2009年5月10日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 村治先生のギター教室 第37回発表会

 5月の始め、村治先生のギター教室、第37回発表会が、東京江東区にあるカメリアホールにおいて行われました。今回も私はお手伝いで参加させてもらいましたが、出演する子供達の上達振りがあまりにも素晴しいので、最近では私にとっても大変楽しみな年中行事のひとつになっています。椅子に座ると床に足が届かないような年中さんから、中学生、高校生、そして永年辞めずに教室に通ってこられている大人の方達まで。とにかく総出の演奏会ですからかかる時間も半端ではありません。会場には朝の9時頃に入り、10時からアンサンブルのリハーサル。本番は11時からですが、それから夜の7時頃まで延々と続きます。もちろん途中1時間ほど昼食のための休憩は入りますが、それでも相当な長丁場です。その間、先生はといえばステージで司会をしたり、裏で生徒さん達の楽器を調弦したり、さらには生徒さんの演奏の伴奏を勤めたりと縦横無尽の活躍。さぞかしお疲れのこととお察しするのですが、当の先生はそんなそぶりも見せず、いつもニコニコとして生徒さん達の演奏を楽しんでおられるかのよう。

 しかしいつも感心するのはこれだけ大勢の子供達が一同に集まっているのに、誰ひとり騒ぎ出す子がおらず、皆さん大変マナーが良いということです。これだけの長時間に渡る発表会ですから普通であれば終始会場がざわついていてもおかしくはないと思うのですが、生徒さん全員、聴く側としてのマナーがしっかり守られているのは大変立派だと思います。聴く側のマナーがそうですから、当然ステージに出ている子供達のマナーたるや、ほんとうに感心します。司会を勤められるギタリストの坪川真理子さんの質問にはっきりと「名前と年齢、そして曲名とその曲に対する自分のイメージ」をはっきりと答え、また演奏が終わればきちんとお辞儀をして下がります。また椅子に座って床に足が届かない年中さんは、演奏が終わると客席に向かって笑顔で手を振ってくれます。これがまた見ている私たちにとってはたまらなくかわいいのですが、これもうかがえば椅子から簡単に立てないような小さなお子さんでも、舞台の上では明るくしっかりと挨拶をさせるという村治先生のご指導とのこと。村治先生の小さい子供達への教えが、ゆるぎない実績となって身を結んでいる所以ではないでしょうか。私は先生とお付き合いをさせていただくようになって、先生のお子さんやお弟子さんに対する教育や指導のポリシーというか信念といったものが、深い愛情に基づき大変よく考え尽されているからこそ、その成果が今にいたっているのではないだろうかという確信を得るようになりました。そんな場面に接する度に、いつもハッとさせられるとともに、無言で私たちを導いてくれているような気がします。

 どうしてもミューズに来て演奏してくれている子供達に注意が向いてしまいますが、今回もこの子たちの上達振りには目を見張るものがあります。年中さんから年長さんになった降旗友也君がめきめき腕を上げています。そしてその友也君のお姉ちゃんである小学6年生のまり子ちゃんが大変立派なアストゥリアスを聴かせてくれましたし、原田斗生君が完璧にアルハンブラを演奏してくれたのには、はっきりいって驚嘆させられただけでなく、なんだかわかりませんが心底感動させられました。秋田兄弟などはさらに驚きです。一番上のお兄ちゃんである中学3年生の勇魚君がプロ顔負けにヴィラ=ロボスの前奏曲1番、第2番を演奏するかと思えば、中1の妹である杏樹里ちゃんはテデスコのソナタから最後の楽章、ヴィボ・エネルジコに挑戦。最後まで立派に弾き切りました。そしてさらにもうひとつ下に、お兄ちゃんお姉ちゃんそっくりな顔の年中さんの弟、未奏楽君が登場し、これまた大いに会場を沸かせてくれたのにも驚かされました。この仲のいい3兄弟には今後どんな未来が待っているのか、とても楽しみでなりません。その他に小学6年生の斎藤優貴君はソルのグランソロ、左利きの菅沼聖隆君は同じくソルのマルボローの主題による変奏曲といずれも見事としか言いようのない素晴しい演奏を繰り広げ、彼らのパワー、才能と共に村治先生の指導の素晴しさの一端が伺えました。

 最後のステージはバーチャル・オーケストラをバックにジュニア・グループが演奏を行いましたが、驚きなのは子供達全員が全ての曲を暗譜で演奏したことです。これには先生も驚いておられましたが、子供達のパワーには心底感心させられます。そして最後の最後、村治先生自らの演奏により、協奏曲スタイルによるジュリアーニのアレグロ・ヴィヴァーチェとマリア・ルイサ(次回発売予定のギター・ピース)を披露。終わるやいなや会場の子供達から大歓声が上がり、先生が子供達からどれほど慕われているかが分かりました。
 会場の片付けが終わると皆さんお楽しみのパーティーですが、ここでもいろんなイベントが待っています。中でもこの一年の頑張りに対して、先生から子供達に賞状と楯を渡すのですが、それを受け取る子供達のほんとうに嬉しそうな笑顔がとても印象的でした。
 村治先生の教室の発表会に伺うのはこれで何度目でしょう。いつも終わった後はほのぼのとした幸せな気分に浸ることができます。最後に一息入れようと先生と二人でお茶をのみに入った喫茶店で「あぁ、やっと一息つきました」とおっしゃった先生の笑顔に、私もまた一層幸せな気分になって一日を終わることができました。今年も9月、ミューズにあの子供達がやってきます。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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