平島 謙二ギターリサイタル - ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 平島 謙二ギターリサイタル

 2006年5月12日(金)、兵庫県西宮市にある芸術文化センター小ホールにおいて、平島謙二さんというギタリストのリサイタルが開催された。
 ミューズのホームページをご覧になっている方は中部圏にお住まいの方が多いでしょうから、西宮といってもあまりぴんとこないかもしれませんが、大阪と神戸の間に位置し、今ではどちらかといえば企業や工場よりも住宅が多く見られる、いわば大阪のベッドタウン的都市。

今回の会場となった芸術文化センターは、阪急電車西宮北口駅前に去年の10月に完成した大変立派な音楽専用ホールで、暮に、渡辺香津美さんと鈴木大介さんがデュオのコンサートをされたのと同じホール。(最近まで、すぐ近くに西宮球場があったが、今は取り壊され、あたり一帯が大変きれいに整理されている)
舞台が一番低いところにあり、360度客席、舞台、客席、壁、天井と全てウッド仕上げ、400名強を収容できるとても素敵なホールです。
 もちろん音響も抜群で、私が経験した音楽ホールの中では最も響きの自然できれいなホールではないだろうか。(会場の音響関係の方も、翌日仲道郁代さん(ピアノ)のコンサートが同じ場所であるといって、とても楽しみにされていた)

 プログラムは「演奏生活40周年を記念して」と題して、ご自分が今までに慈しんでこられた曲の数々を、その誠実な人柄がしのばれるお話を交えながら回想風に繰り広げられた。(ちなみに、お生まれは昭和21年のまさに団塊の世代)
 第1部は、ちょっと大胆とも思えるが、全てバッハの作品で埋められた。
 チェロ組曲第6番よりガボットⅠ、Ⅱ、ヴァイオリン・パルティータ第1番よりサラバンドとブーレ、再びチェロ組曲第3番よりクーランテとブーレⅠ、Ⅱ、そして第1部最後はリュート組曲第1番よりブーレ、ジーグ。
バッハに相応しく、全ての虚飾を廃したような、端正で流暢な演奏。
一度、リュート組曲などは全曲通して聴いてみたい。

第2部は先ほど言ったような回想風ステージ。
平島さんがギターを始めて間もないころに弾いていたという「ソルのワルツ」やら、「デュアルテのイギリス組曲」、「アストリアス」、「アラビア風奇想曲」、「アルハンブラ」、「11月のある日」「ジャズ組曲」その他一時有名になった「大きな古時計」、そしてなんと古賀正男の影を慕いてにいたるまで、過去から現在に至るまで、ギターを通じて触れてきたあらゆる分野の音楽を、その美しい音色と共に披露した。(驚くなかれ平島さんは、ギターを始めて1年数ヶ月で日本ギターコンクールに出場、そして優勝という栄誉を獲得した経歴をお持ちです)
おそらく平島さんも、永年続けられてこられたというボランティア活動の、あらゆる情景が脳裏によみがえっているのであろうことは容易に想像ができる。
会場からも、演奏の終わるごとにとても暖かい拍手がおこり、平島さんに対する聴衆の愛情というか感謝の気持ちすら伝わってくるような、心温まるコンサートとなった。

今回、富士通テン㈱を通じ、私の提案しているPA(SR)システムをぜひとも使いたいとおっしゃっていただいた時、私は、その誠実でひた向きな人柄に惹かれ、お引き受けした次第だが、ご自身の半生を振り返っての回想風なプログラムにもかかわらず、「まず第一にお客さんに楽しんでもらう」といった信念のようなものがうかがわれ、いつになく暖かいものが心に残ったコンサートであった。
アンコールも禁じられた遊びのロマンスと、ペルナンブーコによる鐘の音という、とても親しみやすいものが演奏され、ひときわ高い拍手が起こった。
私は、私の知らないところで、私の知らない人生を歩んでこられた平島謙二さんという一人のギタリストにお目にかかって、そのギタリストが、ギタリストである前に、一人の尊敬すべきとても素敵な人間であることに感動を覚えた。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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