さあ、次の金儲けは何か。それが、今日のメインになるお話です。ICチップです。小泉改革といいます。グローバル・スタンダードとも。今までにない新種の商品が出てきたときには、標準規格が必要なんです。みなさん、キーボードご存知ですよね。あの「QWERTY」という配列の。なぜこういう配列になったか。これには、速打ちのためだという説と遅打ち説のためだという説があります。富士通が別の配列のものをつくったことがある。売れませんでした。スタンダードになると勝つんです。ダメだと負けます。
坂村健という人がいます。「TRON」を創った人です。コンピュータとしてすごいものです。これに米国通商代表(USTR:United States Trade Representative)がイチャモンをつけた。今のウィンドウズを見ていると、あれはどう見てもアップルのマネです。アップルのアイディアを取った。でも、今はアップルがウィンドウズの軍門に降っている。TRONも独自のものです。これを松下が応援しました。新しいOSとして普及させるため、学校教育の場に取り入れようと思って、小学校に入れました。そのときヒルズというUSTRのこわいおばさんは「日本市場を金梃子でこじ開けてみせる」と言いました。結果、ウィンドウズが勝ちました。当時交渉に当たった人たちが、今の規制緩和委員会には多いんです。「規制緩和」なんてウソです。これは新たな規制をつくるためのものです。
みなさん、「Windows XP」の「XP」って何かご存知ですか? Windows 95、98、2000まではわかります。でも、「XP」とは何でしょうか。これは、キリスト教を公認したコンスタンティヌスの軍旗に書かれていた文字でして、この皇帝はキリスト教を公認したとき、軍旗にもともとキリストの印があったといったわけです(2)。それ以降、キリスト教でローマ世界を支配する。それから千年以上たって、新しい千年紀を迎えるときに売り出されたのが「XP」です。だから、いわばビル・ゲイツの世界支配宣言です。それから、ダイエーを買収した会社は「コロニー・キャピタル」という。実にいやらしいネーミングでして、植民地支配をほのめかす名前です。つまり、経済支配を政治をとおして実現するのがアメリカ流です。これは純粋な経済の競争による勝利ではまったくない。本当に経済だけで競争してたら、むしろ坂村さんのものだけが残っていたはずです。
(2) ギリシア語で「キリスト」は「XPISTOS」(クリストス)と書くが、この最初の2文字をさす。「XP」は「カイ・ロー」と読み、英語ではそれぞれ「Ch」と「r」にあたる。新約聖書はギリシア語で書かれ、「XP」といえば即キリストを意味することは、ある程度教養のある西洋人の間では成立する共通理解である。
ICチップについて、わたくし過去にすでに先頭を切って書きました(3)。そのあと援軍が続くかと思っていたら、誰も書かない。消防員が世界貿易センター・ビルに入り、焼け死にました。それを見ていたある人が「これだ!」と思った。その人が誰かを特定するためにチップを皮膚に埋め込めばいいんだ、と。「PIPOPA」とか「ICOCA」ってありますが、わたくしは嫌いです。あれは陰謀です。カーナビは便利ですが、怖いんですよ。われわれが今どこにいるかわかるということは、それを検閲できる当局もわかるということです。携帯にICが入ると、居所が把握できます。盗聴もできます。この前、広島の原爆ドームに行くと、展示室にそういう記述がありました。ペンタゴンの気にしているのはロジスティックスです。飛行機の誤爆を避けたい等々の理由で、納入される物資すべてにICチップをつける。どれがどこにあるかわかります。
(3) 本山編『「帝国」と破綻国家――アメリカの「自由」とグローバル化の闇』 ナカニシヤ出版、2005年、第4章「情報戦とペンタゴンのICタグ開発戦略」などを参照。
こういうシステムを世界で初めて開発したのが坂村さんです。これはいけないということで、政府は慶応大学にシステム導入のためのセンターをつくり、ペンタゴン方式を広めました。それで、これがスタンダードになった。日立の「響き」プロジェクトというのがありましたが、要はプログラムを書き込む方式が大事なんです。坂村さんは初め神戸で歩行者ガイド・システムとしてこの技術を実験しようとした。経産省はグローバル・スタンダードという言葉を掲げて坂村さんを潰しました。坂村さんはいい人で、直接ではなく、ちょっとしゃれたやり方で反論しました。全国紙上で、寿司を材料にグローバル・スタンダードについて書いたんです。寿司は今や世界に普及しています。では、日本政府はなぜ、5つ星とか4つ星とかいう形で寿司に格付けを施さないのか、というんです。安かろう悪かろうの寿司が出てきたときに、差別化ができます。こういう言い方で、グローバル・スタンダードを政府がつくれというメッセージを発した。
ペンタゴンにICメーカーが入りました。実験場がウォルマートです。ウォルマートには全世界で160万人の従業員がいますが、組合はありません。賃金が低く、安売りだから地元の商店はつぶれる。だから進出地でケンカばかりおこっています。納入業者を選定していくとき、ダラスでは2004年までにICチップを全商品につけることを条件にした。スーパーの店員もわずかですみます。少数の人が端末で客のフロアでの動きを把握します。購買行動もデータベース化されていてつかめる。ウォルマートは2006年までにペンタゴンとともに、納入業者にICチップを義務づけました。グローバル・スタンダードです。開発に当ったのはMIT(マサチューセッツ工科大学)です。この経済効果はものすごいものがあります。軍事絡みでスタンダードの争奪戦が起こっている。これを「規制緩和」と呼んでいるんです。
という本を見つけました。Amazon.comでは以下。
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