2009年6月16日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 徳島ギター協会 ギャラリーコンサート

 6月13日(土)徳島ギター協会主催のギャラリーコンサートへ行ってきた。このコンサートは、徳島ギター協会の会員であれば誰でも参加できるが、聴きに来た人からは入場料を1000円(御茶代込)聴衆することになっているので、出演者はその料金に見合うだけのレベルに達していないと出演させてもらえないという超難関、レベルのたかーい(?)コンサートとして地元では有名なのだ。但しその料金に見合うレベルの判断を、すべて出演者に任せておるらしいというのが、はなはだうさんくさいことでも有名だとか(?)。とにかくその目的たるや演奏することにあるのか、あるいはその後の打ち上げ会のアルコールにあるのかはなはだ怪しい。第一、技量の判断を本人に任せてしまったら、日本中プロのギタリストだらけになってしまう恐れがある。「全ての評価は他人がするのだ」ということを人間は忘れてはいけない・・・と思う。そこのところをリハーサル前のある方にそれとなく伺ってみると、あまりはっきりとは否定されなかったので、やはりこの会はどうも怪しい雰囲気がどこまでもつきまとっておるようだ。但しそのある方というのは無類のアルコール好きで、痛風を患っているのもかかわらず、薬をビールで飲みながらもさらに呑み続けるという人なので、ちょっと訊く人の選択を間違えたような気がしないでもない。とにかくこの徳島のギャラリーコンサート、ミューズでいうワンコインコンサートによく似た趣があるようだが、どちらかというとミューズのワンコインコンサートの方が少しばかり健全といったらよいのか可愛いといったらよいのか、とにかく真面目な雰囲気がただよっている・・・ような気がする。

土日高速道路はどこまで行っても1000円ということなので、徳島までの150キロの道のりも随分気軽に行き易くなったというもの。結局中国自動車道、山陽道、神戸淡路鳴門自動車道(明石大橋含む)を経て、以前であれば数千円かかっていた通行料金が、今回は往路がちょうど2000円、帰りが夜間割引も入って1850円で済み、なんだか随分得をしたような気分。ただ当初は高速道路をどこまで走っても料金は1000円と勝手に思っていたので、都市近郊の高速道路は除外とか、異なる高速道路に入るたびに別料金なのだといわれてしまうと、なんだか釈然としないものを感じることはたしか。ともかくコンサートの開演は午後7時ということなので大阪を夕方の4時に出発。さきほど言った高速道路をそれぞれ乗り継ぎ、鳴門ICまでドライブは終始快適。途中明石大橋もさることながら淡路島と四国を結ぶ鳴門大橋から眺める瀬戸内海は本当に美しい。有名な鳴門のうずしおを眼科、いや眼下に眺め、一路徳島を目指す。会場となるギャラリーは、徳島県で有名な吉野川の手前なので、インターを出て10分も走れば到着する。会場の前で車を降りて中に入れば、すでに何人かの人がリハーサルに余念がない。ベンハーさんこと徳島ギター協会の会長である川竹さんの顔が見える。T-hernこと田中さんの顔も。そして四国在住(の中・高年)ではピカイチといわれる名手平岡さんのほか製作家の井内さんも。皆さんがいつも変わらず楽しそうに準備に余念が無い。それにしても皆さんよほど出たがりなのかあるいは目立ちたがりなのかよくは分からないが、徳島ギター協会の人たちは本当に楽しそうで、ちょっとうらやましい気がする。私が到着してから本番開始まで1時間以上あるのだが、ステージに上って一生懸命練習する人と、「おれは本番一発勝負!」と一切練習せずゆったりかまえる剛の者とさまざまなのだが、皆さんなんとなく手馴れた感じが伺える。聴けばこのギャラリーコンサート、すでに30数回開いているとのこと。なんとも徳島ギター協会の結束力というべきか、川竹会長のリーダーシップが充分感じられますなあ。

 出場者は10数名。ソロありアンサンブルあり、はたまたフラメンコありと、何とも楽しいコンサートである。会長の川竹さんも挨拶で言っておられたが、今回はクラシックギター定番の曲目が少なく、ハワイアン、ジャズ、ボサノバ、加えて古賀メロディと、知らない人からは「これほんまにクラシックの演奏会でっか?」と言われそうなプログラム。しかし現にクラシックギターで演奏するわけだし、かたいこと言わずに楽しけりゃええんでないの、てなわけで午後7時、徳島のギャラリーコンサートは始まった。
プログラムをご紹介。
① 魔笛、ハワイアンメドレー:和仁義朗
② ブーベの恋人:新田 宏
③ アルハンブラの思い出:斉藤彬宏
④ ファンタジア:高木潤
⑤ タンゴの歴史より、Cafe1930:福井文男
⑥ アデリータ、オルフェのサンバ:石井量師
⑦ タンギージョス、ブレリアス:鈴江彰&川竹道夫
⑧ 人生の並木道、丘を越えて:アルハムラ(アンサンブル)
⑨ チャルダーシュ、私の最初のギター:ラインハルト
⑩ バラに降る雨、白と黒のポートレート:田中章弘
⑪ ヌアージュ、A列車で行こう:川竹道夫
⑫ 鉄道員:白川剛久
⑬ ショーロス第1番:平岡範彦
⑭ バーデンジャズ組曲:浅田侑子

ご覧のようになんでもありのごった煮というか、ジャンルの定まらぬメチャクチャなプログラムではあるが、聴いている方も息を呑んで溺れそうになるような瞬間や、息が詰って窒息しそうになり、慌てて酸素吸入をしなければならないような瞬間ありと、ばかばかしくも楽しい演奏が続く。ドリンク込みで1000円とはコストパフォーマンスの低い、いや違った「高い」、どっちなんだかよくわからないが、とにかくめちゃくちゃ楽しかったことはたしかなので、「結果よければ全てよし」てなところか。最初の和仁さんの魔笛はともかく次に続くハワイアンメドレーはちょっと聞き物。ギター1本で充分雰囲気が出ていた。5番目に弾いた福井さんのピアソラは演奏よりも解説の方が長くて(?)、今思い出してもどんな演奏だったのかがとんと記憶がない。しかししばらく聴いているうち、いっこうに聞き覚えのあるメロデーが出てこなかったことだけは覚えている。訊けばフルートと合わせるはずの曲をフルート無しで演奏しておるのだという。誤解してはいけない。フルートのパートもギターで弾いてしまうのではなく、フルートの旋律は彼の頭の中で鳴っているだけ。つまり、聴いている方にも頭の中でフルートを鳴らせて聴いてくれ、という随分ずうずうしい演奏なのだとか。さすが四国徳島とも鳴門(なると)、名古屋では決して考えられないような豪傑もいるもんだと一瞬震え上がってしまった。⑩番の田中さんのジャズ(ボサノバ?)は、その弾き語りにますます磨きがかかり、もはや聴く者を寄せ付けない迫力さえ感じさせた。そして徳島の御館様、川竹会長のジャズ2曲(ディアンス編曲)には恐れ入った。私と同じ昭和23年の生まれでありながら、この難局、いや難曲に立ち向かう無謀さは高く賞賛に値すると言ってよいのではないか。とにかく我らが川竹会長が、まだまだ現役のギタリストであり続けていることに我々は誇りを持って生きていこうではないか!・・・と思うことにしようではないか。最後のお二人はもはやお見事というほか無い。平岡さんのショーロス第1番は力の抜けた洒落た演奏で聴く者を惹きつけたし、大学生となった徳島のマドンナ、浅田侑子ちゃん(さん?)は容姿端麗であるばかりか実力も全国的にお墨付き。過去いくつかのコンクールで優勝、あるいは入賞を果しているので、もはや安心して聴いていられる。その確実なテクニックと音楽性で我々もしばしうっとり。最近ではその音楽も体型も以前より心なしかふっくらしてきた・・・ような気がする。これを聴けただけでもはるばる徳島まで来た甲斐があったというものだ。なんでも今年の年末には名古屋のギターコンクールに出場予定なのだとか。
 午後9時ちょうどにコンサートは終了し、一同打ち上げ会場にまっしぐら。その後はどうなったか、聞かねえ方がいいような気がしますなあ。(内生蔵 幹)


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