日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

中国米デルファイ事業買収

2009-04-08 | 中国経済関連
ブログで何度かコメントしていますけど、中国及び中国企業が今後も成長を継続できるかどうかは、一般に言われるほど容易ではないと個人的には思っています。

 その大きな理由が、中国経済は現在のところ一種の奴隷制度経済で、豊かな中国人(特に沿岸部)が経営する企業が、貧乏な農民層を安く使い、低価格な製品を作り、海外に輸出している事で成り立っているという現実からです。

 現在中国政府は、社会の安定に優先順位を於き、内需拡大と農民層の所得向上を目指しておりますし、現状を考えるとそれは正しい路かと考えます。しかし、日本同様に社会の所得の均質化が有る程度達成された場合は現在の奴隷制度経済構造は当然成立しなくなります。つまり低価格、中品質品の海外輸出は容易ではなくなってしまう。

 現在の中国企業の課題は技術面でまだまだ先進国レベルに達していない為に、上記の問題が発生するのですが、それをキャッチアップする一つの方法が先進国製造業の買収と思っていました。その為に、日本の財政面で厳しい中堅企業の買収に中国企業が興味を持つのではないかと思っておりましたし、実際にそういう動きをしているコンサル会社なども既に存在しています。

 対日M&Aのニーズがどうなるかはともかく、GMグループのデルファイの部門買収というのも、この戦略に添った形なのでしょう。そして買収側が中国の自動車メーカー単体でなく、北京市主導で鉄鋼業と自動車業の合弁企業を設立しての買収いうことから、国策にのっとった動きなのだと考えます。

 中国人が買収後の統合業務をしっかりできるかどうかはまだまだ疑問ですが、中国政府がバックアップするオーストラリアの鉱山買収等にみられる資源の購入に加え、先進国の技術を買収していく動きは今後増加するかもしれません。

 国家としての独立性が日中では異なるとはいえ、こういう動きは日本政府には少しは見習ってもらいたいものですね。中国人個々や民間企業は短期的な利益を狙うところがまだまだ多いようですが、国家としては明確な戦略を持ち、自らにかけている部分を補強していくという具体策を計画建てて実行しているように見受けられます。

 国の発展度合いが日中ではあまりにも異なるので一概に言えませんが、政府の幹部と官僚の優秀さは、どう見ても中国の方が上にしか見えないですね。 


日経:
 【北京=多部田俊輔】中国鉄鋼大手の首鋼集団(北京市)や自動車部品の天宝集団(安徽省)などが出資する北京京西重工(北京市)は、米自動車部品大手デルファイのブレーキとサスペンション事業を買収する。両社が3日までに合意した。米国の裁判所の承認を得て、中国側が正式に買い取る。買収金額は1 億ドル(99億円)規模とみられる。

 京西重工が買収するのはデルファイが世界各地に工場や販売拠点を展開しているブレーキとサスペンションの事業で、知的財産権や生産ラインも含む。働いている3000人程度の従業員も引き継ぐとみられる。

http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2009040310589b1

Autonewsより補足: 
 デルファイの事業を買収した北京西は、北京市と中国3位のテンポ自動車がデルファイの資産買収の為に設立した。買収側は現在の社員の雇用は確保するだろう。買収価格は明らかにされていないが、現金で1億ドル支払ったとされている。3000人の従業員と、ポーランド、中国、メキシコ、フランスとアメリカに工場をもっている。デルファイは2005年10月に破産し、チャプター11を開始している。
コメント
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