気質の写真家フレデリックと知り合います。こちらは貴重な味方です。さらに別の味方や手がかりも合流します。しかしサリーが、自分でも気づかずに持っている手がかりを狙う者は、着々と手を打ちます。
サリーは父親の死の真相に近づきます。南シナ海の海賊、大英帝国が公に行なっているアヘン貿易、ロンドン貧民街の小悪党たちなどが絡み、サリーと仲間は絶体絶命の危機に……
「ライラ」シリーズでも思いましたが、著者の作品はしっかり子ども向けなのに、その背景の作り込みは半端ではありません。本書はライラの前なので、まだ習作の香りがしますが(たとえばストーリー進行がやや単調)、それでも作り込みの手間を惜しまない点は共通しています。このシリーズは全4作とのこと。楽しみながら読んでいきましょう。