(冬場は山には行きません。夏場の回想記事が主体となります。
その手始めに「高山植物」のカテゴリーを創設し、山の花について語って行きたいと思います。今回はその第二号記事です。)
高山の花と言ったら、皆さんはどの花を思い浮かべるだろうか。
私の場合はハクサンイチゲが何故か最初に浮かんでくる。
ハクサンイチゲは山の低い処には現れず、高い処の稜線まで登って初めて現れる。
稜線は雪消えが早いので、この花の開花も早く、登山シーズンの始まりとともに大きな群生で咲き出す。
そのため、他の花よりも印象が強いのかもしれない。
2020/06/24 鳥海山長坂道にて。
2018/06/10 鳥海山長坂道にて。
2020/06/04 鳥海山長坂道にて。
ハクサンイチゲとはどんな花なのか。
ウィキペディアによると、
ハクサンイチゲ(白山一花、白山一華)Anemone narcissiflora は、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。
種小名の narcissiflora は、スイセン Narcissus のような花 という意味である。
高山植物の代表種で、中部地方以北から東北地方の亜高山帯から高山帯の湿った草原に生育する。
花期は6 - 8月で、しばしば、雪渓が解けた跡に群生が見られる。白色の花弁に見えるのは萼片で5 - 7枚ある。
萼片が緑色に変わった個体はミドリハクサンイチゲ f. viridis と呼ばれる。
日本各地に近縁種や変種があり、東北地方以北にはエゾノハクサンイチゲ、四国の高山にはシコクイチゲが分布する。
とあった。
余談だが、和名がハクサン・・・と命名されたのは、白山(石川県、岐阜県)で最初に見出されたから。
しかしこの花の分布域としては、白山は西の端っこにあたり、分布の中心は日本アルプスあたりだろう。
「イチゲ」は茎の先に一個の花が咲くという意味で、同じイチリンソウ属(Anemone)のイチリンソウやアズマイチゲなどを指す。
ところが、上の三枚目写真をご覧頂きたい。
この花は茎の先に短い柄を持った花がいっぱい、と言っても2~5個咲いている。
少なくとも一個の花(=イチゲ)ではないし、群生していっぱい有るので、
私はこの花をふざけて「タクサンイチゲ」と呼んでいる。
この花、中部山岳ではごくありふれた高山植物だが、東北ではどうだろうか。
次のマップを参考頂きたい。
この花、東北では生育する山は限られている。
日本海側では鳥海山から、月山、朝日連峰、飯豊連峰まで豊富だが、北の方には無い。
奥羽山系は八幡平や秋田駒には無く、羽後朝日岳、少し飛んで焼石岳、またまた飛んで不忘山(蔵王連峰の南端)の三箇所に有るだけだ。
太平洋側では高山植物の宝庫、早池峰山でも欠如している。
なおウィキペディアによると、
エゾノハクサンイチゲ Anemone narcissiflora var. sachalinensis は、
北海道から東北地方北部の高山帯に分布する高山植物。花期は6 - 8月。高さ15 - 40cm。
ハクサンイチゲとの違いは、葉の幅が広く先端がとがらないこと、花の柄が短いことである。
とあった。
東北北部とはいずれの山を指すのかは不明だ(八甲田や八幡平、岩手山、秋田駒、早池峰には無い)。
鳥海山や焼石岳あたりにその可能性があるが、その確認は今後の課題とさせて頂く。
それでは各所のハクサンイチゲを北から見てみよう
(羽後朝日岳は登山道が無いため、不忘山と飯豊連峰は遠くてまだ行ってないので割愛させて頂く)。
焼石岳は標高1500m内外と低いが、高山植物が豊富な山である。
この山では、ハクサンイチゲは山頂直下の姥石平から東焼石岳にかけて多く、焼石岳山頂にも少し見られる。
2019/06/04 姥石平のお花畑。バックは焼石岳。
2019/06/04 ハクサンイチゲ
(後で気づいたことだが、この株はイチリンハクサンイチゲのようだ。)
焼石岳では場所にもよるが、ミヤマシオガマ(マゼンタ)、ユキワリコザクラ(ピンク)、ミヤマキンバイ(黄)などと混生し、
素晴らしい花筵を形成している。東北では最も美しいお花畑ではないかと思っている。
2017/06/17 下の方にミヤマシオガマ。
2021/06/10 下の方にユキワリコザクラ、ミヤマキンバイ。 2019/06/04 ミドリハクサンイチゲだろうか。
2017/06/17 姥石平の花筵
以上は、六月上中旬の様子だ。このお花畑は六月下旬に一旦、店じまいする。
しかし真夏になるとまた復活する。
真夏に咲くメンバーはガラリと変わるが、ある花だけはまた咲き出す。ハクサンイチゲの二度咲きだ。
2017/08/06 二度咲きのハクサンイチゲ。
2017/08/06 二度咲きのハクサンイチゲ。
周りで一緒に咲く花はハクサンシャジンやハクサンフウロ、シロバナトウウチソウ、ウスユキソウ、キオン、トウゲブキなど。
こんな花風景は他の山では見たことがない。
紅葉時期に訪ねると、数は少ないが、ハクサンイチゲがまだ咲き残っていた。
これは三度咲きと言うのだろうか。
2020/10/09 焼石岳、咲き残りのハクサンイチゲ
鳥海山のハクサンイチゲは冒頭の写真三枚の通りだが、他のスポットのものもいくつか。
鳥海山では見渡す限りの大群生だが、ハクサンイチゲの生育場所は限られており、
笙ヶ岳から御浜にかけての稜線(長坂道)、御田ヶ原付近から七五三掛の手前まで。
2020/06/24 御浜付近の群生。バックは鳥海湖。
それより上の鳥海山山頂部には無く、北東の祓川ルートや南の滝の小屋ルート沿いでは一度も出会わなかった。
鳥海山の山体でも古い方、西側の笙ヶ岳~扇子森の稜線にだけ生育しているようだ、
また此処の群生の特徴は、ハクサンイチゲ単体が多く、他の花はミヤマキンバイやチングルマが少し混じる程度。
2020/06/24 長坂道の群生。バックは笙ヶ岳。手前の黄花はミヤマキンバイ。
2021/07/15 御田ヶ原付近の群生。ここではチングルマと混生していた。
2020/06/24 花のアップ 2018/06/10 一輪タイプのハクサンイイチゲ
鳥海山や後で述べる月山では花が一輪しかないハクサンイチゲがときどき見られる。
手持ちの古い図鑑、原色新日本高山植物図鑑(Ⅱ)(清水建美・著、保育社・発行)によると、
全体が小さく、高さ10cm内外で、花が単生するものは、ヒメハクサンイチゲ f. graciliformis Tamura、
エゾノハクサンイチゲの中で、全体が小さく、花が単生するものは、
イチリンハクサンイチゲ(チョウカイイチゲ)f. japonomonanthum Tamura と呼ばれるとの記載があった。
右上の一輪タイプは鳥海山で見たものであるが、
「イチゲ=一輪花」なのに更に「イチリン」と念を押してるのにはつい笑ってしまう。
鳥海山のハクサンイチゲは、焼石岳で見たような二度咲きの傾向はほとんど無いようだ。
しかし秋に登ると、咲き残りか狂い咲きにはよく出会う。
2020/10/02 咲き残りか狂い咲き?
月山では、ハクサンイチゲは標高1500m以上の山体のあちこちで見られる。
山頂台地の南側や姥ヶ岳には比較的大きな群生がある。
2015/06/07 姥ヶ岳の群生
2020/06/22 山頂台地の群生
2015/06/07 咲き出したばかりの個体。 2015/06/07 月山の一輪タイプ。
朝日連峰は私自身、北端の以東岳、オツボ峰しか登っておらず、詳細は不明だ。
右上写真の個体は8月にオツボ峰で見たもので、疎らにしか咲いてなかった。
焼石岳同様、二度咲きしたものかもしれない。
2019/08/05 朝日連峰オツボ峰のハクサンイチゲ。
以上。
私も8月に焼石岳で撮影したことがあり、不思議に思ってました。
モウズイカさんのこのシリーズから目が離せませんね。
ハクサンイチゲの二度咲きは山域によって、また年によってムラがあるようです。
山男たちの話では朝日連峰でも顕著だとのこと。
今は雪で山には行けませんが、焼石や鳥海山でこの花の咲く六月が待ち遠しいです。
ハクサンイチゲはどこの山にも咲いてるとばかり思ってました。
確かに私が思い出すのは月山、笙ヶ岳、鳥海山、不忘山で見たくらいです。
不忘山のハクサンイチゲタクサン咲いてて見事でした!
今年も山情報を楽しみにしています。
ハクサンイチゲは中部山岳ではごくありふれた花のようですが、東北では意外と少ないんですね。
不忘山は奥羽山系では数少ない生育地です。ハクサンイチゲ以外にもいろいろ花が有るようで、
私も見に行きたいのですが、秋田から遠くて行けないでおります。
このシリーズ、冬場に少し続けてみますので
引き続きよろしくお願い致します。
いや~見事なお花畑です。こんな場面に出合う楽しみは
もう味わえないので、いつも楽しませていただき
ありがとうございます。
六月の鳥海山や焼石はこれが愉しみで毎年のように行っております。
今年もどうか見れますよう雪の下で祈っております。