読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

9月刊行予定新書新刊、個人的注目本12冊

2014-08-29 22:22:55 | 本のお噂
蒸し暑かった夏の日々もついに終わったようで、朝晩には涼しさを感じるようになってきましたね。
蒸し暑い時期にはなかなか読書も進まなかったりしてたのですが(なんせウチにはクーラーというものがございませんので、ええ)、涼しくなってくるとムクムクと、読書欲が頭をもたげてくるのであります。秋からはきっちり、夏のぶんを取り返すつもりでいろいろな書物を読んでいきたいものであります。
というわけで、9月に刊行予定の新書新刊ラインナップも出揃いましたので、また個人的に気になる書目を12冊ピックアップしてご紹介してみたいと思います。9月はけっこう面白そうな本がありそうなので、よろしければチェックしてみてくださいませ。
刊行データや内容紹介については、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の8月4日号~9月1日号と、9月1日号付録の9月刊行予定新書新刊ラインナップ一覧に準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。


『わらう春画』 (オフェル・シャガン著、朝日新書、12日発売)
「世界一の春画収集家である著者がコレクションのなかから変わったもの、珍しいものを紹介。人間の喜怒哀楽や文化、風俗を読み解く」
いきなり春画本かよ、と思われるかもしれませぬが•••。ですが春画って、単にエロというだけのシロモノではなく、江戸時代の世相風俗の貴重な資料でもあり、おおらかなユーモアを楽しめるれっきとしたアートでもあるんですよね。図版も豊富に入っているようですので、ちょいと覗いてみたい一冊であります。

『〈運ぶヒト〉の人類学』 (川田順三著、岩波新書、19日発売)
「二足歩行を始めた人類の〈運ぶ〉能力こそが、ヒトをヒトたらしめた?人類学に新たな光を当てる」
言われてみれば、離れたところにモノを〈運ぶ〉ことなしには、あらゆる文明も歴史も成り立ちはしなかった、とも言えそうな気がいたします。なかなか興味深い人類論のようですね。

『カラー版 国芳』 (岩切友里子著、岩波新書、19日発売)
岩波新書からもう一点を。「時代を超えて伝わってくる楽しい奇想の世界。新しさを求め続けた江戸っ子絵師の代表作70点余を紹介する」という本書。奇っ怪さと突き抜けたユーモアセンスとで、江戸時代の画家の中でも特異な存在の一人であった国芳作品の図版を見るだけでも、大いに楽しめそうな感じがいたしますね。

『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』 (伊藤剛著、星海社新書、25日発売)
「我々は、手塚以降の豊潤な時代に生きている。マンガ史の空白に突如として現れ、マンガ表現論の新地平を拓いた名著、ついに新書化」という本書は、2005年に刊行された単行本の新書化です。もうだいぶマンガからは遠ざかってしまっているわたくしではありますが、ツイッターなどでの活発な発言で気になる存在でもある伊藤さんの著書ということで、ちょっとチェックしておきたい一冊であります。

『誰が「知」を独占するのか デジタルアーカイブ戦争』 (福井健策著、集英社新書、17日発売)
「グーグルなど米国発の企業に世界の情報インフラは掌握されつつある。世界中を巻き込んだ『知の覇権戦争』の最新事情と、日本独自のアーカイブ整備の必要性説く」
確かにアメリカは情報インフラ先進国ではありますが、世界中すべての情報がアメリカ企業に掌握されているという状況はあまり好ましいとは言えないようにも思われます。それだけに、望ましいアーカイブのあり方を考える上でも気になる一冊です。

『なぜ時代劇は滅びるのか』 (春日太一著、新潮新書、13日発売)
「本書は死に瀕した時代劇への“檄文”である。技量不足の役者、説明ばかりの脚本、朝ドラ化する大河••••••衰退を招いたA級戦犯は誰だ!」と紹介文からしてかなり興味を惹くものがある本書。わたくしが子どもだった頃に比べても、時代劇の存在感が一層薄らいできているのは確か。この分野に精通した著者による、衰退の原因への切り込みには期待が持てそうですね。

『ブルーインパルスの科学 知られざる編隊曲技飛行の秘密』 (赤塚聡著、サイエンス・アイ新書、16日発売)
「純国産機・T-4の秘密、華麗なるアクロバットの全容、パイロットたちの素顔など、ブルーインパルスのすべてを一冊に凝縮!」
宮城県の松島基地に属し、復活へと向かう東北を象徴する存在の一つにもなっているブルーインパルス。その超絶的な飛行技術はどのようなものなのか、知りたい向きも多いのではないでしょうか。かく申すわたくしもそうですので、チェックしておきたい一冊です。

『つくられる病 過剰医療社会と「正常病」』 (井上芳保著、ちくま新書、8日発売)
「高血圧、メタボ、うつーー些細な不調がなぜ病気と診断されるのか。その原因である『正常病』と、過剰な管理を生む力の正体をさぐる」
もちろん、健康であることに越したことはないのですが、あまりにも神経質かつ、ある種の強制すら伴う「健康」への志向に、むしろ不健康なものを感じて仕方がないわたくしにとっては、すごく気になる本であります。

『反福祉論 新時代のセーフティーネットを求めて』 (金菱清・大澤史伸著、ちくま新書、8日発売)
ちくま新書からももう一点を。「福祉に頼らず生き生きと暮らす生活困窮者やホームレス。制度に替わる保障を発達させてきた彼らの知恵に学び、新しい社会を構想する」
わたくしも、福祉の大切さは大いに理解しつつも、同時にそれには限界も感じられるというところがあったりもいたしますので、本書でいかなる提言がなされているのか、これまたすごく気になります。

『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』 (ハマザキカク著、中公新書ラクレ、10日発売)
9月刊行分で一番楽しみなのが本書であります。「『葬儀写真集』に『職務質問入門』。数万点の新刊に潜む、誰が読むのかわからない、でもどこかが輝く本。それが『珍書』だ!」
ハマザキカクさんといえば、あまたの新刊の中から見つけ出した「珍書」たちを、ツイッターなどで紹介し続けておられる「珍書ソムリエ」(←わたくしが勝手に言っております)にして、編集者としてもユニークな目の付け所を持った本を生み出し続けている方。そんなハマザキさんが選りすぐった「珍書」のラインナップは、きっとシビれるほど面白いものになっているはずです。発売が待ち遠しくてなりません。

『異常気象が歴史を動かした』 (田家康著、日経プレミアシリーズ、10日発売)
「人類の興亡は常に気候変動や異常気象に動かされてきた。歴史的エポックとその背景に隠された気象の影響を明らかにする壮大な文明史!」
著者の田家さんは、これまでも世界史と気象との関係を見つめる本を出されている方。本書も気象という視座から、ひと味違う世界の歴史が見えてきそうで、知的好奇心をそそられるものがありますね。

『高齢初犯(仮)』 (日本テレビ「NNNドキュメント」著、ポプラ新書、上旬)
「昨年、日本テレビ系で評判となった番組の書籍化。堅実な人生を歩んでいた高齢者が、なぜ突然凶悪犯に?その恐るべき実態に迫る」
高齢者をめぐる問題の中でも、近年深刻さを増しているのが高齢者による犯罪。社会のひずみが現れているかのような「高齢初犯」の実態にどこまで迫っているのか。宮崎では『NNNドキュメント』が放送されていないので、本書に期待したいと思います。


そのほかに9月刊行予定の新刊で気になるのは、以下の書目です。

『ルポ 医療犯罪』 (出河雅彦著、朝日新書、12日発売)
『予言の日本史』 (島田裕巳著、NHK出版新書、11日発売)
『マントル対流と超大陸移動』 (吉田晶樹著、講談社ブルーバックス、18日発売)
『漢字の歴史』 (笹原宏之著、ちくまプリマー新書、8日発売)
『日本人の身体』 (安田登著、ちくま新書、8日発売)
『日本政治とメディア テレビの登場からネット時代まで』 (逢坂巌著、中公新書、25日発売)
『税金を払わない巨大企業』 (富岡幸雄著、文春新書、19日発売)
『世界のなぞなぞ』 (のり・たまみ著、文春新書、19日発売)
『作家のごちそう帖 悪食・鯨飲・甘食・粗食が名作をつくった』 (大本泉著、平凡社新書、12日発売)