読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

祝!熊本市の「金龍堂まるぶん店」が11月18日に営業再開!

2016-10-29 20:26:08 | 書店と出版業界のお噂
店先に立つカッパの像とともに、多くの皆さんに親しまれている、熊本市上通アーケード街にある老舗の書店「金龍堂まるぶん店」。
4月に発生した熊本地震による影響で、お店は営業の休止を余儀なくされ、長らくシャッターを下ろしたままの状態が続いております。そんな「まるぶん店」の一日も早い復活を願う声が地元の皆さんはもちろんのこと、熊本県外からもたくさん発せられておりました。
わたしも9月半ばの熊本旅でかなり久しぶりに「まるぶん店」を訪れました。そのときに、下ろされたままのシャッターに貼られていた復活を願うメッセージの数々を目にして、人通りの多いアーケード街の中であるにもかかわらず、涙が止まらなくなってしまったことについては、当ブログでもお話させていただきました。→ 「熊本よかとこ味なとこ、がまだせ!応援旅(第5回)文化の都・熊本の豊かさと底力を実感した、中心街の書店めぐり」
(下の写真は、9月に訪れたときのものを再録いたしました)


その「まるぶん店」が、ついに来月(11月)の18日から営業を再開するという、実に嬉しいニュースが届きました。
地元紙である熊本日日新聞が昨日(28日)に配信した記事「名物かっぱ像にまた会える 上通『まるぶん』11月18日再開」(リンク切れの節はご容赦を)によれば、お店は「地震で屋上の貯水タンクが倒れて水浸しとなり、構造を支える鉄骨も損傷した」上に「耐震強度の確認や鉄骨の補修に時間がかかり、改装も計画したため、復旧が長引いた」のだとか。改装されるお店は売り場面積は7割強に縮小されるものの、「学習参考書や児童書が充実した従来の品ぞろえを維持し、医学書と文具、雑貨の売り場を新設する」といいます。

9月に訪れたとき、シャッターに貼られていた「まるぶん店」の復活、営業再開を願うメッセージの数々に、このお店がいかに多くの方々から愛され、同時にそれらの方々の支えともなっていたことがひしひしと感じられ、大いに感銘を受けました。
それだけに、来月の営業再開はさぞかし、地元の利用客の皆さんや県内外の「まるぶん店」ファン、そして何よりもお店のスタッフにとって、この上ない喜びとなるのではないかと察します。
さらには、中心街から書店がなくなっていく地方都市の現状にあって、地場の老舗をはじめとする多くの書店が頑張っている文化都市・熊本の復興にとっても、「まるぶん店」の再開は小さくない意味と意義があるのではないだろうか、そう思うのです。

上に引用した、熊本日日新聞の記事が配信されたのと同じ28日。「まるぶん店」のスタッフによる「まるぶんブログ -本棚の隙間から見える光景は-」に、「金龍堂まるぶん店営業再開のご案内」と題された記事が掲載されておりました。
営業を休止していた217日の「空白期間」を「ピースがたくさん欠けたパズル」に喩え、それを埋める長くて大きなパズルがはじまる、などと語った記事は、このように結ばれております。

「まるぶんはいつまでも、お客様に寄り添う“普通の本屋“であり続けます」

これからまた、“普通の本屋” として歩んでいこうとしている「まるぶん店」の営業再開を(ちょっと早いのですが)祝福するとともに、お店が熊本とともに前進し、発展していくことを願いたいと思います。
来年熊本に出かけるときには、ぜひとも「まるぶん店」に立ち寄るつもりであります。

『素顔の動物園』 休園中の熊本市動植物園の動物たちとつながることが、一日も早い再開の後押しとなることを信じて

2016-10-11 19:41:36 | 本のお噂

『素顔の動物園 The real zoological garden』
熊本日日新聞社編著、熊本日日新聞社、2016年


先月の連休に出かけてきた、2泊3日の熊本への旅。そのときに行ったことの一つが、市内中心街にある書店(古書店含む)めぐりでありました。
そのときの詳しいお話は、拙ブログにまとめたこちらの記事に譲るとして(熊本よかとこ味なとこ、がまだせ!応援旅(第5回)文化の都・熊本の豊かさと底力を実感した、中心街の書店めぐり)、その熊本書店めぐりのときに立ち寄った、明治時代創業の老舗「長崎書店」で見つけて購入したのが、この『素顔の動物園』であります。

熊本市の中心街から少し離れた、下江津湖のほとりにある熊本市動植物園。本書『素顔の動物園』は、この動植物園で飼育されている102種の動物たちを、カラー写真と短い文章で紹介した地元紙「熊本日日新聞」での連載記事を一冊にまとめた写真集です。

本書を開いてまず惹きつけられるのは、紹介されている102種の動物たちの多彩さです。
チンパンジーやライオン、カバ、カピバラ、フラミンゴ、クジャクなどの、動物園ではお馴染みの顔ぶれはもちろんのこと、国内で飼育されているのはここだけという中国の珍種ザル・キンシコウや、国内での飼育頭数はわずかだというマサイキリンやユキヒョウなども飼育されています。中でもユキヒョウは、その高貴な姿に魅了された熱烈なファンが熊本県外からも訪れていて、開園から閉園まで飼育舎の前を動かない人もいるほどなのだとか。
さらには、熊本で生まれた5種類の地鶏「肥後五鶏」といったものも飼育されていたりします(ニワトリの展示は全国の動物園でも異例なのだとか)。わたしも熊本の居酒屋で食し、その濃厚でコクのある味わいに惚れ込んだ肥後五鶏の一つ「天草大王」は、大王という名前にふさわしいような威厳あるツラ構えが、またいい感じであります。

動物たちの種類の多彩さも魅力なのですが、本書に収録されている写真一枚一枚がまた、実に素晴らしいのです。
「あとがき」によれば、取材を担当した2人の写真部記者は、「一般の来園者と同じ場所から撮影する」という自主ルールのもと、「図鑑のような写真じゃダメ。喜怒哀楽が伝わる1枚にとことんこだわりたい」と、動植物園に通い続けて写真を撮っていたといいます。そうして掲載された写真には、1000枚以上撮影して、ようやく納得がいった1枚も少なくない、と。
とことんこだわり抜いて撮影され、さらにその中から選び抜かれた写真の質はまことに高く、写真集としても十分に楽しめる一冊となっております。

圧巻なのが、超望遠レンズで撮影された動物たちの顔のどアップ写真。見開き2ページにわたってどどーんと掲載されているアムールトラや、ワニの一種メガネカイマンの鋭い眼光には、思わず「うっ」と言いつつたじろいでしまうような迫力がありました。
一方で、派手な原色で彩られた顔が特徴的な霊長類の一種・マンドリルの顔のアップは、ケバケバしい顔の奥にある優しい瞳が、まことに印象的です。また、まるで少女漫画のような長いまつげにつぶらな瞳のダチョウが、ぽかんと口を開けている顔のアップは、なんか微笑ましいものがあります。
微笑ましいといえば、マダガスカル島に生息している絶滅危惧種・エリマキキツネザルの父娘の写真は、父親が娘にお説教しているような構図がすごく面白く、わたしのお気に入りであります。とりわけ、いかにも済まなそうな目つきをした娘ザルの表情には、なんだか萌えそうになりますなあ。
さらに、野生では絶滅したという中国原産の珍獣・シフゾウ(これも熊本以外での飼育は全国で2ヶ所のみ)の写真は、「ひづめは牛、頭は馬、尾はロバ、角はシカ」という4つの特徴がすべてわかるポーズを決めた瞬間をバッチリ捉えていて、これもお見事でありました。

それぞれの動物たちを紹介した文章には、担当する飼育員さんたちのコメントも織り込まれています。そこから窺える動物たちの「素顔」も、なかなか面白いものがありましたし、飼育員さんたちの動物へ寄せる愛情も垣間見えて好ましく思いました。
漆黒をバックにした、華やかで美しい頭部の飾り羽に魅せられる、ニューギニア島に生息するハトの仲間・オウギバトを紹介した文章では、熊本市動植物園が国内11園・33羽のオウギバトの戸籍簿を作り、全国の血統を管理して繁殖計画を進めていることを説明し、担当飼育員さんのこんなコメントを載せています。
「まだ熊本では繁殖実績がない。近年中に成功し、他園との連携で絶滅危惧種を保全したい」
そう、絶滅の危機にある動物たちを保全していくことも、動物園の大事な役割なんですよね。

多彩で個性豊かな熊本市動植物園の動物たちですが、残念なことに現在、熊本の皆さんはこれらの動物たちに会うことができません。
ちょうど半年前の4月に発生した熊本地震により、「再開まで1年以上かかる」といわれるような大きな被害を受けてしまった熊本市動植物園は、目下長期の休園を余儀なくされているのです。本書の末尾には、園内の通路がひび割れていたり、ミニSLなどが倒壊したり、液状化した泥で覆われたりしている園内のようすも伝えられております。
幸いなことに、動物たちはすべてケガもなく無事だったそうですが、ライオンやトラなどは県外に緊急避難したのだとか。

地震前に取材して新聞の紙面に連載され、期せずして地震を挟んで一冊にまとめられることになった本書『素顔の動物園』。その売上の一部は、熊本市動植物園の復旧に向けた救援金に充てられるとのことです。熊本ローカルの出版物とはいえ、もちろん注文すれば全国どこででも購入は可能であります。
本書の存在が1人でも多くの方に知れ渡り、ここに紹介されている多彩で個性豊かな動物たちとつながることで、熊本市動植物園が一日も早く復旧し、再開するための後押しになれたらいいなあ、とわたしは思います。

熊本の皆さんが一日も早く、熊本市動植物園の動物たちと再会できるよう、願ってやみません。


(職場である書店のHPに書いた一文に、大幅に書き加えた上で掲載いたしました)

熊本よかとこ味なとこ、がまだせ!応援旅(番外篇)熊本で見つけたこういうトコ、こういうモノ

2016-10-02 22:15:52 | 旅のお噂
7回にわたってお伝えしてきた、9月の連休に出かけた熊本旅でのお噂のご報告、いかがでありましたでしょうか。
さて今回は、熊本旅のご報告の「番外篇」として、これまでのご報告では触れられなかった、いくつかのちょっとした物件を、写真と短いキャプションでご紹介することにいたします。どうか、気楽にご覧になっていただければ幸いであります。


(その1)熊本交通センター

熊本の交通の要衝でもあるバスターミナル・熊本交通センター。熊本を含む九州の各地が舞台となった(といっても、わが宮崎は入ってないんだけどな、涙)、ゴジラシリーズ第21作『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)では、背後からやってくるゴジラに迫られておりました。

で、わたしが熊本を訪れた時には、その交通センタービルの姿はありませんでした。

もちろん、ゴジラに壊されてしまったというワケではなく、地震前から始まっていた建て替え工事で取り壊された、ということなのであります。ちょっと寂しいのですが、新しく生まれ変わった交通センタービルも、ぜひ見たいものです。


(その2)子飼商店街を守るお地蔵さま

ひと昔前の懐かしい商店街ならではの風情が漂う子飼商店街。その一角に、大小2体のお地蔵さまがおられました。

日ごろから、商店街の方々に大切にされているのが窺えるかのような、2体のお地蔵さま。これからもずっと、子飼商店街を守ってくださることでしょう。


(その3)彼に似た人


熊本を代表する銘菓「誉の陣太鼓」で知られる「お菓子の香梅」さんのポスター。おそらく「陣太鼓」をもとにしていると思われる真ん中のキャラクターですが・・・どことなくア◯パ◯マン似。


(その4)ホテルで出迎えてくださった、あの方

宿泊先のホテルである、ホテルサンルート熊本のフロント前で出迎えてくださったくまモン様。なんかちょっと、嬉しかったっす。



(その5)山田太一さんの色紙

小泉八雲熊本旧居の中に、震災後にここを訪れた脚本家・山田太一さんがお書きになった色紙が展示されていました。

「世の中 どっちを向いても 『のっぺらぼう』ばかり・・・」かあ。気持ちはわからなくはないのですが、少なくとも熊本で出会えた皆さまは、「のっぺらぼう」などではない素敵な方々ばかりでございましたよ。


(その6)水前寺成趣園・大鳥居の案内板

水前寺成趣園に通じる参道に立っていた大鳥居。“長寿の大鳥居” といわれて親しまれていたということですが、熊本地震により倒壊してしまい、わたしが訪れた時には残念ながら、その勇姿はありませんでした。いつの日かまた、堂々再建されることを願いたいと思います。
大鳥居自体の姿はなかったものの、鳥居の創建当時の模様を写した写真と、“長寿の元気を頂くため” の参拝の手順を記した案内板は残っておりました。それを見ると、ちょっと気になる箇所が。

参拝の手順を記した文の中には「大人の男性だけ見て下さい」「女性だけ見て下さい」との覆い。「女性だけ・・・」の下に記されていた文言は予想とは外れましたが、「大人の男性だけ・・・」の下にあったコトバは・・・まあ、おおむね予想通りでございました(笑)。


(その7)さすが城下町熊本、という感じの郵便ポスト


下通界隈の繁華街で見つけたこの郵便ポスト、お城風のデザインでありました。うーむ、さすがは城下町熊本。


(その8)熊本で買ったお土産2点


熊本書店めぐりのおりに訪ねた、上通アーケード街の中にある「長崎書店」。そこで見つけて買ったのが、この『素顔の動物園』(熊本日日新聞社)です。
震災で被害を受けて、目下長期休園を余儀なくされている熊本市動植物園の動物たち102種類を、見ごたえある写真と飼育員さんたちのコメントを交えた文章で紹介した写真集であります。なかなか素敵な一冊でしたので、日を改めて拙ブログでご紹介したいと思っております。


何か手頃なくまモングッズがないかなあ、と熊本県物産館で探していて見つけたのが、このくまモンの付箋。熊本のさまざまな特産品を手にしたくまモン、使うたびに和んでおります。


(おしまい)

熊本よかとこ味なとこ、がまだせ!応援旅(最終回)水の都・熊本の豊かさを感じた水前寺成趣園、そして熊本で頑張っていた宮崎の女性

2016-10-02 22:15:37 | 旅のお噂
熊本旅3日目にして最終日の、9月19日の朝。二日酔いからどうにかこうにか立ち直ったわたしは、ホテルで朝食を食べることにしました。
熊本獲れの食材を活かしたバイキング形式の朝食で、ふだんのわたしならそこそこたくさん食べるところなのですが、二日酔いから立ち直ったばかりということで、ちょっと控えめにいただいたのでした。でも、食後に飲んだ熊本みかんのジュース、二日酔いからなんとか立ち直った胃腸に優しい美味しさじゃったのう。
朝食を食べ終わると、さっそくチェックアウト。ホテルサンルート熊本さん、2日間どうもお世話になりました。ぺこり。


(1)庭園美と水の都の豊かさをじっくり味わうことができた水前寺成趣園

ホテルをチェックアウトすると、すぐに中心街から路面電車に揺られてしばし移動し、水前寺成趣園(水前寺公園)へと足を伸ばしました。
実はまだ、ここ水前寺には訪れたことがありませんでした。せっかく熊本に来たからには、やはり水前寺も見ておかなければ、ということでやって来たのでした。
前日からずっと、ときおり小雨がパラつく天気が続いておりましたが、それでも散策の妨げにはならない程度だったのはありがたいことでした。

両側に各種お土産や、熊本の名物菓子「いきなり団子」を売るお店や飲食店が立ち並ぶ参道を通り抜け、入り口で入園料を払って庭園の中に入ると、そこには水と緑に溢れた美しい光景が広がっておりました。


寛永13(1636)年から、三代にわたる細川家の歴代藩主によって造営された、桃山式の回遊庭園。低く刈り込まれた芝生に覆われた築山と松の木、そして豊富な湧水に満たされた池が醸し出す庭園美を、しばしため息とともに見入っておりました。ひときわ高く築かれている形のいい築山は、富士山を模したものでしょうか。

豊富な湧水に満たされている成趣園の池ですが、熊本地震の影響で池の水が広範囲にわたり干上がってしまうという現象が起きました。一説には、地震により湧水が出なくなってしまったからではないか、ともいわれておりますが、はっきりした原因はわかっていないようです。
その後、池の水位は再び上昇に転じ、現在ではすっかり、もとの美しい光景を取り戻すに至ったとのこと。澄みきったきれいな池の水の中では、鯉たちが泳ぎ回っておりました。


庭園それ自体の美しさもさることながら、たくさんの水をたたえた広い池を見ていると、熊本がいかに豊かな水の都であるのかを、つくづく実感させられました。
時として、残酷なまでの荒々しさで人びとに牙を剥く一方で、この上ない恵みをもたらしてもくれる自然。この成趣園の池を満たす美しい水も、間違いなく熊本の自然がもたらしてくれる恵みの一つなのです。
これからも、熊本が美しい水に恵まれた都であり続けることを、願わずにはおれませんでした。

成趣園には、造営を始めた細川忠利公を含む細川家の人びとを祀った神社がありました。その名も「出水神社」。地震に伴うものかどうかはわかりませんでしたが、本殿は改修中でありました。

その境内には、神水「長寿の水」とよばれている湧水がありました。すくって飲んでみると程よい冷たさで、のどを潤してくれました。これまた、熊本の水の恵みの豊かさを象徴するものといえましょうか。

同じく成趣園の中には、「古今伝授の間」という茅葺き屋根の風情ある建物もありました。

案内板によれば、およそ400年ほど前に京都御所の中に建っていた、桂宮智仁親王の書院兼茶室で、大正元年にこの水前寺成趣園に移築されたそうです。細川家初代の細川幽斎公が、この部屋で桂宮智仁親王に『古今和歌集』の解説の奥義を伝授したことが、その名前の由来だとか。

現在この建物の管理を任されているのは、熊本の名物菓子として名高い「誉の陣太鼓」の製造元である「お菓子の香梅」。建物の隣にある「香梅」さんの売店でお抹茶とお菓子のセットを注文すれば、「古今伝授の間」の室内でそれらをいただくことができるといいます。それはいい機会じゃのう、ということで、わたしもいただいてみることに。
セット料金650円を払ってさっそく室内に上がって待つことしばし。お店の方がお抹茶とお菓子を運んできてくださいました。お菓子のほうは、真っ白でなめらかな生地のなかに甘さ控えめの黄色い餡が入った「十六夜」。お抹茶ともども、まことにけっこうな美味しさでございました。
(下の写真では、暗くなっていていまいちよくわからないのですが・・・)

由緒ある茶室の中で、美しい庭園を眺めつつお抹茶とお菓子をいただき、くつろいでいると、
「ずっとここでこうしていたい、もう帰りたくなんかない!」
などと思えてきたのでありました・・・。


(2)カフェ「三年坂モリコーネ」で絶品赤牛ハンバーグ&熊本野菜サラダ、そして熊本で頑張る宮崎の女性と出会う

しかし、いくら帰りたくないとダダをこねたところで、旅の終わりは刻々と近づいておりました。熊本での最後の食事を食べようと、市電に乗って再び、熊本の中心街へと戻りました。
とはいえ、中心街に戻ってきた時点では、まだどこで昼食を食べようかというアテがあったわけではありませんでした。わたしは下通界隈をゆっくりゆっくりと歩きながら・・・もうだいぶ、足が痛くなっておりましたもので・・・何を食べようか思案しておりました。
熊本ラーメンの大盛りで最後を飾ろうかなあ、それとも天草獲れの魚を食べさせてくれるところにしようかなあ・・・。あれこれと考えているうちに、前日の書店めぐりの時に気になっていたお店が浮かび、そこに決めることにいたしました。蔦屋書店熊本三年坂店の中にあるカフェ「三年坂モリコーネ」であります。
まあ、わたしごときにはおよそ似つかわしくないような、小洒落たところではございましたが、ここの店先に記されていたランチメニューの「赤牛ハンバーグ」というのが、なんか気になっておったのでありました。

「外は雨降ってますけど、濡れたりしませんでしたか?」
入るなり、応対してくださったお店のチャーミングなお姉さんは、一見の客であるわたしに実にフレンドリーに話しかけてくださいました。自分には似つかわしくないようなカフェなのかなあ、などと思っていたわたしはおかげさまで一気に和み、宮崎から2泊3日の旅行に来たんですよー、熊本っていいとこですねー、などということをお話したあと、お目当ての赤牛ハンバーグランチを注文いたしました。

それから程なくして、さきほどとは別のお姉さんがやって来て、おもむろに話しかけてこられました。
「すいません、失礼ですが・・・宮崎から来られたんですか?」
いささか意表を突かれつつ、はいそうですけど、と答えると、そのお姉さんは言いました。
「実はわたしも宮崎から来たんですよ!」
え、ええっ!!オドロキのあまり、椅子からずり落ちそうになりましたよ、わたしゃ。まさかこういうところで、期せずして同郷の方とお会いすることになろうとは!
そのお姉さんもすごく可愛らしく、またフレンドリーなお方でありました。1年前に宮崎から熊本に来て、このお店で働いておられるのだとか。
しばしの後、いまだ驚き覚めやらぬわたしのもとに、赤牛ハンバーグランチ一式が運ばれて参りました。・・・ええ、ここでも真っ昼間から、生ビールを呑んだのでありますが。


口に入れるとジューシーな肉汁と旨味がいっぱいに広がる赤牛ハンバーグはもちろんのこと、彩り豊かな野菜サラダもまた美味しかったですね。いやはや、大満足いたしました。
食後のドリンクを運んできてくださった宮崎出身のお姉さんに、ハンバーグも美味しかったけどサラダも美味しくって彩りも良かったですよ!と言うと、
「サラダのお野菜はみんな、熊本で獲れたものを使ってるんですよ」
と説明してくれました。熊本は肉や魚はもちろんのこと、野菜の実力もかなりのもののようだな、と思いましたね。
時刻は正午に近づくにつれ、お店はお客さんでいっぱいになりつつありました。食べ終わってお会計を済ませてお店を出ようとするとき、他のお客さんへの対応で慌ただしくなっているにもかかわらず、宮崎出身のお姉さんは出ようとするわたしに笑顔で挨拶してくださいました。本当にどうも、ありがとうございました!

旅先でふらりと入ったカフェで出会うことができた美味しい味覚と、熊本で頑張っておられる宮崎の素敵な女性。今回の熊本旅の最後を飾る、嬉しい思い出となりました。これからもお元気で、仕事仲間とともに熊本で頑張っていってほしいなあ。
「お持ち帰りもできますよ」と言われて持って帰ったお店のメニュー一覧、その表紙には、熊本城の手描きイラストが大きく、載せられていたのでありました。



(3)天然温泉「城の湯」に浸かりながら、旅の思い出を振り返る

熊本旅もいよいよ最終盤。帰る前に温泉に浸かろうということで、わたしはタクシーを拾い、熊本城の北のほうにある天然温泉施設「熊本城温泉 城の湯」に行きました。
一般の大浴場をはじめ、家族湯やレストラン、ゲームコーナー、読書ルームなども設けられていて、一日中ゆっくりと過ごすこともできそうでありました。

大小さまざまな浴槽や露天風呂もある大浴場でお湯に浸かり、歩き回って痛くなっていた足を癒しながら、わたしは3日間にわたった旅の思い出を振り返りました。

地震で傷つきながらも、美しい威容を失ってはいなかった熊本城。かつての商店街そのままの懐かしい風情があった子飼商店街。美味しいお酒と料理とともにくつろぐことができた居酒屋。威勢がよくて賑やかなパワー溢れる藤崎八旛宮例大祭の神幸行列。充実していた熊本の書店。震災の爪痕が残っていた旧市街。庭園美と水の豊かさを感じさせられた水前寺成趣園。そして、素敵な方々との出会い・・・。

わたしにとっては25年ぶりとなった、そして震災から5ヶ月を迎えた熊本への旅。いまだあちこちに残っている震災の爪痕や影響と、そこから少しずつではあっても前に進んでいこうという復興への動きとが交錯する、熊本の「いま」に触れることができたのは、とても意義深いものとなりました。
同時に、熊本のいい場所や美味しい味覚、素敵な方々との出会い、さらには予期せぬ展開もあったりして、大いに楽しい思い出をつくることができました。そのことで、これまで長きにわたって足を向けることのなかった熊本が、すごく大好きな場所となりました。
これからは熊本にも時々足を運んで、復興へと進んでいく熊本の姿を見届けるとともに、さらなる熊本のいいところや美味しい味覚、そして素敵な方々との出会いを楽しんでいかなければ・・・。「城の湯」のお湯に浸かりながら、そう強く思いました。

「城の湯」をあとにして熊本中心街へと戻り、熊本県物産館でいくつかのお土産を買い込んだわたしは、名残惜しさを噛み締めつつも、宮崎へと帰る高速バス「なんぷう号」へと乗り込み、出発いたしました。
帰りのバスの車窓から鶴屋百貨店を見ると、建物のど真ん中にはくまモンとともに、熊本復興へ向けてのメッセージが大きく掲げられていたのでありました。


おりから、台風16号が速度を上げて九州に接近しつつありました。バスが高速を通って最後まで走りきることができるかどうか、ちょっぴり心配ではありましたが、なんとか無事に、宮崎市までたどり着くことができました。
終点の宮崎駅に到着してバスを降りると、すでに台風の強風域に入っていた宮崎の街には、雨風が強さを増してきていたのでありました・・・。


ということで、本篇のほうはこれにて終了であります。第1回からお読みくださった皆さま、本当にありがとうございます。
次回は、本篇ではご紹介できなかったちょっとした物件を、写真メインでご紹介していく「番外篇」をお届けしたいと思います。

熊本よかとこ味なとこ、がまだせ!応援旅(第6回)熊本呑み歩き第2ラウンド、熊本美酒に酔いどれて轟沈す

2016-10-02 07:29:22 | 旅のお噂
(1)繁華街の只中で静かな佇まいを見せていた、小泉八雲熊本旧居

前回の記事では、熊本中心街の書店めぐりのことに絞ってお伝えしたため触れられなかったのですが、書店めぐりの最中にもう一か所、訪ねていたところがありましたので、まず最初にそのお話を。

熊本を代表する百貨店である鶴屋百貨店の裏手、周辺の繁華な賑やかさからは異質な静けさを感じるスポットがあります。小泉八雲熊本旧居です。


『怪談』や『知られざる日本の面影』といった著書で知られ、アメリカ出身でありながら、ある意味日本人以上に日本の風土を深く理解していたのでは、と思える小泉八雲=ラフカディオ・ハーン。明治24(1891)年、英語教師として熊本に赴任してきた八雲が、その最初の1年を過ごしたのが、この住居です。
もとは別の場所に立っていたこの住居、解体の危機にさらされていた中で保存の機運が高まり、昭和36(1961)年に現在の場所に移築、保存されることになったのだとか。
本来ならば、入館料を払った上で中に入ることになっているのですが、熊本地震の影響で建物の内外に損壊した箇所が生じてしまい、当面は庭園と住居の一部のみの限定的な公開ということで、入館料は無料ということになっておりました。

入ることができたのは、玄関を上がったところにある一部屋のみ。そこには、地震による住居の被害のようすを写した写真が展示されておりました。ああ、ここもいろいろとダメージがあったんだなあ。

また、震災の前後にこの旧居を訪れた著名人の写真も掲示されておりました。現在(2016年10月)NHKで放送されているドラマ『夏目漱石の妻』で、やはり熊本ゆかりの文豪でもある夏目漱石を演じておられる俳優・長谷川博己さんや、八雲を主人公にした1984年のドラマ『日本の面影』を手がけた脚本家・山田太一さん、それに女優の坪内ミキ子さんなども。

そして、八雲の随筆「地震と国民性」の一節を抜き出した掲示も。そこには、日本の各地で起こった災害について触れたあとに、このような言葉が記されておりました。

“定期的に起こるそれぞれの災害の後に見られる日本人の素晴らしい回復力、あるいは苦難に際しての見事な忍耐力を、むしろ称賛すべきなのかもしれない。実際、回復力も忍耐力も独特なものである。そして、何千年にもわたって日本がまったく同じように苦しんできたことを考えると、そうした異常な条件が国民性に何らの影響も及ぼさなかったと考えるのは難しい。”

そう、日本人は何千年にもわたり、さまざまな自然災害に繰り返し繰り返し苦しめられながら、そこからまた繰り返し繰り返し這い上がるという歴史を積み重ねてきました。地震に苦しめられてきた熊本も、間違いなく見事な復活を成し遂げられると信じます。
次にこの八雲の旧居を訪れるときにはきちんと入館料を払って、修復を終えて元どおりとなった内部を、ゆっくりと見学したいものであります。


(2)熊本飲み歩き第2ラウンド!再び「料理天國」で霜降り馬刺しの美味さを堪能

2日目の街歩きを終えたわたしは、連泊しているホテルに戻りシャワーを浴びてさっぱりしたあと、暮れなずむ繁華街へと出陣いたしました。いよいよ熊本飲み歩き、第2ラウンドのゴングが鳴り響きました!
ついさきほどまで、藤崎八旛宮に戻る秋季例大祭の神幸行列が練り歩いていた下通界隈の呑み屋街では、まだまだ気勢を上げているお兄ちゃんお姉ちゃんの一団がいたりもして、明るいうちからニギヤカでありました。

出かける前の下調べで、行ってみたい気になるお店もいくつかあったのですが・・・2日間の街歩きで、もうだいぶ足が痛くなってきつつあったわたしは、もうそんなに歩き回らず、お気に入りとなったお店でゆったりまったり、お酒と料理を楽しむことにしようということにいたしました。・・・呑み歩き第2ラウンドのゴングが!などと申しておきながら、なんとも頼りないことではございましたが。
ということで、宿泊しているホテルからもさほど離れていない、お気に入りとなったお店に行くことにいたしました。そう、居酒屋「料理天國」であります。まだまだいっぱい、味わってみたい料理もありましたからねえ。

こんばんは、また来ちゃいました〜〜、と言いつつ入ってきたわたしを、前夜も親しく接してくださった料理人さんが、カウンターから笑顔で出迎えてくださいました。前夜初めてお店に入ったときには、いささか緊張していたわたしでありましたが、このときはお店に入るなり、なんだかホッとするのを感じたのであります。
いやあ、きょうは一日中賑やかでいいもんでしたねえ、というわたしに料理人さんは「いやー、結局はなんだかんだいっても、騒ぎたいだけのヒトたちが騒いでるだけじゃないですかねえ」などと、ちょっとつれないことをおっしゃるのであります。前夜、まだまだお祭りどころじゃないんだから開催は早いのではないか、ということを、料理人さんとお客さんがお話になっていたことを思い出しました。熊本の皆さんにも、やはりそれぞれの思いや考えがあるということなのでありましょう。

何はともあれ、今宵も美味しい料理とお酒をたっぷり楽しまなければと、まずは生ビールで喉を潤しつつ最初の注文をいたしました。前夜来たときにタタキで食べて、その濃厚な美味さにノックアウトされた地鶏「天草大王」の串焼きであります。

焼いて食べてもなお、肉に閉じ込められた旨味が口いっぱいにじわじわ広がってきて、もうたまりませんでしたねえ。早くも生ビールがグイグイと進んで、思わず2杯目をおかわりしてしまいました。
次に食べようと思ったのは揚げもの。揚げものにもいろいろと食べてみたいものが並ぶ中、揚げカニシューマイを注文いたしました。

1つの粒がでっかくて食べ応えがあり、これまたビールが進んで2杯目を飲み干し、ここで球磨焼酎に切り替えました。
さあ、こうなったらちょいとゼイタクして、熊本に来たらぜひ食べてみたかったアレを注文することにいたしました。

ジャジャーン!霜降り馬刺し、でございますよ。けっこう手頃な値段のメニューが並ぶ「料理天國」でも、コレはさすがにちょっと値が張ったのでありますが、もうコレを食べずに熊本を立ち去るわけにはいきませんからねえ。
口に入れて噛みしめると、豊潤でとろけるような甘みと馬味・・・もとい、旨味が広がり、生きててよかった〜〜、と心から思えたのでありました。いやー、堪能いたしましたよ。
考えてみれば、きちんとした馬刺しを食べたのも、かなり久しぶりのことでありました。馬肉の持つ馬さ、もとい、美味さを、あらためて実感させられたのでした。
球磨焼酎も2杯3杯と重なっていき、けっこういい気分になってまいりました。料理人さんは、「良かったらコレ、酔い覚ましにどうぞ」と、お味噌汁をサービスしてくださいました。いやはや、嬉しいことでありました。このお味噌汁もしみじみ、美味しゅうございました。


二夜連続で訪れた「料理天國」。もうすっかりわたしにとって、心から寛げる憩いの場所となっておりました。
開業してから35年、長きにわたってたくさんのお客様に愛されながら、今日まで続いてきているお店だからこそ、実に居心地のいい雰囲気を醸し出しているのでしょうね。やはり、来て良かったと心から思います。
これから熊本に出かけるたびに、必ず立ち寄るお店となりそうであります。


(3)噂の「くまBAR」で、熊本の多様な酒文化に溺れて・・・

「料理天國」でけっこう、いい気分になったわたしでしたが、ここでもう一軒、気になっていたアノお店に酔って、もとい、寄ってみなければ!ということで、下通アーケードの中にある「くまBAR」に入ることにいたしました。


「くまもとの酒文化発信処」を標榜しているこのバー、球磨焼酎はもちろんのこと、日本酒、ワイン、熊本の特産品を使用したカクテルなど、熊本のさまざまなお酒を一堂のもとに楽しむことができるという、もう酒好きにとって見過ごすことができないお店なのであります。
そして、もう一つ見過ごせないのは、店内に熊本を代表している、あのお方がいらっしゃるということ。

そう、くまモン様でございます。グラス片手に、しっかりとカウンターに陣取っておられます。

さらにフロアのほうにも、微笑みを浮かべて立っておられるくまモン様が。・・・まあ、どちらも残念ながら動いてはくれないのでありますが、酒好きに加えてくまモン好きというわたしにとっては、もう夢のような空間なのであります。

カウンターに腰かけてメニューを拝見すると、確かにけっこうお酒だけでも種類が豊富に揃っていて、何を注文しようかしばし、迷ってしまいましたねえ。しかも、ワインなど一部のお酒を除き、ほとんどがグラス1杯500円というのも嬉しいところであります。
辛子蓮根、馬肉の燻製、豆腐味噌漬けの3品をセットにした、熊本名物プレートとともに最初に注文したのは、球磨焼酎の本場人吉市の、その名も「武者がえし」という銘柄の焼酎であります。米焼酎らしいスッキリさとまろやかな味わいで、まことに飲みやすかったですね。

次に注文したのは日本酒。これまた、何にしようかと迷った末、阿蘇郡高森町の「れいざん粋撰」にしました。口に含むと、豊かなコクが口いっぱいに広がってくる、美(うま)し酒でありました。

・・・今から思えば、ここまで呑んだ時点でだいぶ、酔いが回っていたようではありましたが、それでももう1杯、なにかカクテル系のを呑んでおきたいと、熊本特産の柑橘類「デコポン」の果汁を使ったサワーを呑みました。甘酸っぱいデコポンの風味と香りが生きていて、実に爽快な呑み心地。一気にクイクイ呑んでしまいました。

ほかにもいろいろ、呑んでみたいお酒はありましたが、もうここまでにしておこうということでお会計を済ませ、「くまBAR」をあとにいたしました。ここも、立ち寄って正解だったなあと思いました。

しかしながら、このあとが少々、タイヘンでございました。ホテルに戻る前に締めのラーメンを、と思いホテルのそばにあったラーメン店に立ち寄ったものの、食べている途中できつくなってきてリタイア。ホテルに戻るなり、着替えもせずにバタンキューとベッドに横たわり、そのまま寝てしまいました。
・・・そして翌朝。わたしはしっかり、二日酔い状態となっておりました。知らず知らずのうちにけっこう呑んでいたようですし、やはりビールに焼酎、さらに日本酒にサワーと、あれこれのお酒をちゃんぽんに呑んでいたのがいけなかったのでありましょうか。ううう。
熊本の美酒の連続攻撃に、わたしはすっかり、轟沈してしまったのでありました。・・・まあ、「攻撃」っつっても、自分から調子に乗ってどんどん注文して呑んでただけなんだけどな。とほほだわ。


(最終回に続く)