新興国の発展により、世界の中流人口が急激に増加しているという英文エコノミストの記事です。私自身は今中国で格闘していますし、最近は中国市場を狙う進出の話ばかりを耳にしますが、確かに中国は文化的に近いところから攻めやすい面もありますが、もっと視野を広げるべきかもしれません。中国の場合、中国人自体が器用で日本の真似を直ぐに行う、国としては国内企業の保護育成の意識が実は非常に高い、根深い歴史問題、国内の余りにも拡大した所得格差等のネガティブ要因を幾つも抱えており、中国1国に依存する事はそれはそれで大きなリスクだとも考えています。
アジアの国別に中間所得層(それも記事にあるように、世界水準の中間所得層)が何人いるかわかると面白いですね。数的には中国が圧倒的に多いと思いますけど、東南アジア諸国等も魅力が有ると思います。それに中国では日本企業は欧米企業に大きく後塵を拝しており、様々な問題から中々それを克服する事は良いではないですから、もっと効率的に稼ぐ機会が他の国にあるのではないかな?とも思ってしまいます。
記事としては、
・ブラジルの悪名高き貧民街に初めて、ブラジル最大の小売チェーンが出店した。支払いはクレジットなどで行われる
・中国では、1992年に元交通局官僚が政府の指導も有り最初の商品先物取引企業を設立。その後中国始めてのスキーリゾートをハルピンに作り、現在は北京郊外のスキー場の責任者をしている。今年は、300万人の中国人がスキーをするようになった。中国人はお金を持つと最初はタイや韓国に旅行をするが、今はスキーをしたがる。毎週末IT企業の経営層や銀行員、メディア関係者が集まってくる。
・インドでは、2008年にムンバイでテロリストがホテルを攻撃した後、従来政治には関心を持たなかった英語を話すエリート達が集まって、治安保護に関する立法を要求した。中流層が政治に参加するきっかけとなった。
・MITの貧困対策研究所によれば、英国とアメリカの例をとり市場経済の萌芽により民主主義も勃興すると期待している。現在世界経済は1930年以来の危機であるが、世界銀行は新興国で急成長している中間所得層の消費が経済回復のきっかけになるとみている。
・中間所得層は先進国製品の消費者として経済的に貢献するだけでなく、民主主義をつくり発展させる鍵になる。
・アメリカ経済学会のファーレル氏は、中間所得層は一般に、最低生活費用を使う以外に、所得の3分の1を消費に回すという。これらは単に車や家電を買うだけでなく、健康や子供の教育に使われる。
・中国では、成都や重慶等の西部の大都市でも年間3000ドルあれば通常の生活は賄える。北京や上海ではもっと掛かるので、当然中間所得層の定義は異なってくる。
・一般に新興国では二つの中間所得層がある。一つは先進国の平均所得水準の層で自国の中では高所得層に属する。この水準になると、まだ世界人口の10分の1にすぎない。
もう一つは自国の中での中間所得層であり、ここ1-2年で世界の半数を超えた。1990年には1/3しかいなかったのが2005年に49%荷まで増加した層である。
インドのエコノミストの、一日に10ドルから100ドル稼ぐ層(1000円から1万円)という別な定義での調査を見ると、同様に1990年の1/3から2006年に57%まで増加した。
これは、市場3回目の中間所得層の急増であり、最初は19世紀の大量生産時代に西欧で発生し、2回目は1950年から1980年代に西側諸国で発生。そして現在は主に新興国で発生している。中国とインドの人口の大きさも影響しているでしょうが、中間所得層人口の数という意味では、アジアは既に西側を追い抜いたが、これは1700年代以来のことである。.
世銀の調査によれば、中間所得層の増加は消費を益々促し、その増加スピードを加速するとの事です。
中国では1990年から2005年の間に中間所得層は15%から62%に増加。インドでは今同じ事が起きており、現在中間所得層は5%にすぎないが2015年までに20%、2025年には40%に達すると予測しているそうです。
・現在は貧困国にとって、低価格な労働力を活用して世界市場で価格で戦い、豊かな国にも負けない高付加価値製品を提供する事ができるチャンスの時代であり、都市化も進み農民が農地を捨てて工場で働き生産性を向上させる。これにより社会の不平等も均質化されていき、安定する。
この貧困層の中間所得化は今後20-30年は続くだろう。現在の中間所得層の数も2030年までには倍になるだろう。
http://www.economist.com/specialreports/displayStory.cfm?story_id=13063298