昨日はサロン講座「ギターの音って材料と塗装でどう変わるの?」と言うタイトルで元ヤマハの製作家・江崎秀行さんにお話していただきました。
驚いたのはこの数日毎日のように何人ものお申込みを頂き、超満員、なんと補助席まで出して53名の方々にお出でいただきました。正直言ってこれだけの反響を頂けるとは思っていませんでした。中には大阪から見えた方もいらっしゃいましたし、プロのギター製作家の方々、又はリュートを作られる方などもご参加頂き江崎さんのお話に耳を傾けてみえました。
江崎さんは1965年にヤマハに入社して、1972年にスペインに留学、フェレールやマヌエル・エルナンデスに師事されてスペインの伝統的な製作法を学んでこられた後、ヤマハ内で科学的な分析、実験を繰り返してきた方ですのでその話には裏づけされた根拠があり非常に説得力のある内容のお話をしていただきました。
江崎さん曰く「一般のギター愛好家を対象に用意した内容なので、プロの製作家の方々が見えてたので話の内容ににとまどりました。」
しかし、含水率(EMC)の曲線の話などは製作家のお一人は知らなかったと言われ、勉強になったとおっしゃっていました。私などもヤマハ在籍中にEMCの話は工場見学にお連れしたお客様たちに説明をしていた立場なのでよく知っている話なのですが、やはりヤマハという企業のアプローチと個人製作家のアプローチとは違うため江崎さんのお話は面白かったのではないでしょうか。
お話は「音の出る仕組み」「音作りのポイント」「各部位に使用される材料とその特徴と音の違い」「塗料の種類と特徴・音の違い」そして松・杉の音の違いを私の音出しで皆さんに感じ取ってもらいました。その中で江崎さんの強調されていたのは、ハカランダは最高級の材料でローズは落ちる材料だとか松が良くて杉は悪いだとかセラックが最高の塗料でウレタンは良くないと言う思い込みは間違っていると思いますよと言う事でした。それぞれに特徴があり、どんな音を意図するかで使う材料も塗装も変わってくるということと、コストとのバランスだと言うことです。希少価値がある材料は高くなるのは当然ですし、作業工程が長くなるもの、手間の掛かるものは当然コストが上がりますよね。
そして自然保護の為に入手困難になる材料や安全性の問題から使用が規制・禁止される材料(ラッカーも使わなくなってる製作家が増えてます)などが出てきています。作る側としては時代に即した対応をしていかなければならないんですよね。
私もヤマハ時代に世界の主要ギターメーカーの工場は殆ど全て見て回っていますし、主要メーカーのOEM生産(相手ブランドで製品を作り提供する)の窓口も担当していましたし、最後の方では設計・開発の責任者も担当していましたので、ギター作りに関してはかなり勉強しました。魅力あるギター作りとは、市場ニーズにあったギター作りとは、コスト競争力のある楽器作りとは、などと設計者・開発者・工場と議論をしていました。そんな私ですから江崎さんの言う事はすんなりと入ってきます。市場で形成された概念を変えていくのは大変ですが、江崎さんの話を聞きながら改めて、微力ながら一人一人のお客様にお伝えしていかなくてはと思いました。
| Trackback ( 0 )
|
「ギターはバイオリンと違って、理論や測定では音の解明は不可能である」。つまり、一定の模範はないということのようです。関連して「バイオリンはストラディバリウス・タイプとガルネリ・タイプいずれかがあるらしい」とも語られました。
「杉は新品時に音の完成度80%と早熟だが、松はオクテで、弾き込むほど良くなる。松は芯のあるクリアーな音。杉は明るく暖かい感じで音量もある。杉か松かとか、南米ローズウッドのハカランダも含めて、材料で値段や音質の善し悪しを決め込むというのは疑問である。稀少だから値が高いということはあるが。塗装も含めて『狙う音』で材料、材質を決めていく」
「ラッカー塗装はクリアーな音、セラックはブリリアント」
「ウルフサウンドをG#に持ってくる。これより高いと高音に特徴、低いと低音に特徴という楽器ができる」
「初め含水率30%ほどの木を6%にまでときつく乾燥させてから製作にかかる。製品は含水率9%で安定するもの。それより多いと膨らみ、少な過ぎると割れる。だからギターは温度、湿度管理が大切なのだ」
お願いしたとおりの早速のご訂正を、有り難うございました。