消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(168) 道州制(10) 橋下大阪府政と関西州(10)

2009-06-02 07:00:37 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


(14) 一九九八年一〇月に経営破綻し、日本政府により一時国有化された「日本長期信用銀行」は、二〇〇〇年三月、「中央三井信託銀行グループ」などとの競争入札の末に、米国の企業再生ファンド、「リップルウッド」や外国銀行らから成る投資組合「ニューLTCBパートナーズ」(New LTCB Partners CV)に売却され、同年六月に「新生銀行」に改称した(ウィキペディアより)。

 「日本長期信用銀行」の経営破綻を救済するために投じられた日本の公的資金は、約八兆円もの巨額であった。この銀行を、「リップルウッド」は、自己資本一〇億円と、投資家から集めた一二〇〇億円を合わせた、わずか一二一〇億円で買収した。さらに、「日本長期信用銀行」が破綻してから約五年四か月後の〇四年二月一九日、「新生銀行」は「東京証券取引所」に上場、売り出し価格五二五円の株価は八二七円で取引を終え、「リップルウッド」を含めたオランダ籍の「ニューLTCBパートナーズ」は、二二〇〇~二五〇〇億円もの上場益を得た。そして、〇五年七月二〇日、二次売却で再度、約二九〇〇億円という巨額を手にした。しかも、日本とオランダが結んだ条約により、オランダに設立した投資ファンドには課税できない。「リップルウッド」は他の金融機関などと共に持ち株会社、「ニューLTCBパートナーズ」を通じて「新生銀行」を子会社にしたが、出資する金融機関は、「メリルリンチ」、「モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター」、「ペイン・ウエバー」、「GEキャピタル」、「シティートラベラーズグループ」、「メロンバンク」、「ABNアムロ」、「ドイツ銀行」、「ロスチャイルド銀行」などであった(http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50068574.html)。同社は、まさに、ハゲタカ・ファンドの代表格であった。

 また、「ケネディクス」の前身は、一九九五(平成七年)年四月、「ケネディ・ウィルソン・インク」の日本における不動産事業 (不動産投資アドバイザリー事業) 、「ケネディ・ウィルソン・ジャパン」である。同社は、米国機関投資家の債権投資を支援する業務を担っていた。一九九九年一月、オフィスビル投資ファンドを主に米国顧客投資家の出資により設定、同年二月、法務大臣から債権管理回収業の許可を取得し、本格的に債権投資を開始した。〇五年五月、「ケネディ・ウィルソン・ジャパン」から「ケネディクス」に商号変更し、同年五月、国内初の物流施設特化型「Jリート」(J-REIT)である「日本ロジスティックスファンド投資法人」として、東京証券取引所に上場した(http://www.kenedix.com/jp/about/about_out.html)。

 見られるように、日本の公的資金を投入した資産が、米国のハゲタカ・ファンドの格好の餌食にされたのである。

(15) 『前川レポート』の正式名は、『国際協調のための経済構造調整研究会報告書』 (経構研報告)である。一九九六年四月七日に「国際協調のための経済構造調整研究会」によって、当時の首相、中曽根康弘に提出されたものである。前川春雄、大来佐武郎、田淵節也、赤沢璋一、大山昊人、長岡實、石原俊、加藤寛、細見卓、磯田一郎、香西泰、宮崎勇、宇佐美忠信、小山五郎、向坊隆、大河原良雄、澤邊守という一七人の連名になるものであった。

 まず、一九八五年の経常収支黒字額がGDPの三・六%と史上最高値を示したことへの危惧が表明され、事態改善のために、国民生活のあり方を歴史的に転換させるべきであると主張された。①外需依存から内需主導型の活力ある経済成長への転換を図るため、大都市圏を中心に、既成市街地の再開発による職住近接の居住スペースの創出や新住宅都市の建設を促進する。②民間活力の活用を中心に事業規模の拡大を図る。そのためには、規制緩和の推進、呼び水効果としての財政上のインセンティブが必要である。③労働時間の短縮により自由時間の増加を図るとともに有給休暇の集中的活用を促進する。④内需拡大の効果を全国的に広げるために、地方債の活用等により地方単独事業を拡大し、社会資本の整備を促進する。⑤石炭鉱業については、現在の国内生産水準を大幅に縮減する方向で基本的見直しをおこない、これに伴い海外炭の輸入拡大を図るべきである。⑥金融政策の運営に当たっては内外通貨価値の安定を確保しつつ、内需主導型経済の実現に向け、機動的に運営することが必要である。
 本文入手については、http://www.komazawa-u.ac.jp/~kobamasa/lecture/japaneco/maekawarep.htm

 とくに、最後の文言が重要である。以後、金融の超緩和状態が継続され、日本バブル経済の全面化が進行したからである。


 引用文献


大石卓樹ほか[1999]、「検証、テクノポリス・頭脳立地」、『日経地域情報』三一二号、二
     月一日号。
菅野由一・前島雅彦[2007]、「都道府県・政令市の企業誘致調査」、『日経グローカル』八
     八号、一一月一九日号。
廣瀬信己[2008]、「企業立地と地域経済の活性化-大阪府、福岡県の取組みを中心に-」、
     『レファレンス』六九一号、八月号。
山崎朗[1992]、『ネットワーク型配置と分散政策』大明堂。


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